今月のひとこと
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 四次元ポケットとPM 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :11月号

 夏から秋を飛ばして冬へ。そんな気配を感じないでもないのですが、紅葉が街に降りてくるのはこれからです。この記事が掲載される頃にははっきりしていると思うのですが、台風22号が消滅するか勢力を大幅に落としていることを祈ります。10月は日本酒のイベントが目白押しで、編集子も大いに楽しませていただきました。これからの季節、暖めて、ゆっくりと味わいたいと思います。

 日本やアジアを中心に世界中で人気の「ドラえもん(藤子・F・不二雄作)」は2005年からテレビアニメが始まり、映画の新作が話題を呼ぶなど多くの人に夢を与えてきました。その主題歌「ドラえもんのうた(作詞:楠部工)」を聞いていて思いました。これって、プロジェクトのことを歌っているのではないだろうかと。

 こんなこといいな できたらいいな
 あんなゆめ こんなゆめ いっぱいあるけど
 みんなみんなみんな かなえてくれる

 ドラえもんが「〇〇ができる道具が欲しい」と思って四次元ポケットに手を突っ込むと、その望みを叶える道具を取り出すことができます。当初は四次元ポケットの中に四次元の製品倉庫があって、そこから取り出しているのだろうと思っていました。しかしながら、よくよく考えてみると、四次元というのは時間も超越した世界なので、在庫を持たなくても都度製品を開発するというスタイルも可能なのです。
 例えば、タケコプターという名の道具があります。竹とんぼに似た形状のモノを頭に付けると、自由自在に飛び回ることができるという道具です。アニメの中では出現頻度が高いので大量の在庫があるのかもしれませんが、初めて要求されたときはどうだったのでしょうか。ドラえもんの要望は①手軽で②走るより早く③移動できる④空に上がるを満たすパーソナルな道具といったことだと思います。飛行機やヘリコプターは空を飛びますが手軽ではありません。空飛ぶ自動車は飛行機に比べるとかなり手軽になりますが、持ち歩けるほどではありません。そこで、四次元ポケットの向こうの時空を超えた世界の中で、人ひとりを空高く運び上げ、普段は持ちあるくことができる道具の開発が行われたと考えてもいいのではないでしょうか。
 のび太君たちには、ドラえもんが四次元ポケットに手を入れて、タケコプターを取り出したようにしか見えませんが、四次元ポケットの向こう側では、プロジェクトが動いていたのです。まず、手軽な空飛ぶ道具をどのような形状で実現するかの検討が行われます。竹とんぼの形状に似せたタケコプターという製品コンセプトを生み出したセンスが光ります。次に、そのコンセプトを実現するための開発が始まります。どのような技術が使われたのでしょうか。失敗とテストが繰り返されてタケコプターの完成です。プロジェクトですから、クオリティ、コスト、デリバリなどについてもきっちりと管理します。ひょっとすると、ヘリコプターの安全性確保と開発コスト抑制という対立するテーマについて激しい議論があったかもしれません。のび太君たちには知らされない大人の領域ですね。
 プロジェクトマネジメントを若い世代にも広く知ってもらいたいと願っています。経営戦略や事業戦略を実現するプロジェクトという説明でもいいのですが、あんな夢こんな夢を叶えるのがプロジェクトだというところから始める方が伝わる説明になるのではないでしょうか。
以上

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