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「エンタテイメント論」(181)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :4月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●筆者の非音楽分野での「創造活動」と音楽分野での「作曲活動」
 前号の末尾で、筆者の作曲の「在り方(基本的考え方)」と「やり方(具体的方法)」を紹介し、解説すれば、既存事業の改善や新規事業の成功に挑戦する企業人(社長&社員)が「優れた発想」をする為に役立つかもしれないと書いた。何故、その様に書いたのかを以下で説明する。

出典:
作曲活動

   cmilearn.org/
how-to-teach
-composition
出典:作曲活動
出典:創造活動
出典 創造活動
dreamstime.com/got
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 筆者は、過去、産官学の3分野で様々な職務を遂行してきた。今も同3分野で活動している。最近は特に「経営コンサルタント」として各種の企業の経営顧問(アドバイザー)に起用され、当該企業の経営・業務への支援指導をする一方、コロナ危機に直面した企業からの経営相談への対応に力を入れている。

 また「ジャズ・トリオ(ピアノ、ベース、ドラム)+女性歌手」の編成で、ピアノを担当し、東京都内のジャズ・ライブ・ハウスで出演(コロナ危機で中断中)、同時に(株)ビクター・ミュージック・アーツから提携を受け、日本音楽著作権協会(JASRAC)の支援を基に、プロ作曲家として作曲活動をしている。

 上記の非音楽分野では、例えば筆者自身が参画した新規事業の開発が成功した理由は、「創造活動」の過程で「優れた発想(アイデア)」が導き出された為である。また各種企業への経営支援指導や彼らからの経営相談への対応で当該企業の新規事業が成功した理由も、やはり「創造活動」の過程で「優れた発想」が導き出された為である。

 上記の音楽分野では、例えば筆者自身が参画するジャズ演奏活動と作曲活動が成功した理由は、作曲活動(ジャス演奏活動)の過程で「優れた曲(旋律×和声×リズム)」が導き出された為である。なお作曲活動にジャズ演奏活動をカッコ書きで含めた理由は、ジャズ演奏の根幹を成すジャズ・アドリブ演奏こそが作曲活動(リアルタイム)そのものであるからだ(本稿で別途説明)

 筆者にとって創造活動と作曲活動は、心と体の中で混然一体となっている様で、無意識に相乗効果を生み出しているのではないかと感じている。

 ついては筆者の作曲の「在り方」と「やり方」を順次紹介する。作曲への理解を深めて貰う為に此の紹介の前に「筆者の作曲活動と作詞活動」、「作詞家と作曲家の関係」等を紹介したい。

 なお作曲活動は「音」を扱う。本来ならピアノを弾きながら解説すれば、実態感が伝わり、分り易い。しかし本稿では「文章」と「絵」でしか解説できないモドカシさがあり、限界がある。此の事を予め承知して欲しい。もっとも創造活動を解説する場合も、同様の問題がある。共に理屈の説明では理解(Knowing)に限界がある。「実行、実践、実戦(Doing)」し、失敗し、努力し、成功して初めて「心得&体得(Getting)」する。Knowing→Doing→Gettingて実態が分かり、人に伝えられる。

●筆者の作曲活動と作詞活動
 エンタテイメントを構成する重要な要素の一つは「音楽」である。音楽の根幹を成すものに「曲」がある。と共に曲に意味を付加する「歌詞」があり、「歌」がある。

出典:作詞&作曲
出典:作詞&作曲
出典:作詞&作曲
出典:作詞&作曲 vidadesolteira999.com/how-to-write-for-lyrics.
wikihow.com/Compose-a-Melody

 筆者は、以前、「作曲」の他に「作詞」もしていた。今は、余程の事がない限り、作詞はしない。それには訳がある。

 或る日、或る時、知人の某作詞家と某店で一杯飲んだ。その時、筆者が作詞・作曲した「歌」の楽譜と歌詞を彼に見せた。彼は此の歌詞を手に取り、読んだ。「ウーン」と呟き、考え込み始めた。長い沈黙の時が流れた。その間、筆者は何も言わなかった。彼は歌詞に添削を加えながら、飲みながら、ブツブツ言いながら、遂に歌詞を書き終えた。

 彼から渡された歌詞を読んだ。「驚き」を超え「感動」した。筆者が伝えたい人間性、物語性等の「理性」の観点からの事柄と筆者が伝えたい喜怒哀楽と其れが織りなす情感等の「感性」の観点からの事柄が取り込まれ、筆者が書いた歌詞の言葉を活用しながら、見事な歌詞が完成した。

 しかも筆者のお粗末な歌詞で作曲された曲は一切変更されなくても、彼の素晴らしい歌詞のお陰で、曲のイメージが広がり、与えるインパクトまで強化された。そして「歌」の全体の価値が一挙に高まったのである。此の時、「歌詞」が持つ極めて重要な働きを改めて痛感した。

 筆者は彼の様な作詞を到底できないと悟った。「此の時」を境に、筆者は「作詞」する事を止めた。作詞は作詞家に頼み、作詞された歌詞を基に作曲する様になった。

 また「此の時」を境に、「或る事」を意識する様になった。其れは「簡にして要を得た」作詞、そして理性と感性に共に強く訴え掛ける素晴らしい作詞に接した場合、作曲家は、作詞家が訴える作詞の内容を、「曲」の力で代弁し、盛り上げ、クライマックスの高みに導くと云う「重い責任」を担うべきであると自覚した事であった。

出典:作詞~作曲~歌唱
出典:作詞~作曲~歌唱
出典:作詞~作曲~歌唱
出典:作詞~作曲~歌唱
dreamstime.com/writing-music-song-image80877171  clipground.com/compose.html
dreamstime.com/song-singing-image108954801

●作詞家と作曲家の関係
 「歌」の楽譜のトップに「作詞家の名前」が先に書かれ、次に「作曲家の名前」が書かれる。レコードのレーベルでも作詞家と作曲家の順で記載される。更に音楽ステージで歌手が登場した時、司会者は誰々の作詞、誰々の作曲に依る「〇〇の歌」を歌いますと同様の順番で紹介する。この順番の表示と紹介に多くの人は気が付いているはずだ。此れは日本を含む世界の多くの国々で採用されており、「グローバル・スタンダード」になっている。

 しかし何故そうなったのか? 読者は筆者の今迄の説明で分かっているだろう。この事に関してWEB情報を調べてみた。しかし実にいい加減な回答ばかりが多い。しかもベスト・アンサーと評価された回答までもがピント外れであった。

 此の理由は歌詞と作曲の役割(機能)の観点から考えると直ぐに理解される。誰でも知っている通り、「歌詞」は「歌」に「意味付け」をする機能を持つ。一方「曲」は「意味付け」を出来ないが、歌詞で意味付けされた事柄に依って生まれる心情をより高揚させ、それをクライマックスに導く機能を発揮する。「曲」は「歌詞」の存在があって生き生きと存在し得るのだ。歌がクライマックスに到達した瞬間、作詞と作曲が一体化し、歌の価値が極限化されるのである。

 作曲家は「歌」の価値を高め、創造への貢献性が高い作詞家の存在価値をよく理解しており、作詞家に高い敬意を払っている。

 逆に作曲された曲に作詞家が作詞する場合もある。筆者の上記のエピソードが其れに近い。此の場合でも、作曲された「曲」は作詞家の作詞によって曲のイメージが広がり、曲のインパクトが増し、「歌」の全体の価値が極限化される。従って逆の場合も作曲家は「歌」の価値を高め、創造への貢献性が高い作詞家の存在価値をよく理解し、作詞家に高い敬意を払うのである。

出典:支援
出典:支援
dreamstime.com/
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 作曲家は作詞家を尊敬し、喜んで支え、共に頑張る。自然に作詞家の名前が先に、作曲家の名前が後に標記される様になってきた。しかもその順位に異論を唱える作曲家は世界中誰一人も居なかったし、此れからも居ないであろう。この順位を記載した楽譜を以下で例示する。

出典:荒城の月 作詞:土井晩翠、作曲:滝 廉太郎
出典:荒城の月 作詞:土井晩翠、作曲:滝 廉太郎
荒城の月 楽譜 - Bing images

出典:ドレミの歌 歌詞(Lyrics):オスカー・ハマーシュタイン2世、作曲(Music):リチャード・ロジャース
出典:ドレミの歌 歌詞(Lyrics):オスカー・ハマーシュタイン2世、
作曲(Music):リチャード・ロジャースSheetmusicdirect.com/se/ID_No/16758/Product.aspx
つづく

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