今月のひとこと
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 プロマネにはなりたくない? 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :5月号

 東京都葛飾区の常磐線亀有駅を降りて数分のところにどこの街でも見かけるような千坪足らずの小さな児童公園があります。おまわりさんの銅像がベンチに腰掛けているので、少年ジャンプ誌で人気だった少年ジャンプ誌に連載された漫画(秋本治)「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(1976年~2016年)の舞台だったことが分かります。有名な公園なのですが、ベンチでおまわりさんと並んで写真を撮った後はすることがありません。
 全国レベルの有名度ではやや落ちるかもしれませんが、隣駅の金町駅近くにある水元公園はこれからの季節にお勧めです。亀有公園の400倍近くの広さ(東京ドームなら20個分の広さ)がある、都区内とは思えないほどゆったりとした公園で、20万本の花菖蒲は見ごたえがあります。
2022年6月水元公園
(2022年6月水元公園)

 10年ほど前からでしょうか、プロジェクトに携わる若手や中堅といったあたりでプロジェクトマネジャー(プロマネ)になるのを忌避する人が多いという話をよく聞きます。学生の頃には創造的な仕事をしたいと言っていた人でも、入社して暫く経つとプロジェクトのリーダーやマネジャーにはなりたくないと言い出すそうです。プロジェクトが価値創造事業であることを否定しているわけではないのですが、プロマネの仕事は創造的ではない管理者の業務だと感じているようなのです。
 我々の先輩諸氏は、Managementを「管理」と訳さずに「マネジメント」というカナ表記で通してきました。「管理」と表記した方が文字数も少なく伝わり易いようにも思えるのですが、他に適切な訳語が見つからないものの「管理」という言葉では意味を誤解されるということでそうしてきたのだと推測します。それにも拘らず、プロマネが管理業務遂行者だと認識されているとしたら悲しいことです。
 なぜ、そうなったのでしょうか。
 プロジェクトマネジメントに携わってこられた読者諸兄において、もし思い当たることがあるようでしたらPMAJジャーナルにその原因や対策などを論文やエッセイにして寄稿いただきたいと思います。
 記憶を辿ると、編集子の周辺でも以下のようなことがありました。
 難度の高いプロジェクトの担当となったそのプロマネはプロジェクトに携われたことを喜びとし、さらにメンバー一人ひとりにその喜びを語っていました。プロマネの心意気は若手にもしっかりと伝わっていたようです。困難なプロジェクトを克服するために、複雑なルールも取り込むことになりました。多少面倒ではありましたが、困難を乗り越えようというとの気持ちが一つになっているそのプロジェクト現場では確実に実施され効果を上げました。皆がルールの意義を理解してくれたのだと思います。このような状況の時は、メンバーの中にプロマネを目指そうという者も多くいたように思います。
 新しいプロジェクトでは、人事制度の変更等によって管理事務に追われるようになり、そのプロマネがプロジェクトへの想いを語る機会がなくなりました。また、以前のプロジェクトを成功させた複雑なルールを持ち込みました。このルールは特定のリスクの対策にはなりますが、そのリスクが新しいプロジェクト内で特に重大だとは思われず、何のために導入するのかという不満がくすぶっていました。ルールを守らない人も出てきましたが、プロマネが怒る以外にはリスクが顕在化するというようなことはありませんでした。プロマネとメンバーのコミュニケーションが芳しくないまま、プロジェクトは計画どおり終了しました。思い返すと、プロマネになりたくないという声を聞くようになったのは、似たようなプロマネが増えてきた頃からかもしれません。
以上

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