今月のひとこと
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 DX後の業務研修 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :4月号

 今年の桜は入社式や入学式を見頃の状態で迎えられそうです。重点措置が解除になったとはいえ感染防止対策は継続しなければならず、新人たちとの濃厚なコミュニケーション機会となるお花見は今年も持ち越しですね。とりあえず、外出の際は桜の下を歩くようにしたいと思います。

 転職による中途採用が増加傾向にあるとはいえ、日本の大企業では新卒採用の割合が高い状況が続いています。かつては、新卒者が入社してくると、社会人の基礎として挨拶の仕方などマナーを身に着けるといった研修を行なっていました。「社員の礼儀作法がしっかりしている。さすがにあの会社は一流だ。」といった話をしていたことを思い出しますが、コロナ禍の現代でも同様なのでしょうか。マナー研修とは別に、その会社固有の業務スキルに関しては、何らかの研修メニューが実施されていると推測します。
 DX(デジタルトランフォーメーション)に象徴されるように、ビジネス環境が大きく変わりつつある中、業務スキルの内容も変化しています。PMAJ主催のPMシンポジウムやPMセミナーでは社内改革プロジェクトを取り上げることも多いのですが、「DX時代の人材育成」といったテーマも目立つようになってきました。参加者の多くがプロマネあるいはプロマネ経験者であり、所属している企業の中では、担当業務の習熟者でもあります。「習熟している業務にしがみついていたのでは、明日がないぞ。」と本気で心配する講師もいます。その声が届いているのかいないのかは定かではありませんが、不安を感じている人が少なからずいるように思います。
 新卒者向け研修も、DX対応で様変わりしているのでしょうか。
 かつて、編集子が関わった金融システム更新の際は、大幅な業務変革が伴いましたので、既存要員向けの研修とは別に新卒者向けの新システム対応研修メニューも開発されました。1980年代のITシステム開発は業務改革ではなくて省力化・効率化が目的だと評されることが多いのですが、実は改革の要素も多分に含まれています。新しいシステム導入後、新卒者達は従来以上に早期に戦力化するとともに、既存要員からは多くの退職者が出ました。これによって省力化目標が達成されました。編集子は業務改革への対応が困難な既存要員が退職の道を選択したケースも多かったのではないかと考えています。
 今後、DXに取り組む多くの会社で似たような景色を見ることになるかもしれません。
 「as_is ⇒ DX ⇒ to be」の流れの中で、新卒者は「to be」だけを修得すればいいのですが、既存者は「as_is」と「DX」を正しく理解できなければ「to be」に対応できません。既存業務に習熟しているのであれば「as_is」は分かると考えたいところですが、「DX」、「to_be」と対比する中で理解できなければならず、難度が高いと思われます。もっとも「to_be」の世界が「as_is」の延長上にない全く別の世界であれば、そんな難しいことに取り組まなくてもいいことになります。DXを実施するのであれば、そのようなDXを目指していただきたいものです。
以上

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