日本の危機の認識とプロジェクト・マネジメント活用への提言 (27)
東京PM研究会 芝 安曇 : 7月号
Z. |
芝さん、この講座はこれまでのところ、アベノミクスを主体として、ご解説をお願いしてきました。 |
I. |
芝 安曇 : オンライン・ジャーナルで記載された記事から読み解いた成果を下記にまとめました。
- ①安倍政権は2012年民主党野田総裁政権をバトンタッチしました。安倍政権はアベノミクスと称する戦略を掲げての颯爽たる登場でした。簡単に言えば現在の日本の状態はバブル崩壊後のデフレでした。当時の財務省は大蔵省から財務省に変更し、野田政権時代に消費税率5%から8%、更に15年には10%に増税することを決めましたが、実行することなく2012年に退陣しました。
- ②安倍総理によるアベノミクスは脱デフレを旗印に登場したわけです。まだ、実施されていない8%増税を棚上げし、緩やかなインフレ率2%を実施することを決めました。
- ③これを知った財務省は『日銀法を示し、公共投資に使われる国債は、官が活用する場合にのみ認められる規約になっている』ことを説明し、アベノミクスには適用できない旨通達した。
- ④アベノミクス派は仕方なく、在米のイエール大学浜田宏一名誉教授がノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマンの協力を得て、民間でも国債は使えることを示し、アベノミクスに軍配を上げることに成功させた。
- ⑤アベノミクスの基本的政策
- ⅰ)第一の矢:金融政策による、デフレ脱却戦略
- ⅱ)第二の矢:機動的な財政政策によるデフレ政策
- ⅲ)第三の矢:民間投資を喚起する成長政策
この原則に従いアベノミクスは実行開始した。
- ⅰ)―1.実践的な成果:第一の矢;アベノミクス緩やかなインフレ率2%めざし実行したところ2%弱の成果をあげた。
- ⅰ)―2.実施後:財務省が突然、消費税率8%を国民に宣告した。
国民が既に了解した案件だからという発想で、国民は仕方なく受理した。
その結果緩やかなインフレ率2%は財務省のデフレ政策で、帳消しとなった。
- ⅱ)―1実践的成果:第二の矢:緩やかなインフレ政策で1%強の成果がでた。
- ⅱ)―2:実践後:財務省による10%消費税率の実施でインフレ率が帳消しとなった。
- ⅲ)―1:第三の矢の実践;アベノミクスはインフレ策を無駄にされたが、第一の矢,第二の矢で、得た豊富な予算を頼りに、新規案件を探したが、財務省のデフレ対策が功を制し、大会社が熱心に新規プロジェクトの開発に動かなかった。二番目の問題は都道府県の実施した案件で努力したが、都道府県は容易に規制緩和問題を検討してくれなかったことが痛かった。
私は10年前、小さな町の再生協議会へ参加し、提案書を出したが、町で思いつく案件しか検討してくれなかった。都道府県の再生協議会は、町が考えた案件、県が考えた案件、国が考えた案件が並べられていたが、人口が増加している時はその要求は容易に実施されたが、現在の町は明らかに縮小しているため、新しい案件探しを、平成育ち高齢者を人材として使って探すのは無理がある。しかも県に規制緩和策案件を持ち込んでも受け付けてくれない。
この問題のネックは、案件探しの実行者は昭和の成功者が良いが、平成人に努力せよとかけ声をかけても現状は人手不足、能力不足でその人材の発見が大きな課題なのだ。
では、大企業はどうなのかというと、仕事をつくる金はあるが、人材がいないのが現状である。金もあり、人もいるが、人材がいないがこれまでの結論である。
◎成果に対する検討は来月号に記載する予定である
Ⅱ.―1.アベノミクスの成果と課題:次期政権はリベラル性の継承改革をー
森信 茂樹(研究主幹)―連載コラム「税の交差点」第80回―
―『グーグル記載された記事の掲載』―
- ⅰ)アベノミクスに見られる「リベラル性」
- 安倍政権は連続在任日数が2799日を超え、歴代最長政権になった。
- 再登板した2012年12月、大胆な金融緩和と機動的な財政出動、民間活力を引き出す成長戦略の「3本の矢」によるアベノミクスは、我が国経済・社会を取り巻く景色を大きく変えた。円安・株高が生じ、企業業績は回復し、雇用の大幅な改善などで一定の成果を残した。
- しかしその後の国民の実績賃金は停滞し、想定したトリクルダウン(富裕層が富めば低所得層を含めた広い層にも恩恵が及ぶという考え方)は生せず、中間層の高所得層と低所得層への2極分化、所得・資産格差も進んできた。異次元の金融緩和は財政ファイナンスになり、潜在成長率の停滞、持続的な経済成長への道筋は不透明で、デフレ脱却も先が見えない。
- 国と地方を合わせた長期債務(借金)の残高は、2度にわたる消費税率引き上げにも拘わらず拡大し、財政健全化目標年次は先送りになり、更に新型コロナ対策で大きく積みあがった財政赤字が経済に与えるリスクは増え続けている。
- このようなことから、アベノミクスとりわけ経済成長戦略に対しては、厳しい評価を下さざるを得ない。政治手法も強引で、官僚に忖度を強いる手法は批判も多い。
にもかかわらず、安倍総理が長期政権を続けられたのは、アベノミクス(経済政策)に見られる「リベラル性」にあると筆者は考えている。
- 注:ここでいう「リベラル」とは、米国流の定義で、「国家による市場の介入を行うことにより個人の自由を守る」という考え方である。
市場の資源分配機能を肯定したうえで、市場の失敗や行き過ぎた部分への国家の介入・国家の役割を肯定する。
具体的には「政府の規模をある程度大きくして、社会保障の充実などにより安心・安全な国づくりを目指すこと」、更には「税や社会保障を通じて格差問題への対応を強化すること」である。
- 米国では、基本的に「大きな政府」を標榜する民主党はリベラル、「小さな政府」を主張する共和党は保守と区分される(トランプ氏の出現で、この区分は当てはまらなくなってきているが)。更にバリタリアン(自由至上主義)と称させる、経済政策として小さな政府を志向する第3の勢力も存在する。
- ⅱ)アベノミクスのリベラル性を判断するために、「政府の規模」を表す国民負荷率、つまり「税・社会保障負担の国民所得に対する割合」を見てみたい。
- 安倍政権発足時(2012年度は39.7%であったが、2020年度(見通し)では44.6と、5%ポイント上昇している。中規模の政府を標榜する英国の負担率(2017年、47.7%)とそれほど変わらない水準になった。この間の内訳を見ると、税負担の増加が3.8ポイント、社会保険負担が1.1ポイント増加となっており、高齢化に応じて税や社会保障負担を引き上げて、社会保険を拡充してきた。
第二次安倍内閣では、2度にわたる延期を挟みながらも、消費税率を5%から10%に引き上げ、その分を財政赤字に回すことなく、使途を社会保障高齢化3経費から、子供・子育て、教育無償化など全世代型社会保障へと拡大して充足していった。幼児教育の無償化や(十分ではないにせよ)待機児童解消策は、若者や子育て世代からの支持を広げていった。
因みに小泉政権時を見ると、発足時の2001年度は36.7%、退任時の2006年度は37.2%と、5年間で政府規模はほとんど拡大していない。これは新自由主義的な経済政策の運営が行われた結果といえよう。
もっとも、安倍政権の経済政策のリベラル性は、安倍総理が目指したものというより、少子化や高齢化の進展で、そのような政策を取らざるを得なかったこと、とりわけ負担増加は、既に決められていたという要因が大きい。
社会保障のおおむねを占める社会保険料負担の増加は2004年の年金改革で決められたものだし、税負担の増加は、2012年の三党合意による消費増税の結果であり、安倍政権としては「やらされた政策」ともいえるが、リベラルな政策を遂行したことに間違いない。
Ⅱ.―2 日本型雇用を変える「働き方改革」の検討
Ⅱ.―3 次期政権の課題
上記Ⅱ.―2.3.に関しては森信 茂樹研究主幹から提案が出されているが、これらは次回のテーマとして、提案したい。
- Ⅲ. オピニオン:明石順平;史上空前の失敗か?賃下げ政策アベノミクスに何故人々は騙されるのか;GDPかさ上げの「ソノタノミクス」で隠された現実
(1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長政策経済政策といわれるが、事実上は「大胆な金融政策」に尽きる。
それは日銀が民間銀行から国債を「爆買い」して、通貨を大量供給することです。今は少し落ち着いているが、ピーク時には借換債等を含めた総発行額の7割を日銀が購入。
明石氏の意見 :
当初は「異次元の金融緩和」により、銀行貸し出しも増え、物価が上がって消費も伸びるといわれたが、実際は2つとも失敗で消費は格段に落ちアべノミクスは史上空前の大失敗です。
名目賃金の推移を見ると、1年間で2%も物価をあげて消費が伸びません。アベノミックスは簡単に言うと「賃下げ政策」となり、結果は「日本が貧乏になったことです」
それにも関わらず、アベノミクスを担当した社員の給料が上がらず、大企業への減税が400兆円と言われています。 |
- ◎ 次回7月号は6月号の積み残しを処理します。次に芝 安曇が気になる点を提案したいと考えています。
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