今月のひとこと
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 しーさんの話 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :1月号

 鮮やかな赤い実と濃い緑の葉を見ると、この木は南天、万両あるいは千両だろうかと考え込んでしまいます。さらに、いつ頃花が咲いていただろうかと悩んでしまいます。毎年、木の種類や開花時期をWEBで調べて「ああそうだった」と同じセリフを吐いて「来年こそ花を見逃すまい」と思うのですが忘れてしまいます。そんな健忘症に効くという機能性表示食品があるそうですが、どうやって効き目があったと分かるのかが納得できないのでまだ試そうという気が起きません。

 年明け早々の1月7日にPMマイスターであるオムロン & 京都大学の「しーさん」こと竹林一さんに講演していただくことになりました。昨年12月24日に出版された「たった1人からはじめるイノベーション入門 何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか」(日本実業出版社)を紹介していただくことになっています。この本では、これまでPMシンポジウムで講演された「『起承転結』理論」や「武士と忍者」等の他に様々なイノベーション事例が紹介されており、講演の中でどのように展開されるのか今から楽しみです。
 竹林さんは、イノベーションを牽引する者と推進する者とでは必要な能力が異なると主張されています。その両方の能力を兼ね備えていれば、イノベーションを始めから終わりまで一人の人間で完遂することができますが、その能力は「武士と忍者」といったように全く異なる役割の中で育成されるので、兼ねることができる人は極めて稀だとも説明されています。
 私たちはプロジェクトマネジメントを学び、プロジェクトを遂行するためのベストの道を追求してきました。プログラムマネジメントとして捉えると、システムモデルの箇所について磨き上げてきたということができると思います。イノベーションは、プロジェクトの最上流、プログラムマネジメントのスキームモデルの頭の部分で始まります。この部分で変革要件が想起されて初めてイノベーションプロジェクトが始まるのです。じかしながら、この部分についてはシステムモデルほど磨き上げてきたとは言い難いところがあります。
 竹林さんの本によれば、この変革を想起するところには特別な能力を持つ人が必要だということです。IT系の開発プロジェクトで、システムモデルの箇所にプログラミングスキルが必要なように、イノベーションプロジェクトでは変革要件想起スキルが必要だということです。プログラムマネジメントにおいて、このスキームモデルの展開に関して理論の構築が遅れているように言われてきましたが、竹林さんが示される特別な能力について分析することによって、理論構築が進むのではないかと思われます。変革要件を想起していくプロセスも紹介されていますので、特別な能力の引き出し方という見方で読むこともできるのではないかと思います。
 今回、竹林さんが出版された本及び講演において、これまでプログラムマネジメントで手薄だと言われていた箇所の、具体的事例がかなり整理された形で紹介されます。プログラムマネジメントのスキームモデルの事例であり、学究の方々には研究を進めていただきたいと願っています。
以上

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