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海外の人達と仲良くなる力

井上 多恵子 [プロフィール] :4月号

 海外の人達と仲良くなるためには、英語力が必要か?あればあったにこしたことはないが、英語力よりももっと大事なことがあるのではないか、と感じさせてくれたのが、侍ジャパンのラーズ・ヌートバー外野手だ。WBC前はほとんど日本では知られていなかったヌートバーが、一気に日本で知られるようになった。彼の言動をトリガーに、海外の人達と仲良くなる力について考えてみたい。

1.笑顔でいる
 笑顔は、国境を越えて人と仲良くなるためのパスポート。ヌートバーの笑顔は、我々日本人の心をつかんだ。ある講義の中で聞いた話だが、笑顔は、数多くある非言語メッセージの中で、万国共通で、最も誤解されにくい表情だそうだ。
 一般的に、日本人は、笑顔の表情に乏しいらしい。そのため、ある海外赴任者向け異文化コミュニケーションの講座では、鏡を見ながら、笑顔になる練習も行った。ペンを口にはさんで、無理やり笑顔をつくる方法もある。写真撮影の際の掛け声も、活用できる。「チーズ」がよく使われるが、「ズ」と言う際に口をすぼめてしまうので、お奨めではないらしい。代わりに「ハッピー」を使うと、「イー」で終わるので、口も広がるし、言葉的にも「幸せ感」が増す。
 我々日本人は、笑顔の表情に乏しいことに加えて、年齢を重ねるにつれて、口角が下がり、意識しないと、笑顔から更に遠くなる。色々な方法を試し、自分にあったものを見つけて、できるだけ笑顔でいることを心がけたい。

2. その国の言葉を話す
「日本大好き。みんなありがとう」ヌートバーがインタビューの最後に拳を突き上げながら大声で言ったシーン。テレビでも繰り返し報道されたので、ご覧になった方もいるだろう。最初は英語で話し、最後に日本語で言う。量の問題ではない。少しだけでもいい。日本語で語りかけられて、私は、 をわしづかみにされた。
 海外の方と話をする際に、通訳の方に100%依存して最初から最後まで日本語で話をするよりは、冒頭と終わりの挨拶だけでも、その国の言葉で言うことはお薦めだ。海外の方で「ありがとう」や「こんにちは」を日本語で言う方を結構見かける。私も海外旅行先では、最低限、これら二つの言葉は覚えて言うようにしている。ヌートバーは、そこに少し言葉を加える努力をした。君が代を歌えるように、来日前にローマ字で書いて覚えたり、お母さんと日本語を勉強していたりしたことを報道で知った。
 私が担当しているグローバル研修でも、役員に発表する際に、「わたしのなまえは、〇〇です。よろしくおねがいします。」と言えるよう、日本人仲間の協力を得て練習し、実際に語った人がいた。聴いていた役員も、笑顔になった。

3. その国の良い点を褒める
 「日本大好き。」というヌートバーの言葉もいい。こう言われると、日本人としては嬉しくなる。海外のアーティストが来日した際の公演などで、オーディエンスに対して、”I love you, Tokyo!”(東京、愛してるよ!)と言っているのと同様だ。
 どんな国でも人でも、良い点を見つけることができる。それらを探して、具体的に褒めてあげることができると、相手は喜ぶ。場合によっては、その人が知らなかった良さに、気づくことにもなる。日本に住む外国人の方々が、「クール」に感じる日本文化について語り合う「クールジャパン」という番組がある。彼らのコメントから、普段見過ごしていることの中に、光るものがあることに気づくことが多い。
 良い点が見つかっても、それをその国の言葉で伝える方法がわからないということもあるだろう。その際でも、翻訳機を使ったり、誰かに教えてもらったりすればいい。伝えたい、という気持ちさえあれば、手段は見つかるものだ。

4. 強みをもつ
 大谷翔平は圧倒的な二刀流がベースにあり、それに加えての人間力が魅力となり、アメリカでも人気者になっている。人種に関係なく、圧倒的な強みをもつ人には、人々は魅了される。凡人には圧倒的な強みをもつことはなかなかできないが、「自分にはこれができる」という点があり、それを示すことができれば、関係性は構築しやすい。
 知人のお子さんが、米国の高校に通った時の話。英語での会話に苦労し、周りからも少し遠ざけられていた彼がブレークしたきっかけは、数学の授業で難しい数式の問題をクラスメートの誰よりも早く解いたこと。一気に「この人、すごい!」と皆の賞賛を浴び、それからは、皆のほうから、「教えて」と言って寄ってくるようになったという。
 強みはなんでもいい。料理が得意なら、お弁当なりお菓子をつくってきて見せたり、配ったりする。スポーツが得意なら、スポーツの場面で輝けばいい。アニメは海外でも人気が高いので、絵を描くことが得意な人は、似顔絵をプレゼントするのでもいい。

 ここでご紹介した4つの方法以外にも、相手に対して好奇心を持つ、共通点を見つけるなどある。機会があれば、また紹介したい。

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