その4 アジャイルの功罪
最近、プロジェクトマネジャー達は、“アジャイル”に多大な関心を示す。特にPMBOK® 第6版はアジャイルPMが基軸となっていたため、これからのPMはアジャイルである、と早とちりした人も多いであろう。アジャイル開発手法は、1986年に野中郁次郎教授・竹内弘高教授がハーバードビジネスレビュー誌に掲載された論文「The New Product Development Game」で初めて提唱された、日本製造業の実践に基づく実践手法である。従い、高度にイノベイティブな新製品開発やソフトウェア開発のように、プロジェクト定義・製品定義・要求定義が、プロジェクトの冒頭でしにくい案件には有効性が高い。問題は、プロジェクト投資決定までのプレ・プロジェクト業務でプロジェクトのパフォーマンス(つまりプロジェクト自体の成功)の80%が決まるという種々の調査研究が検証している、プラントやインフラ、通常の製品開発プロジェクトで、実施段階においてもアジャイル・プロジェクトマネジメントが有効であると考えるプロジェクトマネジャーがいることで、この考えでは、スコープ・クリープ、スケジュール超過、予算超過は必ず起こる。伝統的プロジェクトでは、計画をフリーズ(固めたら)、計画をいかに忠実に守るか、という鉄則すら知らないことは嘆かわしい。
ちなみに、アジャイル・プロジェクトマネジメントとアジャイル経営は全く異なるので注意が必要である。