グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第169回)
シャンパン・ファイトはいずれ

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :4月号

 コロナ禍はもうじき収束かという期待が強くなった。「グローバルPMへの窓」というタイトルのブログなので、そろそろ旅の話題を復活させたいところであるが、籠の鳥状態がつづいている。ほぼ毎月研修があり、感染症予防のために外出を極力避けているのと、右膝の関節症が強くなり、ちょっとした移動すらタクシー頼みという生活で、旅に出る心の余裕がない。
 
 グローバルPMのコンセプト自体は、生きており、今年度(22年度)も8本の研修を実施したが、単一国向けは一回のみで、他の7回はすべて、最少4ヵ国、最多20ヵ国向けのグローバルセミナーであった。2023年に入ってからも、オンラインセミナー一回、来日対面セミナー一回で合計35ヵ国のビジネス人が参加してくれた。グローバルとういのは、私の日常となっている。
 
 ヨーロッパや西アフリカへの旅・授業か研修・ワインかウォッカ、の三点セットで回っていた2000年代と2010年代であったが、2020年代には、「旅」は自宅から北千住か池袋サンシャインビルに行くことのみとなり、ワインもウォッカもなくなった。酒を完全に止めたわけではないが、次の研修まで1週間以上あるときに、CANチューハイをたまに飲む程度となっている。CANチューハイは寶酒造のブランドで、他の缶チューハイが150円程度であるところ、220円(税抜き)を維持しており、私のように根強いファンがいることを物語っている。かつて、フライトで往路パリ空港か、復路成田空港に着く4時間ほど前に、ラーメンとシャンパンで締めるのを楽しみにしていたが、自宅ではシャンパンは高すぎるので、シャンパンと同じくらい切れがよいCANチューハイということになっている。
 
 CANチューハイとの付き合いは2000年代の前半からで、社業、PM協会の代表、フランス大学院の教授と3つを同時に務めており、出口が見えない問題を数種類抱えている時など、通勤の帰路、駅のホームのはずれにあるベンチでCANチューハイを飲みながらため息をついて元気を回復するお供であった。
 
 2月中旬に、いつも協力している協会の主催で、アフリカのフランス語圏20ヵ国の290名の参加者向けに半日Webinarの講師を務めた。参加者はすべて社会人教育校の関係者であり、プロジェクトマネジメントに直結しているPMO担当者から、明らかに動員されたと思われる事務職まで、主題との参加者の距離は大きくばらけていた。
 
 2020年までセネガルの大学院で教授をしていた筆者には、フランス語圏アフリカ諸国において、プロジェクトマネジメントは、英語で教えるのがよいか、講師(筆者)のフランス語が下手でもフランス語で教えるのがよいかという真剣な命題をかかえていた。今回は、アフリカ側カウンターパートの要望で、募集要項に書いた通り、フランス語のスライドを使いフランス語でレクチャーを行い前半を終えたが、そこで英語に切り替えてほしいという突然の要望がでて、英語とフランス語混合に改めて続け、質問もフランス語と英語で40問ほど出て、すべて即答した。
 
 参加者のセミナー評価を見ると、自分で自覚はしているが、フランス語が聞き取りにくいとうコメントもあったが、英語に切り替えるのは募集要項違反であり、不満だというコメントの方が多かった。65%の参加者の評価が5か4で、PMに近い人にはインパクトが高いセミナーであったと推定できるが、PMがなんだか分からずに参加した人には、不自然なフランス語もあってほぼ理解不能であったと思える。
 
 3月には、3年半ぶりに、一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS)主催でコードネームPPTPという2週間のP2M来日研修が実現した。ガーナ、スーダン、エジプト、ジョージア、パキスタン、インド、スリランカ、ネパール、バングラデシュ、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、モンゴル、パラグアイの15ヵ国から22名の研修生が参加した。国(経済産業省)の補助金があるODA研修であり、選考倍率は約4倍であった。
 
 コロナ禍の間に参加者のPMマインドや基礎PM知識がどのように変化しているか気がかりであったが、開けてみれば心配なかった。4組のチーム編成で運営したが、国籍・業種をまたぐチームビルディングはあっという間にできて、サステナビリティー課題を中心とした演習はすべて順調に成果がでた。PPTP研修には7名の講師でオールPMAJで臨んだが、襷はしっかりと受け継がれた。
 
 PPTP研修では、例年通りのコース満足度高スコアを得て、期末であるのでシャンパン・ファイトをやりたいところであるが、研修はまだ、4月から来年1月まで8コースが決まっているので、取敢えずはCANチューハイで一人乾杯にとどまっている。 🤍🤍🤍

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