PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (148) (リスクマネジメントと失敗の構図)

向後 忠明 [プロフィール] :2月号

 今月号は前月号のリスクの対応策の続きですが、その対応策が何故とれるのかその想定を行います。

 4)原因の想定と予防措置
 ここでは上記にも示したように「何故そのような将来問題が起きるのか」という観点から原因を想定することが必要です。このことにより将来問題の予防が可能となります。

 なお、前月号のリスク対応策3)にて説明の抽出された問題事項の「発生確率(P)」「おきた場合の影響(S)」を評価したものを示します。
分析すべき重点領域がわかったらその原因を想定・列挙し、それを評価・絞込みを提案書作成に重点をおいて行い、その発生確率と影響度をL、M、Hにて分別し、その結果その予防対策として何をしたら良いかを決定する。
 そして、何時まで、誰がその予防措置を処置するかを決める。

4.4 対応策のまとめ方
 リスクに対して実際どのような対応策を取るのかは以下の例のように①危険の回避②リスク影響の移転③危険の軽減と分担④リスク影響の受容がある

 


















  1. ① 過度又はハイリスクの仕事の受注を差し控える。
  • 適正な危険量を超える新規受注
  • 危険(赤字)を同種のJobに集中させない(顧客、PJ種類)
  1. ② 経営資源(含む水平・垂直危険分担)とPJ種類のミスマッチ(人材とPJの適正規模及び市場変動)













  1. ① 危険の水平分担:出資者間(合弁)/共同受注者間(JV、コンソーシアム)商社(金融、為替)等との分担
  2. ② 危険の垂直分担:顧客との契約形態及び条件/下請・供給業者へのリスク移転の契約へのリスク移転










① 責任の予定: 遅延賠償、支払い遅延利息設定、性能保証違約金、
権利喪失、終結時精算約款、支払い条件
② 責任の減免: 不可抗力免責、直接損害以外の免責、責任限定
損害賠償上限
③ 担保の保証: 銀行保証、完成保証、所有権(含む知的所有権)
留保、ボンド、手形、L/C
④ 危険への付保: 保険/ボンド
 






  1. ① 危険の発生抑止・早期発見・前後処置
    見積能力/計画能力/工程・品質・予算管理能力/人材育成/下請育成・選別等々
  2. ② 危険費(Contingency)の確保 (引き受ける危険を金額で担保する)

1.原因の除去・特定脅威の回避の具体的行動

 1)能力と適正受注規模の測定

 2)事業部の営業戦略との照合

 3)履行危険・対価危険識別

 4)制約条件とその対処能力の設定

2.リスクによる影響受容にかかわる具体的行動

  1)契約形態及び条件の確認

  2)PJ計画(体制、役割分担、コミュニケ-ション)の確認

  3)インターフェース(管理、技術)の確認及びレヴュー

3.リスク影響の軽減と分担にかかわる具体的行動

  1)①及び②については契約条件(特に顧客契約と下請契約との関係)の再確認

  2)③及び④与信や不確定要素への担保

4.リスクによる影響を受容するための具体的行動

  1)①はPJ管理(リスク状況の管理)
    ・ 新しいリスクの発生
    ・ 期限切れ
    ・ 課題解決による課題のリスクからの抹消

  2)②はContingency計画

4.5 リスク対応事例
  1. ① 要件定義不備によるリスク
    契約形態で回避:特に一括契約の場合はシステム開発の経験があれば提案書にて回避する条件を提示し、その後の契約交渉にて変更条件を設定する。場合によってはコストプラスまたはレインバーサブル契約にし、アジャイル方式によるプロジェクト実行を条件とする。
  2. ② プロジェクトの特性、取り巻く環境条件に関連するリスク
    契約条件によって適切なPJ体制、適切な人材配置と分担の設定が必要である。
  3. ③ PJ規模・金額が大きく一社単独でPJ遂行するリスク
    共同受注また下請けなどによるリスク分散そして履行を保証させるボンドの請求と契約条件設定する。
  4. ④ 海外PJのリスク
    プロジェクト計画での責任権限の明確化、仕事の範囲の明確化、変更・課題管理の明確化、コミュニケーションルールの明確化、そして契約条件の徹底的検証が必要である。
    できればISO 9001 に準拠した国際ルールに従った業務遂行手順を採用する。
  5. ⑤ コスト競争によるリスク
  • 見積制度及び適正コスト評価制度の向上と提案書作成技術の練度向上を図る。
  • 自社がプライムを取るならPJ規模及び複雑さに見合った能力あるPMの配置とコンテンジェンシーコストの積み増しを考える。

 以上がリスクにかかわるPJ実行における対応策である。

 なお、来月号では最もプロジェクト初期においてリスクとなる提案時に的を絞った対策の事例について話を進めていきます。
 このケースは今だに50%以上に近い失敗事例のあるシステム開発関連プロジェクトに発生する場合が多く、顧客要件が曖昧なケースがほとんどです。プロジェクト初期におけるリスクが最も多く発生することを考えると、初期におけるリスク対応の良し悪しが後々のプロジェクト進行に大きく影響することになります。

以上

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