70歳が老化の分かれ道
(和田 秀樹著、(株)詩想社、2021年10月26日発行、5刷、188ページ、1,000円+税)
デニマルさん : 2月号
今回紹介する本は、現在の超高齢化社会での高齢者の生き方や考え方のポイントを分かり易く纏めている。昔と云っても昭和の前半位までは人生50年だったと記憶する。しかし、平成から令和の現在では、人生100年時代となっている。こうした背景から、老後の生き方を多面的に考える必要がある。そこで本書は、老化による身体的健康問題、健康診断等から薬や通院、健康維持の食事から運動等と生活全般に亘って書いてある。自分はどの分野に関心が強いか、普段の生活から心掛けるべき生活習慣もあるが、どの内容でも、どのタイミングでも取組み可能である。この本を読まれて納得されたら、可能な範囲で実行されては如何でしょうか。老化をアンチ・エイジングとして闘うのではなく、ナイス・エイジングとして楽しむ方策が提案されてある。中高年や青年層にも参考になる、話題のお勧めの良書である。さて高齢化だが、1956年にWHO(世界保健機関)は「65歳以上の人口が全人口の7%を超えると高齢化社会とする」と発表した。それから70年近くが経過して、日本は27.6%(1位)、イタリアは22.8(2位)、ポルトガルは22.0(3位)である。因みにドイツは21.5(6位)、アメリアは15.8(36位)、韓国は14.8(49位)である(2020年、WHO調べ)。日本の高齢化率は世界一である。そこで政府は、財政政策面等々から65歳以上を高齢者とする制度を変更した。2017年に75歳以上を「高齢者」とし65歳以上74歳以下を「准高齢者」とした。正確には、65歳から74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と区分を変更した。この結果、高齢者の医療・介護・福祉等の制度を抜本的に見直す結果となった。そのため高齢者も含め健康で生き永らえる自衛策が必要となった。本書では触れていないが、今年度の高齢者医療費負担比率の変更も、その関係であろうか。いずれにしても高齢者を含めて、自分の身は自分で守り、健康で長寿を全うする必要がある。その意味で本書は、有益な内容でもある。著者を紹介したい。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。専門は老年精神医学、精神分析学、集団精神療法学である。アメリカでの精神分析学派自己心理学の国際年鑑 Progress in Self Psychologyに日本人として初めて論文が掲載された。これが評価され、アメリカでもっとも古い精神分析の雑誌『Bulletin of Menninger Clinic』の自己心理学部門のブックレビュワーにも選ばれている。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって、高齢者医療の現場に携わっている。他に、過去の自分自身の勉強法と認知心理学などに基づき和田式勉強法を考案。また2007年には、第5回モナコ国際映画祭で初監督作品「受験のシンデレラ」が、最優秀作品賞、最優秀男優賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞の4部門を受賞。主な著書に「自分が高齢になるということ」(新講社)、「年代別 医学的に正しい生き方」(講談社)、「六十代と七十代 心と体の整え方」(バジリコ)、「『人生100年』老年格差」(詩想社)などがある。
人生100年時代 ――70歳以降をどう生きるか――
先に、日本は高齢化率世界一の長寿国と書いた。その平均寿命は、男性が80.98歳で女性が87.14歳である。しかし、本書では「2016年の時点で、男性の健康寿命は72.14歳、女性は74.79歳となっている」と書かれてある。問題は、平均寿命と健康寿命の年齢差が男性で8年、女性で12年の期間がある点だ。その10年前後の差の期間こそ、健康ではなく何らかの病気(闘病や寝たきりも含めて)であると考えられる。単なる長寿でなく、世界一の長寿国らしく長生きするなら死ぬまで健康でありたいと願いたい。それを本気で実行するなら、健康寿命までの70歳までに準備万端終わらせた方がいいと著者は指摘している。本書では「健康長寿のカギは70代にあり、それが人生の分かれ道になる」と纏めている。そう健康寿命までに努力したかどうかで、その人の残りの人生が決まると力説している。国民病とも云われる「高血圧、糖尿病、高脂血症」は、普段の飲食等々に起因する生活習慣病とも云われている。故に、高齢者の健康維持に生活習慣を見直すアドバイス本として本書が活用出来る。
健康長寿のカギ ――病院と薬に頼らない考え――
本書に「知らないと寿命を縮める70代の医療とのつき合い方」の項目に、医師の選び方から服薬、健康診断の活用法と色々書いてある。高齢者だけでなく普通の人も健康でありたいので一年に1回位は健康診断をしている。厚労省も「早期発見、早期治療」と健診を促進している。著者は、長寿のためには健診は役立たないという。それは健診結果数値が、健康体の95%を平均値として5%を異常値と扱っている点を指摘し、異常値は病気ではなく兆候の可能性程度だとして、血圧や血糖値、赤血球数等の5,6項目に注視が必要だという。もし高齢者で心筋梗塞や脳梗塞が心配なら、健康診断でなく心臓や脳ドックを勧めると書く。服薬についても、今後も薬を飲み続けるなら見直しを勧めている。血圧や血糖値を下げる薬を飲んで、心血管障害のリスクを回避して長寿へ寄与した可能性は科学的に証明されていないと書いている。筆者も30年以上も高血圧の薬を飲み続けている。確かに、本書に書いてある通りであるが、毎日血圧測定の結果を見て、医師に薬を止めますと云う勇気はない。健康維持とは、自分が健康であるために何をすべきかが分かっていない様にも感じる。しかし、医師である著者が書いている点も考え、この機会に自分の健康管理を見直ししてみたい。
ナイス・エイジング ――老化と病気を不要に恐れない――
本書には、「老いを遅らせる70歳代の生活」の方策を列記している。関心のある方は、是非読んで頂きたい。特に、食事では「肉を食べる習慣」、「陽の光を浴びる習慣」、「運動の習慣」等々を指摘している。その中に「インプットからアウトプットに行動を変える」については、このPMAJオンライン・ジャーナルの原稿作成は、老化防止になっている様に思える。筆者の友人でもある当PMAJのW氏は、年齢を感じさせない若さと活力がある。毎月の文章を拝読して常々敬服している。筆者の身近な目標で、今回紹介の本の事例の様で見習いたい。
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