PMプロの知恵コーナー
先号   次号

「エンタテイメント論」(184)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :7月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
■その5の② フルの長さの作曲→作曲楽譜提出→演奏デモCD制作・納入をすること
1 フルの長さの作曲
 電通、博報堂などの下請けの「映像・音楽制作会社」はTVコマーシャル映像を制作する。そのTV・CM映像がTVで放映される時間は、普通は20~30秒間である。その結果、TV・CM映像に使われる音楽の長さもそれに合わせて短い。そのためCM映像用の曲を作るプロ作曲家は、CMの短い時間に合わせて短く作曲する。

 此の「映像・音楽制作会社」は、以前ヒットした曲や現在ヒット中の歌の一部をTV・CM映像に使う場合がある。しかしヒット曲を活用するため極めて高い著作権料を支払わねばならない。もし当該TV広告を出すスポンサー会社が高コストを嫌い、低コストでTV・CM映像の制作を望む場合は、「映像・音楽制作会社」は無名のプロ作曲家に超安値で作曲させる事になる。

 筆者はTV・CM曲を作曲する場合、20~30秒で終わる様な短い作曲は以前からしてこなかった。起承転結(A→A‘→B→A’)を原則とした最短でも32小節の「フルの長さ」で作曲する。もし此れに歌詞を加えれば、キチンとした「歌」になる。何故、この様な作曲の「在り方」を貫いてきたか? 「自己満足」の為かもしれない? プロの作曲家としての「プライド」の為かもしれない? 自分でも良く分からない。兎に角、「そうしたい」ので「そうしている」。

出典:西洋の起承転結
出典:東洋の起承転結
出典:西洋の起承転結
dramatic+structure+images&
fr2=Story-Plot-Structure.
jpg&action
出典:東洋の起承転結
images.search.ser_image
%2F2e%2F 76%2F0c8fdfb72100
jpg&action=click

2 演奏デモCDの制作・納入
 プロ作曲家はCMソングの作曲をした場合、その「作曲楽譜」を提出すれば、契約履行となり、終了する。その後の「編曲」は別契約となる。

 TV・CM映像制作会社は、作曲楽譜又は編曲楽譜を楽器演奏者に手渡し、音楽スタジオで演奏させる。その演奏をプロ録音技師に録音させ、CD音源を制作する。そのCD音源を撮影されたTV・CM画面に組み込み、TV・CM映像を完成させ、電通などを経由してTV局でTV放映される。

 筆者は、「作曲楽譜」の提出だけでなく、筆者が作曲した楽譜を自ら演奏し、録音し、「演奏デモCD」を制作して納入する。この作業は契約履行義務外の作業である。何故なら筆者は作曲要請した会社から頼まれて演奏デモCDを制作し、納入した訳ではないからだ。また筆者は友人や知人から歌詞が送られ、作曲依頼を受けた時も「演奏デモCD」を制作し、手渡している。

出典:ピアノ
出典:電子楽器
出典:デモCD
出典:ピアノ→電子楽器→デモCD
piano, demoCD, lectric instrument images Yahoo Image Search

 演奏デモCDの制作は、筆者の自宅ビル地下1階の「川勝経営コンサル事務所」に設置する「電子演奏録音楽器」で経営コンサルの合間と隙間で行う。しかし此の電子楽器でいきなり、直ちにデモCDの制作に着手しない。いつも下記の手順で行う。
  1. 1 先ず、作曲した曲を応接間のグランド・ピアノで弾き、作曲時のイメージを正確に思い出す。
  2. 2 次に、そのイメージ再生過程で、どの様な楽器(ピアノ、サキソフォン、バイオリン等)で演奏するか? どの様なリズムやテンポ(速さ)で演奏するか? どの様な演奏スタイル(オーケストラ、ビッグバンド、トリオ等)で演奏するか? などを固める。その結論をメモする。
  3. 3 当日又は後日、そのメモを基に電子楽器で演奏し、「演奏デモCD」を作る。
  4. 4 電子楽器で演奏した時、期待するイメージの演奏にならない時がある。その時は、その場で演奏し直し、録音し直し、演奏デモCDを完成させる。

 「何故、この様なクソ面倒な事をするのか?」 その理由は、作曲作業も、演奏作業も、録音作業も、制作作業も「感性作業」である事に在る。「感性」を発揮した時は「興奮」している。この興奮状態を一度冷やし、理性的、人間的に「納得」しながら、自己を「客観視」しながら完成度を上げたい為である。簡単に言えば、興奮した自分を信用していない為である。

 この「演奏デモCD」は筆者の想定外の効果を齎した事を知った。映像音楽制作会社のCM担当者だけでなく、TV・CM制作を電通などに依頼したスポンサー企業のCM担当者は、作曲楽譜だけでなく、演奏デモCDを同時に入手できる。彼等は「TV・CMの音を直ぐに聴ける」「TV・CMの音楽的効果が直ぐに分かる」と好評価を筆者に伝えた。更に演奏デモCDは、どの様に編曲するか? どの様な演奏家に演奏させるか? 音楽スタジオでどの様に録音させ、制作させるか? など「デモCD」でなく「正規の演奏CD」の制作に関係する編曲者、演奏者、録音者、制作者に大変役立った様であった。そしてその高評判を筆者に伝えられた。しかし彼等の中で筆者の「演奏デモCDの制作」にカネを払ってくれた人物は誰一人いなかった。

3 筆者のリアルタイム演奏に依る演奏デモCDの制作時間
 カラオケ・テープやカラオケCDは、昔は、演奏家による生演奏とその録音に依って制作されていた。今は、大型の電子演奏・録音装置、筆者の様な小型の電子楽器、PCなどのキーボードを介して「バッチ式打ち込み方式」でカラオケCDが作られている。

 一方TV・CM映像に使う「音」は、電子楽器の不自然で味気ない「人工音」でない場合が多い。その「音」は、作曲楽譜や編曲楽譜を基に演奏家を起用し、音楽スタジオで生演奏させ、録音して作成された「自然音」が活用される。しかし時間や手間や費用が掛かる。

 「バッチ式打ち込み方式」とは、「総譜(Full Score)」に基づき、人工音を選び、キーボードで打ち込む「基礎作業」を行う。「総譜」とは、下記の様にバイオリン、管楽器、打楽器などを譜面で書かれた一覧性のある楽譜の事である。

出典:総譜
出典:総譜 bing.com/images/insightsToke_608055378343233286&iss=VSI

 もし作曲者が主旋律とコードで書かれた「作曲楽譜」だけしか書かなかった場合、編曲者を起用し、編曲させ、総譜を作らせる。この総譜での基礎作業が終われば、全ての楽器演奏要素を集合させ、編集し、演奏CDを完成させる。面倒な作業だが、演奏家起用、録音技師起用、音楽スタジオ使用などが不要になる為、CD制作コストを大幅に節減できる。

 筆者はジャズ・ピアニストでもある。クソ面倒な打ち込み作業を一切しない。電子楽器を使って曲の最初から終わりまで連続して「リアル式演奏方式」でデモCDを仕上げる。この電子演奏・録音楽器には、ピアノ、サキソフォン、バイオリンなどの人工の特定楽器音、オーケストラ、ビッグバンド、トリオバンドなどの演奏スタイルが内蔵されている。それらの楽器音、演奏スタイルを組み合わせ、リズムとテンポを設定し、一気に制作する。

 しかし演奏や録音の過程で不満足な演奏をしたり、ミス演奏をした場合、最初に戻って再演奏をする。通常は数回のやり直しをする。そして満足な演奏が出来た瞬間、演奏デモCDは完成する。楽しく演奏し、楽に、しかも短時間で完成させる。コストも殆ど掛からない。

 次号から筆者がどの様な「やり方(具体的方法論)」で作曲するか? 解説したい。以前から作曲に興味を持っている読者や本稿を読んで作曲に興味を持った読者は、この機会に、試しに作曲してみたらどうだろうか? スポーツの趣味の他に、絵画、彫刻、俳句、カラオケ、合唱などの「趣味」を持った人物は数多くいる。しかし意外にも「作曲」の趣味を持った人物は殆どいない。

出典:趣味
出典:趣味
many+kinds+of+hobbies+images
100.png&action=click

 筆者の自説&持論であるが、「作曲は誰でも出来る」と考えている。楽器が演奏できるなら、演奏しながら作曲すればよい。楽器を演奏できないなら、「口ずさむ」方法でやればよい。楽譜を書けないなら、スマフォで録音すればよい。作曲した事を採譜(楽譜に書く事)したいなら、採譜出来る人にスマフォ録音を聞かせ、採譜して貰えばよい。

 自分に作曲の才能があるか? そんな事を云々する必要は全くない。兎に角、やってみる事である。もし作曲して「楽しい、喜び感じる、好きだ」と分かれば、それだけで十分! 作曲を続ける内のコツを掴む。「好きこそものの上手なれ」である。
つづく

ページトップに戻る