今月のひとこと
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 立春朝搾り 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :2月号

 沖縄から桜の便りが届いています。ちょっと花見にとはいかない状況ですが、地元の方はご自宅の周辺で楽しんでいただきたいと思います。沖縄の桜前線は北から南にと移っていくそうですから、2月18日の「沖縄PMセミナー2022」開催の頃は、会場の浦添市周辺で見頃になっているかもしれません。講演プログラムは充実しており、視聴者の皆さんに充分満足いただけるはずですが、桜の映像をお届けできないのが残念です。

 春の始まりを寿ぐ行事として「立春朝搾り」があります。立春の日(今年は2月4日)の朝に搾りあがった日本酒を瓶詰めし、神社でお祓いを受けたうえで売り出すのです。昨年末あたりから、酒販店の店頭に予約受付中のチラシが貼られていましたので、ご覧になった方もいるのではないでしょうか。酒蔵では2月4日の日付が変わると同時に出来上がったお酒を搾り始め、酒販店の方が酒蔵まで出向いて持ち帰り、その日のうちに売り出します。夜明け前から酒蔵に駆け付け、ラベル貼りを手伝う酒販店もあるそうです。究極のしぼりたてのうえに、神社のお祓いを受けて縁起が良いということで、毎年これを楽しみにしている日本酒好きも大勢います。
 そんな中、「縁起の良し悪しもいいけれど旨くないお酒は飲みたくない」とこのイベントには参加しないという酒好きもいます。「立春朝搾り」がイベントとしての賑わいを狙っているだけで味は二の次にしているわけではありません。「究極のしぼりたて」独特の味わいがたまらないという方にとっては、本当に美味いお酒なのです。
 一口に日本酒といっても、蔵によって、造り方によって味は様々です。興味のない人にとってはどうでもいいような蘊蓄を滔々と語る酒好きが多いので、気づいている方も多いと思いますが、人によって美味いと思う酒は違います。さらに、造った後の熟成期間による違いもあります。「究極のしぼりたて」は熟成期間ゼロということになりますが、以前この欄で紹介した「剣菱」という日本酒は最低1年間の熟成期間を設けています。最近は熟成酒ブームということもあり、平成の頃瓶詰めされたお酒がプレミアム付きで売買されたりしています。そんな熟成酒が好みの方にとって「立春朝搾り」のお酒はいかがなものかとなるのです。そんな方にも、面白い楽しみ方があります。
 立春の日、予約していた「立春朝搾り」を買ってきたら、自宅の中で温度変化が少ない暗い場所に1年間保管するのです。冷蔵庫では温度が低すぎますので日本酒専用のクーラーがあればいいのですが、押し入れでも床下収納庫でも結構です。1年後、封を切って、ゆっくりと味わうのです。酒蔵で1年間熟成して出荷されたものと、基本的には同じ味わいのはずなのですが、自宅で保管熟成させたお酒は何故か美味しく感じられます。1年前のお酒と今年の朝搾りを比べて飲むと、さらに一層美味しく感じることができます。
 酒蔵の方によれば、保管中の温度変化などによって味が変わることもあるので、出荷後はなるべく早めに飲んで欲しいということですが、密やかな楽しみとして、「立春朝搾り」 & 「宅内熟成」試してみませんか。
以上

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