PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(173)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :8月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●定年に到達した人や定年後の人の「その後の人生」
 「100年人生テーブル」に依ると定年の65歳に到達した人は、その後、35年の長い年月を生きる。定年後の人で70歳なら30年、80歳なら20年とかなり長い年月を生きる事になる。

 定年に到達前に、既に「経済的充足基盤」と「精神的充足基盤」を形成した人物は、定年後の長き年月を「安心、安全、安定」な人生を過ごす事ができるのか? 逆にその形成が不十分な人物や全く形成しなかった人物は、定年後の長き年月を「不安、不安全、不安定」な人生を過ごさねばならないのか?

 筆者は上記の質問に対する「答え」を次頁に書いた。読者は此の答えを読む前に、沈思黙考の瞑想をして自分の「答え」を引き出して欲しい。その上で筆者の「答え」と比べてみて欲しい。

出典 沈思黙考の瞑想
出典 沈思黙考の瞑想
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●定年前に「経済的充足基盤」と「精神的充足基盤」を形成した人物
 「人生100年テーブル」の存在と意義は本稿の読者以外の人物は知らないだろう。しかし定年後を予想し、「経済的充足基盤」の形成に努め、それを確立した人物は大勢いる。しかし「精神的充足基盤」の形成に努め、それを確立した人物はそう多くない様である。

 さて問題は、「経済的充足基盤」と「精神的充足基盤」を既に形成し、確立した人物は、定年後の35年と云う長き年月を「安心、安全、安定」な人生を過ごす事ができるか? である。

 筆者の答えは「NO」である。ショックかもしれない。しかし現在の日本では、超富裕層と富裕層の人物を除く普通の人物は、「安全、安心、安定」な人生を過ごす事は出来ない。

 何故か? 其れは筆者が約30年前から主張し、今も主張し続けている事が原因なのである。日本は明治維新と戦時を除き、現代史上初の「構造的危機」に直面した。もし日本が構造的危機から脱出できず、「自己改革(変身)」を断行(決断+実行)せず、「今のまま」で推移すると、近い将来、アジアの小国に凋落する。この凋落前に国家財政破綻が起きるだろう。此の構造的危機こそ多くの日本人の生活を脅かし、「安心、安全、安定」した人生を過ごす事を妨げる。

 構造的危機の内容を詳しく知る方法がある。筆者は今年9月2日~3日に開催される「PMシンポジューム2022」で「革新的発想法による新事業創出」のテーマでオンライン講演をする。此のの講演の中で「構造的危機」を論じる。是非、此の講演を視聴してみて欲しい。

 さて筆者の「NO」の答えを「YES」に変えたければ、定年前に実行していた基盤作りの努力を定年後も続ける事である。要するに「定年後も働け!」と云うことだ。勿論、働く時間の合間と隙間で趣味(道楽)も楽しむ事は働く意欲を高める。「働かなくて、悠々自適の人生」を歩める人物は超富裕層と富裕層の人物だけである。
出典:一生懸命に働け!
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 しかし「私は悠々自適の人生を歩む!」と云う人物はいるだろう。その人物の人生である。筆者がとやかく言う筋合いのものではない。しかしその人物が超富裕層や富裕層の人物ではなく、普通の人物なら、「不安、不安全、不安定」な人生を過ごす事を覚悟して「悠々自適」をする事である。もっとも超富裕層や富裕層の人物も判断を誤ると一挙に財産を失い普通の人物になる可能性がある。其れを防ぎたい為か?彼らはよく働く。「悠々自適の人生」を過ごす人物は少ない様だ。

●定年前に「経済的充足基盤」と「精神的充足基盤」の形成に不十分だった人物や全く形成しなかった人物
 結論から先に言えば、「不安、不安全、不安定な人生」を過ごす事になるが、そんな悠長な表現では誤解を招く。ハッキリ言う。「貧しく、惨めで、悲しい人生」を過ごす事になる。此の表現なら誤解は招かないだろう。「定年後も働け!」では生ぬるい。「汗と涙と血」を流す事を厭わず、喜んで流す「覚悟」で働け!である。

 しかし何故、そこまで言うのか? それは此の人物が定年後に働かないと「年金」だけが唯一の収入源になる為だ。更に日本が最悪の場合、年金は先細りどころか、年金制度自体が崩壊するからだ。

 経済的充足基盤の形成が不十分またはしなかった人物は、そもそも「土地」や「建物」の取得、「株」の取得、「現預金」の積み増しなどは一切していない場合が多い。そのため土地・建物の賃貸料収入、株配当収入、現預金活用収入など一切ない。

 たとえ手元に少々の預金があっても、大病すれば、あっと言う間に無くなる。しかも唯一の収入源である年金支給は当てにならない。最悪の場合、「生活保護」を受けねばならなくなるかもしれない。「悠々自適の老後は夢のまたの夢」である。そもそも今の日本自体が既に傾きつつあるのだ。今後の35年間、日本は再生するか? 更なる凋落か? どちらかになるだろう。中間はない。


 基盤形成に不十分又はしなかった人物は、今からでも遅くない。自らの現状を有りのまま直視し、新たな人生観や考え方を構築するべきだ。その上で最長35年間の人生の「経済的充足基盤」と「精神的充足基盤」の形成のために全霊、全身を投下するべきだ。

 最近、日本の多くの企業で「リカレント教育」が叫ばれている。しかし基盤形成に不十分又はしなかった人物は、「リカレント教育」に関心があるだろうか? そもそも彼らは、今迄、自立的に、自発的に「自己研鑽」をしてきた人物であろうか?もし彼らが関心があるならば、もし自己研鑽をした事があるならば、今度こそ「本心、本気、本音」で新しい仕事をこなせる能力を身に付ける教育・訓練を受ける事である。

 「夢」がない暗い事ばかり書いた。読むのも嫌になっただろう。ひょっとして読者は筆者が誇張して書いているのではないか? と思っているかもしれない。しかし誇張は一切ない。淡々と書いた。しかしこのまま本号を暗い悲しい解説で終わりたくない。ならば此の日本を救う手はないのか? 前半の35年間と後半の35年間を明るく、希望に満ちた、「夢」のある人生を過ごせる手はないのか?

●日本の危機を救う救世主(モーゼ)は誰か?
 構造的危機に直面した日本を救うモーゼ(救世主)はいるのか? いるなら誰か? その誰は何をして日本を救うのか? 前述と同様に筆者の下記の「答え」を読む前に、沈思黙考の瞑想をして自分なりの「答え」を引き出して欲しい。そして筆者の「答え」と比べてみて欲しい。


 そもそも危機の日本を救ってくれる国民は世界の何処にも存在しない。「日本」を救うのは我々日本人だけだ。ならば日本を救うモーゼ(救世主)」はいるのか? いるなら誰か?

 其の人物は政治家でも、官僚でも、学者などでもなく、企業人(社長 & 社員)」である。日本の大企業と日本の企業の99%を占める中小企業(ベンチャー企業を含む)の企業人が「自社」の経営を成功させ、発展させる事が「日本」を救う最も確実で誰もが参画できる方法であると考えている。

 太平洋戦争で荒廃した国土から立ち上がり、世界中の人々から賞賛された「奇跡の経済復興」は、一人一人の日本国民の努力で成し遂げれられた。その人々の中で「企業人」が果たした役割は最も大きかった。この事実を今一度我々日本人は思い起こそう。そして現在の我々企業人の手で再び「奇跡の復興」を実現させようではないか。

出典:勝利の星条旗、敗戦で荒廃した日本の国土、奇跡の経済復興のシンボル:1961年と2011年の東京タワー
 繰り返す。

 日本の全ての企業人に期待される事は、もし「自社」が経営危機に直面しているなら脱出させる事、もし「自社」が新たな事業に挑戦しているなら其れを成功させ、会社を発展させる事である。

 この「自社の成功と発展」が日本中に広がり、積み上げられると、「新しい事業」が興る。新しい事業が広がり、積み上げられると「新しい産業」が興る。新しい産業が広まり、積み上げられると「新しい経済」が興る。新しい経済が広まり、積み上げられると「2度目の奇跡の経済復興」が実現する。この実現で日本は構造的危機から脱出し、「夢」と「希望」を叶える日本に変貌するだろう。

 日本の再生 & 発展の「此のシナリオ」を実現させる第1歩は、企業人が「自社」の事業を成功させ、発展させる事である。この事は、「定年が先の人物」にも、「定年後の人物」にも、等しく期待されている事でもある。
つづく

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