グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第168回)
年末雑感

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :1月号

 年末を迎えて感じる事、それは、今年もなんとか乗り切れた、ということにつきる。 日にちを変えることができないグローバル研修が夏場から毎月続くなかでのCOVID19感染対策、猛暑のなかでの熱中症対策、膝の変形関節症との折り合いを続けながら年末を迎えた。研修や授業をやる際の私の座右の銘は一期一会で、また常に、今年までのつもり、でやっている。すると自然と体力がつき、生産性もそれほど落ちない。
 しかし、やっていることの整理も進めなければいけないので、12月になって大学での授業の最終回を終え、また、1997年以来努めてきたインド国際PM大会での基調講演も辞退して、40年間の世界・国際大会への貢献の幕引きを行った。大学で授業を行うにはリサーチがでてきないし、また、世界大会で迫力がある講演を行うことも、当事者意識がなくなって、できなくなった。今後は、グローバルレベルでコンピテンスが残っているエクゼクティブ研修に絞ってアクティブ・シニアライフを楽しみたい。

 12月の最終週に妻と金沢観光に行く計画を立てて、全ての予約と旅の防寒対策を終えていた。しかし、23日になって北陸地方で吹雪が終日荒れ狂い、翌日まで積雪が続いて金沢市の街機能がかなり損なわれたとの報道があったので、足元に不安がある老夫婦は旅のキャンセルをした。冬季の金沢は若干の積雪はあるが、豪雪地帯でないので、大丈夫だろうと予想して、雪をかぶった兼六園や金沢城を見るのを楽しみにしていた旅計画であったが4年ぶりの大雪に降参した。
 4年前、2018年2月の北陸豪雪の際は、私とPMAJの三浦進さんは、三浦さんの最終集中講義、私の最終から1つ前の集中講義で、石川県能美市の山間部にある北陸先端科学技術大学院大学に居た。豪雪で授業開始が3日間遅れ、学内のコンビニ店から食料が消えてなくなるという恐怖に見舞われた。帰路の小松からの航空便は1週間近く欠航で、かろうじて、三浦プロジェクトマネジャーの読みが当たって北陸新幹線の座席にありつけて帰宅できた。

 FIFA World Cupトーナメントはアルゼンチンの優勝で終わった。日本チームの初戦の日に、エジプト、バングラデシュなど向けにオンラインODA研修をしており、参加者に、田中が応援するのは、日本以外では、フランス、セネガル、アルゼンチンの順であると伝えた。アフリカトップのセネガルは残念ながらベスト16で敗退したが、代わりに元々のアフリカチャンピオンであるモロッコが躍進した。アルゼンチンチームの故国凱旋では首都ブエノスアイレスに首都人口以上の4百万人が集まったとあるが、インフレ率80%、政治的影響力が大統領以上と言われるクリスティナ・フェルナンデス元大統領が収賄罪で禁固6年の判決を受けるなど政局不安で、アルゼンチンの宴の後はどうなるのか。
 わが一押しのフランスは惜しくも連覇を逃したが、キリアン・エムバぺ選手の超人的なプレーには惚れ惚れした。フランスチームも大半がフランス語圏アフリカの国と二重国籍を有する選手で構成されているが、元々フットボール大陸であるアフリカのチームは、欧州のトップリーグで活躍するプレイヤーを中心として、ゲームインテリジェンスとスタミナが大幅に向上した、と感じた。
 旋風を起こしたモロッコには訪れたことはないが、年に3回平均で通っていたフランスにも、モロッコの友好国として往来が盛んなセネガルのダカールにも多くのモロッコ人がいたので、親しみがあり、心からお祝いをしたい。大事にしていたセネガル大学院での教育が種々の事情で中断しており、アフリカでやり残した感があったが、この度、ご縁があり、来年2月に、筆者がPM研修のコース・ディレクターを務めるAOTS主催で、モロッコを拠点にアフリカのフランス語圏の専門学校の教員達向けのオンラインセミナーを実施することになった。先生に田中PMを教えれば、彼らが引き継いで田中PMをアフリカ大陸の若者に教えてくれると期待している。

 このエッセイを書いているのはクリスマスの日で、ウクライナの友人何名かからカードが届いた。キリスト教でも、カトリック、プロテスタントと異なり、旧ソ連の国ではロシア正教の教えでクリスマスは1月7日であったが、ウクライナでは、正教がロシア正教から分離してウクライナ正教となっており、また、国民のロシア離れで、今年は12月25日にクリスマスを祝う人が多くなったとのこと。とはいえ、ウクライナ国民はクリスマスどころではない、という人がほとんどのようで、また、私の友人達の現在の居所もスペイン、エストニアなどとなっている。

 2022年は動乱の年であった、2023年も混乱が続くであろう。混乱の時代にはリスクマネジメントが重要である。現在のリスク理論でリスクは、ネガティブ・リスクのみではなく、ポジティブ・リスク(機会)もある。ハザードとぺリルの実生活への応用、予測の3点見積り(PERT法)などPM実践者ならではの考え方をしたい。 🤍🤍🤍

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