PMプロの知恵コーナー
先号   次号

ゼネラルなプロ (151) (リスクマネジメントと失敗の構図)

向後 忠明 [プロフィール] :5月号

 前月号ではプロジェクトチームが統制し影響を及ぼすことのできる範疇のリスク対応について述べてきましたが、今月号は先月号の続きで提案書の作成及び契約関係時における対応について説明していきたいと思います。

2 )提案書の作成及び契約関連
 a ) 契約内容・条件設定のミス又は拙劣。(契約形態、支払条件、完了条件、知的所有権の帰属、変更条件と義務、等々)

標準的契約内容の確認を提案書提出前に確認。少なくてもPMはプロジェクト実行に当たっての契約上押さえるべきポイントかを理解している必要がある。

B&C
 b ) 契約締結の遅れ

契約の発効条件とそれに伴うスケジュール遅延を契約書に示す。


C
 c ) プロジェクト規模と積算能力(規模が大きく積算要素が増加し複雑になり積算ミスの原因になる)

プロの積算要員の確保と積算データの蓄積。現状はAMとSEの共同作業で十分な積算時間を取り実行。将来は積算チームが必要。

AorD
 d ) PJ規模・特性とPJ体制のミスマッチ

PJ体制についてはその規模・特性・内容を見て、PMのアサインを同時に決定して行く。(経験者の意見を聞く)

A
 e ) 見積り漏れ/ミスによるコスト増

気がついたら再掲により顧客との交渉。

D
 f ) 技術要件及びSOW
(仕事の範囲)が不明確

提案書及び契約にて明確に提案内容を示す。
(変更条件も明確にしておく)

D
 g ) 証拠書類(議事録及び各種文書)の未整備(プロジェクト実行中も同様

ISO手順の遵守(後のプロジェクト実行中における問題発生時の交渉材料となる)

D

 h ) 法規・税制等の改訂及び確認ミス(官庁申請事項があった場合はスケジュールに注意)

法規制や税制の変更は契約に示し逃れられるが確認ミスは致命傷。(契約前に充分に調査の上確認)

A&D
 i ) ジョイント相手の能力不足

パートナー選定時の能力チェック。さらに契約書にて押さえる。
(Joint-Several方式(*1)で相手の能力不足も理由とする)
但し、パートナーの業務の代替が可能かどうか確認の必要がある。

B&D
 j ) 再委託先の能力不足

登録業者かどうかチェック。登録業者なら他PJの実績をみて再審議。
再委託先による損害が生じた場合、契約条件を確認(性能的、機械的保証違反に対するペナルティー、損害賠償及び留保金の引渡し等の条件(契約書不備なら条件設定の義務付け)

B
 k ) 顧客またはパートナーの責によるスケジュール遅延又は品質問題

スケジュールシーケンスを考慮し、時間に十分な余裕を取る。
(ファーストトラッキング(*2)等の手段をとる)
品質についてはレビュー、試験・テストの強化とISOに基づく適切な是正・予防処置をとる。そして、総合性能の不首尾も含め、契約書で役務区分とその責任・義務を明確にする。

C&D
Note :
*1. Joint-several方式:共同事業体が連名で主契約者となり、全メンバーが発注者に対して、連帯してまたは個別に責任を負う共同連帯方式である。
*2. ファーストトラッキング:順番通りに行うタスクを同時並行で進めることでスケジュールを短縮する方法です。ただし、完了すべきタスク間に依存関係がないプロジェクトにのみ使用できます。

 l ) 仮契約でPJを実行する場合

仮契約書の条件設定

  • 仮契約時点で合意する重要なポイント(業務内容、契約予定金額、支払い条件)を盛り込む
  • 予定金額の前提条件を明確にし、交渉条件を整えておく。(仕事の範囲、技術仕様、スケジュール、単金等々)
  • 正式契約にいたらなかった場合に発生したコストについても規定(この場合は人件費範疇でGO&STOPの判断をする)

B
 m ) 体制の多重構造及び業者依存体制

  • 営業的観点からの体制作りからPJ主体の体制作り(プロジェクトの上流側へのSE(PJスタッフ)の参加)
    体制作りと人の配置は仕事の範囲と内容・対象技術により変わる。また多重構造はコミュニケーションの伝言ゲームとなり、不適合の温床になるばかりか、コスト高となる。
  • 社員による社員のためのPJ遂行を優先する。(但し、対象PJの選別が必要)
    他力本願は自社社員の経験の場を奪うばかりか、パートナーが将来競争相手となり得る。
    すなわち、自分の手で自分を締めつけている。
    故に、リソースマネージメントは重要であり将来展望と現状との総合的視点から行われる。

D
リスク垂直分担のやりすぎ

今月はここまでとし、来月号はプロジェクト実行管理面からのリスク事例を述べます。

ページトップに戻る