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「エンタテイメント論」(166)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :1月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●岸田首相に物申す。日本国民の為に「人生100年時代の国家戦略」の策定と実行を!
 本稿で「人生100年時代」の解説をそろそろ終わりにして、「新たなテーマ」でエンタテイメント論を進めたいと思っていた。しかし今までの解説で十分でなかった重要な部分が少し残されていたので、その部分を明確にして次に進もうと考えていた。

 しかし更に重要な事が起こった。それは岸田首相が「人生100年時代の国家戦略構想推進室」を廃止した事である。その為、冒頭の「岸田首相に物申す」と記述した。

 ついては何故、筆者が「物申す」としたか? 岸田首相は何故、同推進室を廃止したか? また廃止できたか? そもそも「人生100年時代」と云う「考え方」と「言葉」は誰が言い出したのか?
これらを先に説明し、その後に、「不十分な解説部分」を明確にしたい。


●100年人生(The 100-Year Life)~長寿時代に生きる事と働く事~
 「100年人生」の言葉は、ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが共著「The 100-Year Life~living and Working in an Age of Longevity」の中で世界で初めて使った言葉と言われている。両博士は「100年人生」を如何に生きて、働くかを提唱している。

出典:100年人生
出典:Andrew Scott(アンドリュー・スコット)&Lynda Gratton(リンダ・グラットン)
出典:100年人生 Andrew Scott(アンドリュー・スコット)&Lynda Gratton(リンダ・グラットン)
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thenationalnews.com/business/we-re-all-living-longer-so-be-prepared

●両博士は2007年に生まれの子供の半分は100歳以上生きると予測
 Andrew Scott(アンドリュー・スコット) & Lynda Gratton(リンダ・グラットン)の両博士は、多くの先進国で2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きる「100年人生」の時代となると予測した。と同時に100年間、生きて、働く人生設計の重要性と必要性を論じた。筆者の「100年人生論」は両博士の理論に「エンタテイメント論」の観点を加えた理論である。なお日本は107歳と断トツの長寿国と予測された。だからこそ国家戦略が必要なのである。

出典:長寿予測

 昔は、「20年学び、40年働き、20年休む」という「教育・仕事・老後」の3段階が一般的であった。しかし100歳まで生きることが一般化する社会では、年齢による区切りが希薄になり、学び直し(リカレント教育)、転職して働く、働かないで年金生活するなど人生が多様化する。

●「人生100年時代構想推進室」の廃止
 日本では、「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略(東洋経済新報社)」の本が発売以降、各種メディアで取り上げられ、小泉進次郎議員が注目して政界内で宣伝した事から広く知られる様になった。2016年2月、小泉進次郎、村井英樹、小林史明、鈴木憲和などの自民党若手議員は「2020年以降の経済財政構想小委員会」で人生100年時代に向けた社会の実現を主張。

 また彼らは、「レールからの解放 ~22世紀へ、人口減少を強みに変える新たな社会モデルを目指して~」という政策提言を行い、人生100年時代の働き方・生き方・教育の位置づけ、社会保障の見直しなどの重要性と必要性を訴えた。

 その後、2017年4月、「2020年以降の経済財政構想小委員会」は、「人生100年時代の制度設計特命委員会」を経て、2017年9月、「人生100年時代戦略本部」に格上げされた。2017年11月には自民党政務調査会より「人生100年時代・全世代型社会保障への転換~2020年以降を見据えて~」の提言が発表された。
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 しかし安倍首相~菅首相~岸田首相と政権が変り、岸田首相は、首相就任後、直ぐに、安倍政権の看板政策の「一億総活躍」「働き方改革」「人生100年時代構想」を「引き継ぐ価値」がないと評価し、それらの「推進室」を全面廃止した。
出典:組織制度の廃止
出典:組織制度の廃止
出典:組織制度の廃止
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 「人生100年時代構想」は、「一億総活躍」「働き方改革」よりも遥かに重要で「引き継ぐ価値」があるだけでなく、「高める価値」もある構想であると考える。何故ならその構想と具現化は、今後の日本国民の人生そのものに影響を与えるからである。

 我々日本人は主張すべきである。この構想を日本の最重要国家戦略として国会で審議し、具体策を予算を付与し、実行する事を!筆者は本稿を掲載する権利を乱用し、読者に本稿の冒頭で「岸田首相に物申す」とした。PMAJが筆者の権利乱用を許す事を期待する。

●日本の政治の仕組み
 岸田首相が国家戦略に匹敵する事を実行している推進室を廃止した。その目的は何であったか? そもそも何故、首相だけの決定で簡単に廃止出来たのか?
 
 最初の答えは、岸田首相が「自分は安部の思い通りにならない人物である事」を誇示する為にしたと噂さされている。また廃止決定できたのは、日本の政治の仕組みにその答えがあるからだ。その答えを知っている読者は以下の部分をスキップして読んで欲しい。

 岸田首相は、自民党に国民からの選挙信託がなされ、総裁選で勝ち抜いて総裁になり、首相になった。その結果、「推進室」を廃止出来た。確かにそうだ。しかしそう簡単な理屈ではない。

 周知の通り、自民党は、「表」の組織以外に「裏」の組織を持つ。それは各種の派閥が併存し、夫々が組み合わされて成立している。野党の場合もほぼそれに近似している。

 この派閥は「裏」の組織として頑強な地盤を形成し、派閥毎に「主義や行動が異なる」人物が混在する。しかし選挙では「当選」する為に見事な迄に「一点集中連合」する。「表」では自民党としての統一した政策、戦略、実行を掲げる。しかし「裏」では自民党内の派閥の「頭」が中心になり、縦横の連携を組み、派閥主義と派閥行動をGo又はStopさせつつ選挙戦を勝利に導く。

出典:国会議事堂
出典:衆議院議員本会議場

 自民党が過半数を占め、政権を獲得した後は、首相を中心に派閥間の意見調整さえすれば、自民党は国民から託された権限と義務の範囲内で、ほぼ自由に政治が出来る。この巧妙な政治体制は戦後形成されてきたもの。米国の2大政治体制とは中身がかなり違う日本独特の「党内派閥政治体制」である。

 しかし肝心の国民の選挙信託は、自民党の各派閥には届いていない。言い換えれば、自民党を当選させたが、実際にどうなるかは派閥の動きで決まる。国民は「蚊帳の外」に置かれる。そして日本をリードする自民党は「1党」ではなく、事実上は「多党異能連合党」なのである。これが選挙では「表」で政治、行政、司法の政策面では統一連合化する、しかし「裏」では政策の実行が派閥毎に異なる体制となる。

 本来なら国民が信任した自民党の安倍首相が国家戦略構想として「100年人生」を決めた。従って、それを岸田首相が「継続」するのは、国民の目線から見れば当然のこと。しかしそれを廃止する決定をするなら国民の審判を受けるのが「筋」であろう。しかし其の審判を受ける事なしに廃止した。何故出来るのか? その正解は日本の政治の「裏」にある。

 「党内派閥抗争」は野党、政治団体、マスコミなどで度々批判されている。しかし筆者は批判する相手を間違えている。派閥の「裏」の仕組みは、今や日本の国民が過去から認めて続けてきた歴史的産物である。派閥抗争は選挙の仕組みの中の「裏」の深層部分に仕組まれ、総裁選などで「表」に顔を出す。それが問題と批判するなら派閥議員ではなく、日本の実態的な政治が派閥で動く事を長い間、許してきた「日本国民に直接の責任」がある。

 派閥抗争は「権力抗争」の側面があるが、それ以上に「妥協調整」の側面がある。自民党の「多党異能連合体」の自民党内部内で異なる考えや行動を調整し、派閥間で双方が妥協して行う事がより多く含まれている。交渉が進まないと「抗争」となるだけだ。

出典:派閥は戦いか?
出典:派閥間の妥協調整か?
出典:派閥は戦いか? 派閥間の妥協調整か?
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 もしこの仕組みを改革する為には、自民党をバラバラにして派閥毎に政治政党を結成させ、それに基づいて選挙を実施する事である。そうすれば派閥は無くなる。しかしこの種の政治改革は過去に何度も議論され、いろいろ実施されてきた。しかし期待通りの成果は上がっていない。また「不当な選挙制度は違憲」との訴えもあった。しかし最高裁は裁判官自身が自らの地位保全の為に「思い切った判決」をしない。かくして日本では司法、行政、司法の3改革と三権分立の確立はいまだに中途半端で達成されていない。

 さて「国に依る100年人生戦略」が実行されなくても、「自分自身に依る100年人生計画」を実現させればよい。次号以降で、筆者の主張する「100年人生戦略とエンタテイメントとの関係」を解説する。何かの参考になれば幸甚である。人生を成功させて欲しい。

●筆者のTV出演
 さて本稿の「100年人生」に関係あるので筆者のTV出演の話題に触れたい。

 筆者は、様々なプロジェクトに参画させられ、成功も、失敗も経験した。新日本製鉄勤務時代、MCAユニバーサル映画テーマパーク(USJ)プロジェクトを、そのリーダーとして開発した。しかし実現できなかった。セガ勤務時代、室内型テーマパーク「ジョイポリス」を実現させ、全国展開を成功させた。岐阜県理事の県庁三役の官僚時代、岐阜県淡水魚リアル&バーチャル水族館、昭和村などのエンタテイメント事業を実現させ、現在も成功している。

 また筆者の道楽であるジャズ・ピアノを弾き、ジャズピアノ・トリオ+歌手の編成で都内のジャズライブハウスで今も出演(コロナで中断中)している。エンタテイメントそのものを自分自身、友人のジャズベースマン、ドラマー、女性歌手と共に実行している。

 以上の事がTV局に知られ、現在までにエンタテイメント事業に関するTV番組に度々出演させられてきた。またジャズを演奏するので、TV局主催の音楽コンテストに出演させられた。更に「30分出っ放しの番組」で演奏やジャズ談義などをさせられた。

 世の中でテーマパーク事業が話題になると、今もTV局から出演の要請が舞い込んでくる。楽しい、ワクワクする話題なので喜んで引き受けている。

筆者のTV出演

 筆者のエンタテイメント事業やテーマパーク事業に関するTV出演が「引き金」になり、エンタテイメントの「柔らかい番組」でなく、政治、社会、経営、教育などの「固い番組」を放映するTV番組、ケーブルTV番組、衛星放送番組に出演させられる羽目になった。

出典:TV座談会
出典:TV座談会
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 筆者は多くのTV番組に出演させられた。その結果、一般の視聴者が全く知らない「裏」の話、面白い、興味あるエンタメ話題などを紹介したい。と同時にそれらのエンタテイメント情報が「100年人生」と如何に関係するか?などの論点も述べたい。しかし紙面の制約から、それらの件は次号以降で解説する。
つづく

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