グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第172回)
発展へのエネルギーがあるか

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :7月号

 最近筆者が感じているのは日本の国、会社、個人にエネルギーが感じられなくなった、ということである。どこもマイクロマネジメントが横行している。広島G7サミットで、岸田首相が大きなエネルギーを発生させてくれたと思ったら、その後の国内問題で、エネルギーはどこかに行ってしまった。
 
 しかし、報道によると、岸田首相にパワーをもらった(?)ウクライナ政府は、戦後復興で、EUとのアクセスを確保するためにも日本の新幹線を導入したいと言っているとのこと。新幹線建設には巨額な投資が必要であるし、保守運転もヨーロッパや中国の高速鉄道と比べて難しいようなので、実現するかどうかはまだ不明であるが、楽しみだ。
 
 筆者は現在、石油・天然ガス業界の顧客側の研修を頻繁に行っている。それは、孫の世代の日本を考えると日本のエネルギー・セキュリティは大変な問題で、手っ取り早く産油国との強い絆を維持する手段の一環である高度研修に我が残りのアクティブライフを費やすという強い思いがある。
 
 6月も、海外石油公社のエンジニア達の技術研修の締めで2日間のプロジェクトマネジメント研修を行ない、2週間置いて、中東オマーンを中心に、サウジアラビア、カタールの代表を加えて幹部候補生の戦略研修を行なった。研修生の受講態度は大変ポジティブで、特に幹部候補生研修は、まさに、磁場に電荷が入ったが如しで、議論につぐ議論で、大きなエネルギーが生まれた。このコラムで何回か書いているが、筆者は、発展途上のシナリオで、高いエネルギーが生まれる研修の場のみを選んで活動をしてきた。
 
 石油公社の盟主であるサウジARAMCOやカタールQEは、今年に入ってから、中国と韓国と両方向で急接近し、原油・天然ガス取引と両国内での開発案件をパッケージ・ディールして、両国のコントラクターもサウジやカタールで大型のEPC契約を受注している。たとえば、韓国のHyundai Engineering & Construction は、韓国でのARAMCO社投資案件7億ドル、サウジアラビアの石油化学プラント案件で4億ドル、締めて1兆5千万円を受注したし、カタールでは、これまで日本の某社が石油メジャーの絶対的な信頼を得て遂行してきた石油化学プラントの大元装置を韓国のSamsung Engineeringが受注している。
 
 ウクライナの日本の新幹線建設であるが、ウクライナのキーウからポーランドのワルシャワまでを初めに建設すると仮定すると、距離は800キロで、総建設費はインド西岸で建設中の500キロの新幹線の総事業費が1.8兆円であるので、2.5兆円くらいか。費用は、EUのフォン・デア・ライエン委員長が提唱するように、ロシアの凍結資産を活用して30%カバーとして7500億円、日本の借款(金利0.1%)で40%とすると1兆円、残りの30%を世界の企業等が投資する、というシナリオはいかがであろうか。
 
 もちろん、日本は資金提供だけではなく、ウクライナ新幹線誕生に向けて、プロジェクトX的な役割を担い、それが国としてのエネルギーを生み、世界でのレーティングを高める。 🤍🤍

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