例会部会
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『第272回例会』 報告

田邉 克文 : 2月号

【データ】
開催日: 2021年12月17日 (金)
テーマ: 「PMの変遷とプロマネのあり方」 ~多種多様なPJ経験からの提言~
講師: 向後 忠明 氏 / PMAJ PMマイスター、アカラ株式会社 顧問

◆ はじめに
プロジェクトマネジメントの世代の移り変わりで何が必要とされ、どのような知識(スキル)を身に着ける必要があるかを、講師自身の経験を踏まえて説明されました。その中でプロマネとして共通に持つとよいと思われる要素、そして、特に不確実性の高いプロジェクト(第3世代)をリードするために必要な要素についてお話し頂きました。

◆ 講演内容
●最初に講師が思うプロジェクトマネジメントの3つの世代の変遷について説明されました。
①第1世代
プロジェクトの運用手順は欧米顧客が指導し、そして実行はベテラン社員の属人的指導を受けてOn-The-Jobで行っていた世代。
②第2世代
PMが知識体系化され、PMBOK®というガイドラインが発刊されプロジェクトマネジメントが普及し、各業界で一般的に使用されるようになった世代。
③第3世代
不確定な命題を複合的な知識を利用して、所与の条件を設定し、プロジェクト化し、その目標を達成することが求められる(P2Mに代表される)世代。

補足として、①第1世代と②第2世代の内容としてはほとんど同じであり、すでに①第1世代で②第2世代の知識体系は完成していました。

●次に、この3つの世代を講師は、エンジニアリング会社の技術者、移籍後の電気通信/関連投資会社でプロマネを実践される中での自身の業務経験から、それぞれのPM世代と求められる人材(スキル)との関係を下記にまとめています。
<人材(スキル)とPM世代の関係>
I型人材⇒T型人材 (①第1世代②第2世代)⇒Π型人材 (③第3世代)
※ 各タイプ別人材 (スキル・経歴)
Ⅰ型人材… Ⅰ型のⅠは専門性の深さを持つ人材。
(エンジニアリング分野での専門性を習得)
T型人材… T型のTは、Ⅰ型のⅠと横棒(知識の広さ)からなり、
専門分野にとらわれない広い視野で活躍できる人材。
(中小企業診断士等の幅広い知識を習得)
Π型人材… 2つの専門分野(PMとビジネスマネジメント)を持つ。
Π型人材はダブルメジャーとも呼ばれる
(新規事業開発アドバイザー、中小企業の新技術の事業化アドバイザーを歴任)

上記のようにプロジェクトマネジメントは時代とともに変遷し、各PM世代で対応するために必要とされる人材(スキル)も変化しています。

●各PM世代のプロジェクトの特徴を下記のように比較して説明されました。
①第1世代②第2世代のプロジェクトでは、顧客要件が明確で、契約を通して多くの制約下で遂行されるが、③第3世代のプロジェクトは、顧客要件が明確でない状態から、問題・課題・使命の具体化から、プロジェクト要件(=使命)の明確化を行う必要がある点が特徴です。

●各PM世代を通してプロマネに必要な共通要素として、以下の4つを挙げられました。
①パーソナル及び組織マネジメント(例、責任と権限の明確化)
②プロジェクト関連業界の基本的技術知識(例、上流行程の思考法)
③ビジネスマネジメント知識(例、各種フレームワーク、契約知識)
④プロマネとしての対応と行動(例、俯瞰的視野、自己規律、好奇心、ネバーギブアップの精神)
中でも、②プロジェクト関連業界の基本的技術知識において、第3世代のプロジェクトに直面した際に必要な思考方法としては、
  • 左脳的な論理的思考 (クリティカルシンキング)
  • 右脳的なデザイン思考 (クリエーティブシンキング)
の2つがあり、そのうちプロマネとしては主に論理的思考方法を熟練した方が良く、論理的思考の手法*を効果的に利用することで、全体的視点で物事を俯瞰し、情報収集を通して関心事を列挙し、顧客が何を求めているかを把握する。そして、的確に課題抽出することで顧客要件を具体化することができるようになる。
*…P2Mのミッションプロファイル、SWOT分析、SMARTの原則等

●最後にまとめとして、安宅和人著のシン・二ホンより引用された今後プロマネが直面するだろう不確実性への対応について挙げられ、それらに対応できるためのワンランク上のプロマネを目指すには、第3世代に属すようなプロマネを目指すことが必要だとし、講演を締めくくられました。

◆ 執筆者所感
昨今の世の中の変化と今回の講演から、不確実なプロジェクトへ取り組むにあたり、ぶれない信念と、愚直にプロマネ自身で確立した手順/ステップを踏むことが大切だと切に感じました。まず現状を調査することから始まり、一つ一つ事象をロジカルに分析して整理していくことが重要で、どんな状況でも地道で実直なアプローチが成功に近づく適切な手段の一つだと思いました。そして最後は、好奇心とネバーギブアップの精神でやり抜く人間力が重要なのだと改めて気づかされました。

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