今月のひとこと
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 価値創造 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :7月号

 紫陽花の見頃が過ぎ、いよいよ夏本番です。暑さ対策として一頃「緑のカーテン」がもてはやされましたが、このところ目立たなくなってきました。効果がどうこうというよりも、後始末が大変なので敬遠する向きが増えたということかと想像しています。緑のカーテンの材料として脚光を浴びたゴーヤですが、まず実ったゴーヤの処分に困ります。出来がよければご近所に配ることもできますが、全てを自宅で食するのは大変です。季節が過ぎるとネットに絡まったツルを外さなければなりません。この面倒くささにめげず、今年も緑のカーテンを育てているお宅を見ると暑さに負けないぞという声が聞こえてくるような気がします。

 P2Mでは、プロジェクトを「価値創造事業」と定義しています。ここ数年、他のプロジェクトマネジメント標準でも、プロジェクトの成果として「価値」を重視するようになってきましたが、P2Mでいうところの「価値」と同じ意味で使っているのでしょうか。
 まず、「定義」という言葉ですが、議論などを進めるために言葉の意味などを「限定」することを指しています。P2M標準ガイドブックでは、書籍の中で解説するプロジェクトマネジメントが対象とするプロジェクトとして「価値創造事業」に限定すると規定しているわけです。価値を生み出さないプロジェクトというものがあったとしても、それはP2Mが対象とするプロジェクトには該当しないと言っていることになりますが、この点に関して他の標準における「プロジェクトの定義」ではどうでしょうか。
 個別性、有期性、不確実性をプロジェクトの基本属性だとする点については、他のプロジェクトマネジメント標準でも同様です。P2Mだけが当初から「価値」を重視し、他は重視してこなかった(あるいは、重視していたが最重要としていなかった)という点が、「価値」に関して違和感を覚える基かもしれません。
 以下は、編集子個人の勝手な想像です。
  1. ○ プログラムマネジメント
    P2Mでは、「価値創造」を使命とするプログラムの傘下にプロジェクトを配する構造となっていることから、プロジェクトの定義においても当然のこととして「価値」を組み込んだのだと考えられます。「価値創造」をプログラムに任せて、プロジェクトではヒト・モノ・カネの管理だけに特化するという構造にすることも可能だったと思いますが、ミドル・アップダウンをベースとしたマネジメントでは目的(価値創造)を全員が共有することが前提になるため、プロジェクトの定義に「価値創造」が組み込まれたということではないでしょうか。
  2. ○ 東洋的な発想
    プロジェクトの3つの基本属性は、モノ・コトといった事象について表現しています。他のプロジェクトマネジメント標準においては、プロジェクトの成果物の「価値」は目標として掲げるものの、モノ・コトといった事象ではないので科学的ではないと考えて共通属性の中に組み込むことに抵抗があったのかもしれません。
    一方で、「事業」という言葉は古代中国の易経に由来しているそうですが、もともとは「自由自在に変化適応することを通して民を導く」という社会貢献的な意味を持っていました。日本で生まれたP2Mではそうした古代中国から引き継がれた思想の影響を受け、プロジェクトという事業も何らかの貢献(すなわち価値創造)を伴うと定義することが自然だったというところがあるのではないでしょうか。

以上

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