関西例会部会
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第162回関西例会 報告

PMAJ関西KP 安達 正人 : 6月号

開催日時: 2023年4月28日(金) 19:00~20:30 (懇親会~21:00)
開催場所: オンライン(Zoom)開催
テーマ: 「Web3時代のマーケティング」
~時代の変化をどう捉えればいいのか~
講師: 積 高之 (せき たかゆき) 氏
京都積事務所 代表

◆はじめに
講師は、MBA(経営管理修士)/ITコーディネータ/上級SNSエキスパート/上級ウェブ解析士など幅広いスキルと経験を基に、企業経営戦略レベルのコンサルティング業務等でご活躍されています。
本日は、Web3そのものの基礎の部分から、NFTやDAOなど新しい仕組みについて解説戴き、さらにはメタバースなどの関連技術を紹介しつつ、その変化をとりいれたマーケティングの新しい考え方と、人々の行動変容の未来をご紹介戴きました。

◆講演概要
・Web1.0からWeb3.0への変遷
当初Webはインターネットの商業化により普及し始めました。当時、情報は一方通行でユーザーは情報を一方的に受け取ることしかできない状況でした。
Web2.0では、情報の双方向性とユーザー参加の機能が主要な特徴と言えます。動画配信やSNSなどでユーザーが自ら情報を発信し、他のユーザーとの対話や共同作業が可能となりました。ただしIDやパスワードなどの個人情報等はサービスを提供する企業や組織が独占的に所有し管理しています。
Web3.0は、現在のWeb2.0の進化形として提案されている概念であり、その特徴は、ブロックチェーン技術の活用により、ユーザー個人が自らの情報を管理することができることや情報の所有権はユーザー自身であることなどが挙げられます。

・政府などの動向
政府や各省庁などもWeb3.0へのグローバルな潮流の中で我が国の対応を進めています。
自民党からは、2022年3月に「NFTホワイトペーパー(案)」が発表され、2022年11月の「web3関連税制に関する緊急提言」や12月の「web3政策に関する中間提言」を経て、今年の4月、「web3ホワイトペーパー ~誰もがデジタル資産を利活用する時代へ~」が発表されました。日本がデジタル資産を利活用する時代に対応するため、web3の推進に向けた論点や具体的な対処策について解説しています。
経済産業省では2022年7月、「Web3.0政策推進室」を設置し、Web3.0に関連する事業環境課題を検討する体制を強化しています。
総務省も「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」を発足させ議論が進められています。

・Web3時代のマーケティング
従来のWeb2.0では、企業がユーザーのデータを収集し、それを利用して利益を得るという、言わば「狩猟的マーケティング」を展開しています。一方、Web3.0では、ブロックチェーンなどの技術を活用し、ユーザーが自身のデータを所有し、自主的に管理・共有することができます。いわゆる「農耕的マーケティング」では、個人のデータ所有権と公正な報酬が重視されるようになります。
Web3では、分散型ネットワークやブロックチェーンを活用したコミュニティが形成されています。企業はこれらの分散化したコミュニティに働きかけ、信頼関係を構築した、「コミュニティマーケティング」を展開しています。

・Web3時代のメタバース
コミュニティマーケティングの具体的な事例として、Web3との非関連性も説明された上で、実際のメタバースの一部をセミナーの中でご紹介いただきました。
メタバースは、仮想通貨やNFTなどが経済活動の基盤となり、ユーザー同士の取引や経済活動が行われる場となります。また、コミュニケーションプラットフォームとしても機能し、ユーザー同士の交流やコラボレーションに利用されています。
本講演では、メタバースの事例として、講師が実際に仮想空間上に所有されておられる建物やアート作品などをご紹介いただきました。
その中には、アバターになった聴講者が実際に参加できるセミナールームや、仮想空間にあるドバイの景観を一望できるペントハウスなど、仮想と現実世界が交じり合った世界を垣間見ることができました。

ファッションやアートなどの業界では、現実世界で高級ブランドを持つ多くの企業がメタバースに参入し、現実の商品だけでなく、アバター用の服飾やアクセサリー、スニーカーが、また仮想家屋の壁面に飾る絵画、アート写真などが販売されており、ユーザーは自身のウォレットに入れた仮想通貨を使ってこれらを自由にかつ安全に購入することができます。また、仮想世界に建てる家屋やその建材・部材なども販売されています。
メタバースやWeb3の広がりによって、デザイン、システム、販売など、人々の仕事の場も広がっています。
マーケティングは、これまでのBtoB,BtoC、さらにはDtoC(ダイレクトtoコンシューマー)から、メタバースのVRやARに対応したDtoA(ダイレクトtoアバター)という新たなチャネルを獲得したわけです。
本日のご講演内容をこのようなテキストでお読みいただいてもご理解いただけるには無理があるため、是非、講師からご提供いただいた講演資料をPMAJホームページの「月例会開催資料」よりダウンロードしてご覧いただきたいと思います。

◆講演をお聞きして(所感)
筆者はITとはあまり縁のない業界にいるため、「Web3」や「メタバース」、「NFT」などの用語でさえ、知識も経験も余りありませんでしたが、ご講演の後半にメタバースについて実際の画面で事例を解説いただき、知識というより感覚的に新たな世界を実感することができました。
講演最後のQ&Aにおいて、敷居が高く入りづらい旨の質問に対して、「とにかく興味を持って一歩入ってやってみれば世界が広がります。180か国語に自動翻訳されるのでユーザーは言語を意識する必要がないため、国籍・年別・性別を超えたコミュニケーションを容易に行うことができます。」とのご回答が印象的でした。
最後になりましたが、筆者のようなスキルや経験の浅い者にもわかりやすく解説いただきありがとうございました。今後メタバースの世界へ没入体験してみます。

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