グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第160回)
充実の70歳代

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :1月号

 2021年は、筆者の社会人生活でも極めて生産性が高い年として終えることができた。最近、「70歳代は第2の青春である」、という説があることをどこかで読んだが、同感できる。
日本政府ODA(経済協力)プログラムによる海外社会人向けオンライン研修セミナーを、シリーズで7本(対象国は22か国)、国内大学院の授業1回、世界PM大会基調講を4本+パネル出演など(ウクライナ、ロシア、インド)、サイエンスジャーナルへの論文寄稿は4本(2本は東欧で出版済みで、残り2本は来年の出版)を達成できた。
 COVID禍中の生活リズムの維持、研修ができる体力・気力・集中力維持のための工夫、20ページ以上の論文を書く、あるいは、教材を作る瞬発力は、自分で驚くほど高くでたし、良い成果に結びついた。この勝手な活動を見逃してくれる妻、研修機会を頂戴した政府系研修・技術支援機関であるJCCP様、AOTS様、ロシア日本センター様、数十年にわたり筆者を大舞台に据えてくれる関係国のPMオーソリティの方々、案件毎に支援していただいたPMAJのパートナーの方々、元会社の同僚(プロジェクトコントロールのプロ)、毎月健康状態をチェックしてもらっている医師の方々に深く感謝している。
 世界を舞台としては正規戦では戦えず、私の戦法は独特のゲリラ戦術によっているが、ゲリラ戦も国々に兵站がないと成り立たない。つかず離れずのグローバル・チームビルディングはけっこううまくいっている。
 12月15日から17日まで、インドを拠点としてWorld Project Management Forumの世界大会がバーチャルで開催された。40ヵ国から1500名参加というのが主催者の数字であるが、インド以外の国の、スピーカー以外の、参加者が実際どの程度かは、時差の関係でオンデマンドビデオを見る参加者が多いので、まだ把握できていない。
 しかし、スピーカーは世界で著名な実力者が集結した。次のページの写真を見ると、世界のPM界に通じている人であれば、スピーカーが誰であるかは、ほぼ分かる顔ぶれである。
 WPMF会長で、元IPMA会長としてのAdesh JAIN氏の広い人脈で一本釣りしたスピーカーと、筆者が、スピーカー層の入れ替えを意図して指名して、受諾いただいた、気鋭の二人の教授(ドイツ、中国)、それにインドのPMパフォーマンスが大変良い大企業の役員クラスである。
 今年は、1990年代から2000年代を彩ったヨーロッパの大御所が復活してくれて、パネルなどでコラボを行い、世界に大いにアピールできた。最長老は元IPMA会長のイタリアのインフラ企業最大手の会長で88歳であるが、素晴らしいメッセージを世界に発信していただいた。

第3回WPMF大会スピーカーの顔ぶれ(主催者大会HPより)
第3回WPMF大会スピーカーの顔ぶれ(主催者大会HPより)

 筆者の役割は、開会式での20分のオープニング基調講演”Phronetic Project Management Leadership - Six Messages to the Global PM Community“、Global Advisors’ Panel on New Challenge for Project Managementの中で、今後主流となるプロジェクトの見通しと新たなPMモデルについての講演と討議、3日目基調講演 ”Agility in Corporate Enterprises Realized by Applied Project Management”、そしてClosing Panelでの大会総括と来年度WPMF IVに向けてのテーマ提言、と合計4回の出演、主要なセッションでのスピーカーへのチャット質問や、スピーカーを助けての補助的な回答、などであった。 主催者JAIN氏以外では、4回の登壇は異例のことであるが、これがインドと筆者の深いつながりである。

 大会のテーマは”Project Creation in Today’s Disruptive World” であるが、Closing Keynote を担当した、元IPMA会長で、現在、気候変動世界分析の第一人者である Veikko Valila氏によると、Disruption(非連続性)は、幾何級数的に進むとのこと。

つまり、在来システムの変化はリニアーであるが、Disruptionの増加は幾何級数的 (Valila氏の講演より:出典Source: RethinkX.com)
つまり、在来システムの変化はリニアーであるが、Disruptionの増加は幾何級数的
(Valila氏の講演より : 出典Source: RethinkX.com)

 そして、大会のサブタイトルは Learn - Unlearn - Learn Againであった。
人間は学習を行って大人になるが、社会人のある時点からほとんど学習をストップしてしまう。自分は達人になった、と勘違いする。ということは進歩が止まることで、ここで、学習を再開しないと、このDisruptionの世界では落ちこぼれる、という社会人への警鐘である。

 この大会の前に国内の大学院で「知の理論 (Theory of Knowledge) 」という科目の一コマ特論を担当したが(担当教授は哲学専攻で、著名大学で哲学・美学を教えていた)、この科目の教えは、‘何故’かと問うことを止め、また、自省を止めたとき人間の進歩は止まる、ということであった。

 乗せられやすい性格である筆者は、本年も元気に世界に向けて発信をする仕組みがパートナー達によって作られている。元気でやりたい。 💛💛💛

第3回WPMF大会 3日目基調講演 ”Agility in Corporate Enterprises Realized by Applied Project Management”

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