理事長コーナー
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PM生涯学習のすゝめ

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :10月号

 今年が、「学問のすゝめ」の初編が発行された1872年(明治5年)から数えてちょうど150年目にあたることを、今年の7月の「理事長コーナー」で紹介しました。そして、この本が当時の日本人の10人に1人が読んだことや、明治維新以降の日本の教育体制の確立に大きな影響を与え、その後の日本の変革と成長を支える人材を育成する契機となったこともあわせて紹介しました。
 ところで、福沢諭吉氏がこの本ですすめている「学問」とは、「一生懸命にやるべきは、普通の生活に役立つ実学である。」(現代語訳学問のすすめ 齋藤孝訳 ちくま新書p11)という事になります。そして、「学問をするには、なすべきことを知ることが大事である。」(同書p13)と、目的を持つことの重要性を強調しています。
 この思想は渋沢栄一氏の「論語と算盤(そろばん)」の中でも協調されています。
 「現代語訳 論語と算盤」(守屋淳訳 ちくま新書)の第9章「教育と情誼」の中の一節に、「今の青年はただ学問のために学問をしている。初めから「これだ」という目的がなく、なんとなく学問をした結果、実際に社会に出でてから、「自分は何のために学問をしてきたのだろう」というような疑問に襲われる青年が少なくない。」と述べ、目的のない学びの危険性を「国家の活力衰退を招くもとになってしまう。」(同書p194)と続けています。ちなみにこの一節の「今の青年」は、「論語と算盤」が発行された1916年当時のことですが、何となく現代の日本にも通じるように思えます。
 さて、以上のような観点を踏まえて言えば、プロジェクトマネジメントはまさに「実学」であり、それを学ぶためには、なすべきこと、「目的」を明確に持つことが重要だという点は、まさに現代にも通じる普遍的な教えであると考えています。そして、P2Mのロールモデルとする「使命達成型職業人」、最近の表現では「ミッション達成志向プロフェッショナル」という人材像は、福沢諭吉氏、渋沢栄一氏という現代日本の礎を築いた実業家が目指した人材像に通じる点があると思っています。

 PMAJでは、大学の講座向けにP2Mをベースとしたカリキュラムを提供させていただき、その講座を履修された学生の方々に、“PMCe”という資格認定を行っています。その目的とするところは、「プロジェクトおよびプロジェクトマネジメントの基礎知識を有する層が拡大し、PM資格保有者の裾野が広がり、近い将来には上位資格であるPMC、PMS、PMRを取得するプロフェッショナルが増えることを目指します。」というところにあり、まさに生涯学習のきっかけとなればという思いから始まっています。
 そのカリキュラムを導入していただいている大学の一つに、北海道の藤女子大学、人間生活学部、人間生活学科、プロジェクトマネジメント専修があります。
 今年の7月8日(金)に実施した、北海道PMセミナーの中で、同専修の和田雅子教授と、プロジェクトマネジメントを学んだ学生の方々に、社会課題の解決に取り組んだプロジェクト型学習の成果の報告をしていただきました。その発表を聞いていて、まさに「若い方々が自ら社会課題解決という目的を議論の中で設定し、その実践を、現実に課題に直面している組織の方々と協働して成果を出し、目的の重要性を認識すること」の重要性を改めて認識しました。
 ご興味のある方は、11月11日(金)の「産学官連携PMセミナー2022」の中で改めて和田先生と学生の皆さんに講演していただきますので、ぜひご参加ください。

 PMAJとしては、これからの日本の変革と成長を支える方々が、自ら学ぶ目的を持ち、実学としてのプロジェクトマネジメントを生涯を通して学ぶことを支援していきたいとの想いから、「P2Mアカデミー」という学習の体系を提供しています。これからの日本の社会が「ジョブ型雇用」形態へ大きく転換していく中で、P2M資格体系をその達成度のベンチマークとする「P2Mアカデミー」は、日本社会の活性化を推進する力になると考えています。
 これからPMを学ぶ若手の皆さんはPMの知識基盤を固めるためのPMC資格に、プロジェクトと組織マネジメントを体系的に身につけたい方はPMS資格に、すでにプログラムマネジメント・プロジェクトマネジメントの分野で実践を積み重ねてきた方は、その実践力を可視化する手段として「PMR」の資格取得に、ぜひチャレンジしてみてください。そしてその体験をPMコミュニティの中で共有していただくことで、VUCAの時代に立ち向かう日本のPM人材の生涯学習を支えるロールモデルとなってください。
 みなさまのご参加を、心よりお待ちしています。

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