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オンライン環境を活かす力

井上 多恵子 [プロフィール] :3月号

 
 オンラインでの業務が常態化して、約2年。「皆で集まって研修を受けたい」という声が、研修事務局に何度も届いた。私も同感だ。昨年末、2年ぶりにチームで会社に集まり、ホワイトボードの前に立ってディスカッションした時は、心が高揚した。「多恵子さん~」と言いながら駆け寄ってきて、ハグしてくれた同僚のAさん。自粛期間中にメンバーとして加わった人の全身の姿も、はじめて見た。
 しかし、感染防止のため、オンラインでの研修は続く。2年前は、「オンラインで研修なんて、無理」思っていた私。研修は、海外も含めて対面型だった。2年間試行錯誤してきてたどり着いた結論は、「オンラインでも、工夫次第でかなりいい線いける」だ。今回は、実践を通じて得た「オンラインへの取り組み方」を共有したい。

■ オンラインでワークショップを実施するメリット
1.進行についての相談が裏でできる
 先日部内で実施したチームビルディングのセッション。後半に予定されていた私のパートの長さは、2時間15分。ところが、前半のセッションがどんどん伸びていく。そのうちに、司会から相談メッセージがチャットで届いた。「すみません。井上さんのパートは、15分遅れてのスタートになります。終了時間を変えられないため、15分間短縮してもらえないでしょうか」「わかりました」と返事するも、結局、30分間短縮することに。もし対面でセッションをやっていたなら、参加者に知られることなく、相談はできなかった。

2.コラボレーション用ツールが複数ある
 今回は、「アイデアを生み出し、創造性を刺激する」マインドマップを使った。それまでは、ホワイトボードにカラフルなペンを使って描くマインドマップしか経験がなかった私。セッション前は、「オンラインでマインドマップを使うなんて無理」と思っていた。が、オンラインでマインドマップを使う試みは、成功した。どのチームでも、活発なディスカッションが行われたことを示唆するマインドマップが出来上がった。オンラインツールに慣れている若手に書記をお願いしたことも、よかったのだと思う。
 Miroボードというソフトも、コラボレーションを促進する。オンラインでのホワイトボード利用をイメージしたツールだ。画面上のホワイトボードに、画面上にある好きな色のポストイットを各自が選んで、記入したものを自由に張り付けることができる。保存されるので、後日見直すこともできる。オンラインホワイトボードで簡単にコラボレーション | Miro
 社外講師がMentimeterを使った時には。「私もこれ使いたい!」と思った。Mentimeterのサイト(menti.com)には、「聴衆をエンゲージするためのプラットフォーム」と書かれている。オンラインで一方的な講義をすると、聞き手は飽きてしまう。Mentimeterを使うことで、参加者に質問を投げかけて得た回答をもとに、ワード・クラウドをつくることができる。(下記図参照) 回答の中でより言及された単語を大きく示すので、何に関心があるかが一目瞭然だ。チャットのコメントを読み上げていく形は、コメント数が少ない、あるいは、一人ひとりのコメントをしっかり拾い上げたい時には効果的。一方、コメント数が多いときは、全体像を直感的に把握したいツールが効果的だ。
ワード・クラウド
Mentimeterのサイトより (Create Word Clouds for Free - Live & Interactive - Mentimeter)

また、Mentimeterには投票機能もある。チャットにそれぞれ選択肢を入れて「いいね」をしてもらうよりも、わかりやすいし、遊び心も感じる。
Mentimeterには投票機能もある
Mentimeterのサイトより (Create Word Clouds for Free - Live & Interactive - Mentimeter)

3. 多くの人の意見を一斉に聞くことができる
 チャット機能を使うことで、参加者のコメントを瞬時に集めることができる。もちろん、その場ですべて読むことができないこともある。人数が多かったり、皆の書くスピードが速かったりした場合だ。しかし、記録として残るので、後日じっくりコメントを読むこともできる。また、自分が書いたコメントに他の参加者が「いいね」や「ハートマーク」をしてくれると、嬉しくなるし、自己効力感が増すこともある。対面だと、偉い人や声が大きい人への遠慮があったりして意見を言いづらい人も、比較的楽に意見を言うことができる。

4. 準備やフォローアップにかかる工数とコストを大いに削減できる
対面だと、場所やホワイトボードやサインペンやポストイットやビデオなどの備品の確保に加えて、ビデオ撮影や写真撮影をする人の確保、道具の片づけなどをする必要があり、様々な工数が取られた。オンラインだと録画も自由にできるし、文字起こしもできるので、後で不明点を確認することも容易にできる。当然場所や備品を用意したり、その場所に皆が集まったりする必要がないので、コスト削減にもなる。

■ オンラインで繋がりをつくる工夫
 メリットがある反面、対面と比較すると、人と人との繋がりは弱くなる。次回は、オンラインで繋がりをつくるための工夫について、述べてみたい。

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