理事長コーナー
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藤女子大学PM専修の報告会に参加してきました

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :2月号

 北海道の藤女子大学の和田先生には、北海道PMセミナーや産学官連携PMセミナーでご講演をお願いしていますが、1月23日(月)に、先生がご指導されている人間生活学科プロジェクトマネジメント専修の「2022年度成果報告会」が開催されるとのことでしたので、参加させていただきました。ここに、紹介させていただきます。
 当日の札幌は、10年に一度の寒波来襲とのことで、ちょっと心配しましたが、寒さに強い北海道のこと、何のトラブルもなく予定通り開催されました。
 報告会の趣旨である、「学生が4年間を通して学び、実践してきた社会課題解決への対峙、プロジェクトマネジメントしてきた成果を、広く社会に発信、披露する。」に沿って、札幌市民交流プラザ1階にある「SCARTS」というオープンスペースで、市民の方々が行き交う中で、展示とプレゼンテーションが行われました。
 プレゼンテーションでは、NPOチーム、行政チーム、合同会社フレードチーム、POLAチーム、St Monicaチームの5チームが、「プレゼン15分、個人学習成果7分、質疑応答3分、計25分」の持ち時間で発表する形式で、午後1時から3時半までの予定で行われました。どの発表も、事前に相当準備をされたことを感じさせる、非常にスムーズな進行で、気持ちの良いプレゼンテーションが続きました。
 発表を聴いていて感心したのは、各チームそれぞれに、解決すべき社会課題はどんな組織のどんな課題か、目的・目標は何で、どんな成果を達成するのか、どのような計画で進めるか、課題は何だったのか、目的は達せられたのか、というストーリーが非常に明確に述べられていたことです。そして、最後にひとりひとりがこの学習を通じて何を学んだか、今後の社会人生活にどう生かしていくのかが、自分の言葉で簡潔に述べられていた点も良いと思いました。
 「プロジェクトマネジメントは目的達成型の活動だから、事前に目的、達成すべき成果を明確にしてそれを達成するための計画を明確にして進めなさい。」とは良く言いますが、実際には、目的を明確にせずに、どんな成果をあげるかもあいまいなまま、とりあえず始めて見るようなプロジェクトが実社会でも散見されます。大学において、このようなPM学習を経験していれば、社会人になって、プロジェクトに限らず、日常の業務を進める際にも、その目的を理解し、成果を明確にして、計画的に進めることができるのではないかと、改めてPM教育の重要性を認識させられました。
 とは言いながら、計画通り行かないのがプロジェクトであり、その時にどう対応するかがポイントですが、発表の中では、企業の方との共同作業ということで一般的な提案をしてうまくいかず、「学生の視点で提案して欲しい」といわれて、周囲の学生を巻き込む提案に切り替えて成果を上げたというような、和田先生の提唱される「女子学生のしなやかなPM」を象徴するようなエピソードも多く紹介され、学生が確実にPMの実践を通して成長していることがよく分かりました。
 指導されている和田先生に、取り組む社会課題をどのように決めているのかをお聞きしたところ、すべて学生たち自身の話し合いで決めていて、先生から課題を提示することは一切していない、とのこと。ちょっと驚きです。実際のプロジェクト活動は3年、4年の2年間で行う様ですが、時間の限りがある中、何に取り組むかも決まっていない状況から、このような形で発表できる成果をまとめ上げていく「企画・構想力」は、これから学生たちが生きてゆくVUCAの時代を乗り切っていく大きな力になるだろうと強く感じました。そして、和田先生が日頃提唱されている、「PMは現代の新しい教養である。」という言葉が、この成果発表の中に、見事に生かされていると感じました。
 発表の内容とは別に、非常に印象的だったのは、学生たちの活動の場を提供いただいた企業のマネジメントの方や、一緒にイベントを企画・実践していただいた方々が、学生の発表を聴きにいらしていて、皆さん全員が、励ましの言葉、学生の今後の活躍への期待の声をかけてくれていたことでした。
 プロジェクトには人を巻き込む力があり、一生懸命取り組んでいると、いつの間にか周りの人たちが動き出し、つながりの輪ができていくという事を、学生たちは実感したのではないでしょうか。このようなプロジェクトマネジメント学習の実践の中で、一緒に活動したチーム、協力してくれた関係者の皆さん、指導された先生方を含めた「PMコミュニティ」が、発表されていた学生の皆さんのこれからの社会人人生を、きっと豊かなものにしていくのだろうなという暖かな想いを、極寒の札幌で感じた一日となりました。
 藤女子大の皆さん、報告会に参加させていただきありがとうございました。

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