日本の危機の認識とプロジェクト・マネジメント活用への提言 (28)
東京PM研究会 芝 安曇 : 8月号
Z. |
芝さん。本年度になってペンネーム【芝 安曇】に切り替えてオンライン・ジャーナルを書かれているが、その理由を話してくれませんか。 |
芝. |
わかりました。その点詳しく、お話ししましょう。
現在お話ししている内容はアベノミクスが最終段階にきています。しかしここまでくるには、多くの紆余曲折がありましたが、処理方法として手順を踏んで検討する必要があります。 |
I. |
終戦後の日本人は1948年米国軍の管轄下に入り、敗北したのに、1950年朝鮮戦争が突発し、幸運にも、米軍から兵站の仕事が入り、1964年東京オリンピック、1964年10月1日新幹線始発、1970年大阪万博と日本は他国から見ると素晴らしい発展をとげてきました。
これは敗戦国扱いが、米国からの兵站の仕事をもらうことによって、同盟国的地位が確立されていった。この関係は朝鮮戦争にはじまって、ベトナム戦争にまで繋がっていきました。
1990年に日本は製造業世界一になりました。ここで勤勉な日本人に危機が訪れました。「誇りと慢心」です。つくば学園地区に産官学の高度学園都市を計画し、成功に導きだしました。慢心とは「この学園都市開発中に土地の値上がりがおこり、開発者の先発人種が、土地の購入をおこない、サラリーマンの退職金まがいの報酬を得ました」。
巨大な財テクグループができ、一時財テクしない会社はアホ扱いされました。
ところが1997年山一証券の自己破産により、学園都市バブルが弾けました。どこの企業も「てんやわんや」でした。
バブル崩壊は大蔵省にとっても大きな痛手であった。大蔵省の会計監査は厳しく一般会計監査を見ると、「一般会計税収と歳出総額の差を長年10兆円と定め、切り盛りしていたが、製造業世界一にした日本人を評価して、日本人も中流の上に格上げだなと評価していた。そのため財託を規制せずにいたが、突如バブル崩壊があり、これが大蔵省のトラウマとなった。
- 注1:一般税収入と歳出総額の差は1992年にターニングポイントになりましたが、財テクグループには気が付かず山一証券自己破産まで続いた。
- 注2:オンライン・ジャーナルで検討すべきことを、改めて考え直してみた。一番気になったことがある。それは2014年に出版された【岩波新書:志賀 桜著タックス・イーター(消えていく税金)】を読んだ時であった。はじめにー「揺らぐ財政の屋台骨」―を読で日本はこれでいいのかという驚きであった。それは政治でも経済でもない。人間とは有能な人にまかせると、有能な頭脳が働いて、求めた成果を出し、そのことにまず喜びを感じ、目的達成という自分への限りない評価、次にそれを評価する人々への感謝、次に何をするかという喜びがある。
しかし、有能な頭脳を集めて、世界一になっても、安定した社会が続くと、その組織は活力を失う。そして、気が付くと、集団内の平和が優先され、組織が機能していないことにも気が付つかない。そして組織は周辺国よりレベルが低くなっていることにも気が付かない。これがタックス・イーターの著者志賀 桜氏の警告です。
- 注3:著者の忠告を見て気が付いた、国の経済力がどのようになるとデフレになるか、調べてみた。
- 大蔵省は1990年に日本が製造業世界一になったとき、これまでの景気の良さを拡大するため、各企業に財テクを奨励し、企業人も財テクしない会社はあほだといわれ、懸命に財テクをした。その結果はバブルの崩壊であった。
- 世界では国の経済成長率が2%をきるとデフレ対策に入る。
1) 財務省のバブル崩壊後の戦略
- ①2000年~2005年までにバブル崩壊後の整理をした。整理の基準を下記します。
- ⅰ)対象案件の経理的堅実性を確認し合格とする
- ⅱ)不良部門を整理し、規模縮小で復活させる
- ⅲ)不良部門を整理した後に大企業に吸収される。
- ⅳ)関連性ある健全中小企業の合併
- ⅴ)ゾンビ会社の格付けと対策
- ②財務省はこれらの作業をおえて、財務省管轄の案件を予算化して、公共投資関係予算を200兆円確保した。
- ③2003年~2006年小泉政権の小さな政府の確立
小泉政権は時代が変わっていくのに、自民党の政策変化がないことを指摘し、変化がなければ自民党を潰すと宣言し、郵便貯金の民営化をめざし、自民党の反対を押し切って郵貯民営化を行った。その後小泉政権は米国レーガン大統領に倣って大きな政府から小さな政府へと切り替えた。レーガノミクスの小さな政府とは国が税金を減らす代わりに、生活補助費を縮省する考え方である。
ここで小泉政権は新しい発想でデフレ対策を実施した。これまでの日本企業は景気変動でも非正規従業員の解雇はしなかったが、今回から解雇を認める方式となった。ここには一つ大きな問題が発生した。低賃金の労働者が解雇できる方式は、その国の国民の低賃金を維持する方式である。しかし官僚、大企業人材は世界並みの報酬がえられる。天下り人材に適した手法であるが、若手社員の将来性を失わせる方式でもある。因みに若者の自殺がふえた。
- ④小泉政権の後は民主党が政権を得た。 財務省はこれ以上の予算はつくれないため、民主党政権時代に、消費税増税をきめ、消費税を現在の5%から、最初は8%、3年後には10%と決定した。なお財務省は2,3年おきに消費増税を実施し、最終は20~25%にまで拡大すると抱負を述べた。
- ⑤これに対し、アベノミクス派は、財務省の方式はデフレ時代に消費税増税は国力の低下を意味し、日本の将来に希望が持てないと反論し、アベノミックス案を提出した。俗称大きな政府政策の実施に踏み出した。
2) グローバリゼーション戦略としての【アベノミクス】
- ①安倍総理のアベノミクスは日本人が従来行ってきた政策と大いに異なることを意図した。
戦略の名称は【アベノミクス三本の矢:政策】である。これはグローバリゼーション下での新しい経済戦略であった。しかし、アベノミクスに興味をもつ、すべての人は理解できたが、従来の政権交代は政策交代でなく、これまでの自民党政権は、グローバリゼーション下での厳しい経済戦争に勝つという発想は全くなかった。ただ、小泉政権は従来の自民党の政策ではグローバリゼーションを乗り切れないと判断し、新しい政策として郵政民営化を主張し、選挙に勝利し郵政民営化を実施したが、総理になり実行したのは新自由主義であった。これは小泉総理の米国の相棒ブッシュ大統領の政策と一体化したと思われる。新しい政策ではあるが、小さい政府で、経費節減を実施し、財務省好みの政策との一致し、日本では非正規社員の解雇も行える形をつくった。
小泉政権の次期政権は野党(民社党)となったが、長年の野党が急場の政策をとっても政治が上手くいかないところに、東日本大震災で東北地域の津波被害、原発破壊等の被害が多く、財務省方式で従来通り経費節減政策を実施していた。次の政権の民主党は財務省の方針に従い、小さな政府方式で、デフレには、経費の節約をとなえたが、現在の消費税5%を8%にかえ、3年後10%増税する。更に定期的に増税、最後は20%~25%まで行う旨発表して、野田総理は退陣した。しかし、国民にアピールすることもなく、退陣したが、安倍総理は直ちに自民党の総理候補として名乗りを上げ新政策を発表した。財務省の方針は小泉政権後に、民社党政権時代に、不況対策として、消費税増税を柱とする政策(P2に記載ずみ)を考えていたので、3つの矢戦略を拒否した。国民もデフレの時には節約第一と、消費増税を決定していた。そこで財務省は安倍政権にむけて、公共投資とオリンピックを実施する予算として200兆円の国債を準備してある。公共投資にこれ以上国債を発行できない仕組みとなっていると、アベノミックスに出す国債はない、という日銀総裁の声明。
ここで安倍政権は財務省の発想の誤りを示し、在米日本人経済学者イエール大学名誉教授浜田宏一氏、支援者として、ノーベル経済学経済学受賞者ポール・クルーグマン教授の支援をえて、アベノミクスの戦略の正当性を認めてもらった。今の日本は円高で活用する好機である。財務省は円高で有利に使えるとか、このデフレはデフレ対策として、緩やかなインフレ率戦略でデフレを破れることである。話を変えてロシアへ行くと、貨幣はルーブルである。このルーブルは貨幣に価値がないから日々の生活費に該当するコト、モノに使えるが、価値の高い商品は買えない。しかし、安倍総理の戦略は円の貨幣価値が高いことを利用することであった。安倍総理の発想は日本がデフレなので、デフレ脱却戦略を目指し、政府、日銀は物価安定目標として(緩やかなインフレ目標)具体的な数値で示し、日銀はその目標を達成するまで長期国債などの買いオペを続ける。
- ②第1の矢:大胆な金融緩和
アベノミクス前の財務省の方針はデフレになったことで、物価と賃金が下落し続け、もはや経済活動ができず、デフレがデフレを呼んでいた。
これを救ったのが大胆な金融緩和だった。
- ③第二の矢:デフレ脱却と機動的な財政政策
ここでは何故デフレ国家になったのかを説明する。ここでは「構造問題説」と「需要不足説」を比較しながらまとめると、デフレは貨幣的な現象であることがわかり、日銀の金融緩和政策が市場での「インフレ予測形成」に失敗し続けた。その結果マネーサプライズが増えず需要を低迷させていた。インフレ予測形成で、貨幣価値を上げていった。
注:米国有識者からのアベノミクスに対する見解:【2020年世界経済の勝者と敗者】
- ①ノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマン、浜田宏一イエール大名誉教授著
- 〇日本企業の可能性:嘗ての日本は多額の公共投資を実現してきましたが、そこには急ブレーキが必要でした。日本経済が良くなっていく兆しが見えてくると財務大臣が、「借金懸念」があると財政出動を抑えた。それは金融に経験ない大臣が保身から実施することでしょう。ここで思い切って外国人に日銀総裁をまかせたらどうですか!
- 〇日本の労働人口問題の解消
- ⅰ.日本経済は今のところいい方向に向かっているようです。しかしアベノミクスは失敗する可能性もあります。例えば消費税の引き上げについては大いに議論の必要があります。また日本の経済について語るときはまずデモグラフィー(人口動態)を念頭に置く必要があります。能力が有れば年齢に関係なく労働人口減少軽減する人材に抜擢することが重要です。
- ⅱ.女性活用することで、デモグラフィー上で潜在成長率を高くすることができます。
- ⅲ.「ゲスト・ワーカー型プログラム」として、移民をデモグラフィー対象者に抜擢できます。有能外人の自国民化を狙います。
- ⑥第三の矢:「民間投資を喚起する成長戦略型」への転換
アベノミクスは現在最終段階の民間投資を進めている段階であるが、成功させるためには需要が求められている。アベノミクスは特別区特別区を設けて開発人材を求め実行しているが、需要さがしが成功の課題となる。しかしこの需要探しが容易ではない。
ここでは国家戦略特別区を開発の起爆財にする活動を行うことになっている。しかし需要を喚起できる人材が必要になる。
:ここでの改革は旧来の雇用維持型から自分の仕事の専門性に基づいてキャリアを形成していくジョブ獲得型に切り替える考える必要がある。
◎これからの展開は、来月号で紹介する。
- ⅰ.来月号はアベノミクスに反対した浜 矩子 著 老楽国家論―反アベノミクス的生き方のススメ
- ⅱ.浜 矩子著アホノミクスー完全崩壊に備えよ
- ⅲ.藻谷 浩介著デフレの正体―経済は「人口の波」で動く “不朽の名作
”50万部突破(この本を読むと、日本人は力づけられます。請うごきたい!
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以上
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