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「エンタテイメント論」(163)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :10月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●生活の「糧」になる「カネで買えないモノ」の獲得と活用
 2021年9月14日の日本経済新聞の夕刊の第1面に「100歳以上、最多8.6万人」、男性、初の1万人超えの記事が掲載された。

 100歳以上の高齢者は、老人福祉法が制定された1963年で153人。1981年で1000人超、1998年で1万人を超えた。平成時代の1989年から2019年の約30年間に20倍に増加し。2021年では高齢化が加速され、2019年比較で1万5000人増えた。

 日本は、今後、超大型の天変地変(天災、人災)が重なり、人口が全世代に共通して激減しない限り、「今のまま」で推移すると、町に、村に100歳以上の高齢が溢れる国になる。「100歳時代の到来」は100%現実化する。

 従って「あなたは、生活の“糧”になる“カネで買えないモノ」”を持っていますか?との質問に、「持っていないが、何とかなる」と答えた人物の今後の人生はヤバイと警告したい。一刻も早く、是が非でも此のモノを手に入れ、「安心、安全、安定」の老後を築く事を強く薦める。

出典:緊張する就職面接
出典:緊張する就職面接
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 「此のモノとは何か?」については、前号で解説した。しかし此のモノは、多くの人にとって重要且つ必要なモノであるため、敢えて今月号でも以下に繰り返して解説する。

 「あなたを厚遇で新規又は中途採用する会社があるか?」の質問にYesなら「此のモノ」を持っている、Noなら持っていない事である。しかし此のモノは自らの手でしか得られない。更に得たとしても誰かに評価されないと、その価値はゼロになると云う「厄介な特性」を持つ。

 筆者の某知人は、日本の超有名、大会社の某商事会社の東京本社勤務の「実力部長」であった。彼は、在職中、幾つかの某超有名会社の社長や役員から「もし貴方が貴社をお辞めになったら、弊社に是非ご入社頂き、ご指導をお願いしたい」と異口同音の誘いを受けていた。

 彼は自社に大いなる不満を持っていたので、自身の発展の為、「意」を決して、「自らの意志」で同社を定年より相当前に辞めた。退職後、彼は誘ってくれた会社を次々と訪問。しかし訪問先の会社の社長や役員から開口一番、「何故、会社をお辞めになったのですか?」と異口同音の質問を受けた。彼は懸命に退職理由と将来への決意を述べた。しかしどの会社からも中途採用の話は来なかった。ショックを受けた。その後、彼は惨めな仕事人生を歩み、生活人生も苦労した。自ら招いた「悲劇」であった。

出典:惨めな人生
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 彼を不採用にした会社の社長達は以下の様に考えたのではないかと推測した。

  1. 1 「カネで買えないモノ」を彼が持っているか否かを評価する前に、彼が会社を辞めた事で彼に対する仕事上の利用価値がなくなったと判断した。
  2. 2 彼が此のモノを持っていると評価しても、彼は退職後、来訪し、懸命に退職理由と決意表明をした。「裏」に同社も、彼も外部に言えない何かがある!と警戒した。
  3. 3 「裏」は何かは分からない。しかし結局、彼は「首」になったのだと判断した。「首」になった人物はどの会社も採用しない。

 もし彼が退職の決意をした時、筆者に相談しておれば、彼が転職する場合に絶対に守るべき「掟(後述)」を彼に授け、実践させていたであろう。この「掟」に依って彼は転職の「夢」を成功させていたであろう。筆者が彼の退職を知った時は、既に「後の祭り」であった。残念至極であった。

 日本でも、外国でも、「転職は人生の一大事」。この場合の転職とは、アルバイトに毛の生えた様なチマチマしたレベルの「転職」ではない。本人にとって今後の仕事人生と生活人生を賭けた、失敗が許されない大勝負の転職を云う。

●「Live Fish & Dead Fishの掟」の言葉の由来
Live Fish & Dead Fishの掟
出典:Live Fish & Dead Fishの掟
新潟県立大学・川勝客員教授の「就職指導特別講座テキスト」より

 Live Fishとは、「生きている魚」である。Dead Fishとは、「死んでいる魚」である。生きている魚は新鮮で食べたい。死んだ魚は腐くて食べられない。しかし真の意味は「魚」ではなく、「人」の事である。この言葉は、外資系のヘッドハンター(後述)が使う「隠語」である。

   「Live Fish & Dead Fishの掟」と云う言葉は、筆者の造語。「掟」と云う暗く、悪魔的なイメージの用語を使った理由は、「此の掟」を破ると「死ぬぞ(失敗、失業)」と強調したかったからだ。

 Live Fishは、大学、大学院、会社、役所、研究所などで正規学生、正規院生、正規社員、正規職員、正規研究者などとして「現役」で学び、働き、研究している人の事を云う。なお会社経営者、個人事業主、個人投資家などの人物は勿論Live Fishである。

 Dead Fishは、大学、大学院、会社、役所、研究所などを卒業、退職、退官などをした人物を云う。また非正規や臨時雇い社員、職員、研究者などの他に、アルバイト、フリーターなどの人物も云う。

 外資系のヘッドハンターも、日本系のヘッドハンターも、Live Fishしかヘッドハントしない。Dead Fishは論外。更に日本の官僚は、たとえ本人がLive Fishでも、「ヘッドハントの対象外」と筆者の親しいヘッドハンターが打ち明けた。役人は会社では使えないと云う事。

●Live Fish & Dead Fishの掟の中身
 本人が現在帰属する会社、役所、大学、研究所など(以下、会社で代表表現)を辞めて、他の会社に転職する時、以下に定める「掟」に従うと転職を成功させる事が出来る。
出典:掟
出典:掟
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★Live Fishの状態厳守
 本人は帰属する会社を辞め、転職したい場合、Live Fishの状態のままで新しい会社を探し、応募し、採用面接等を受けること。帰属する会社の社長、社員への恩義、義理、人情から当該会社を辞め、Dead Fishになってから新しい会社を探す事は絶対にしてはならない。

★転職を目指す本人の全情報の超極秘厳守
 本人は応募し、採用面接を受け、採用される最終決定(社長決裁)を得るまでは、絶対に帰属する会社に退職の意思表示をしてはならない。またその間、家族のほんの一部を除き、親族、姻族、親友、友人、知人等に転職の意志と行動の事実を伝えてはならない。

 もし本人の転職の意志、ヘッドハンティングされているなどの情報が表又は裏で漏れると本人にとって素晴らしい転職の機会を失うからだ。誰も信用せず、徹底して極秘とすること。

★転職の正式の意思表示後、「裏切り」の批判を覚悟
 此の掟に従って転職すると、帰属した会社の社長、上司、同僚等から「裏切り」、「恩知らず」と非難され、批判される事がある。しかし此の事を最初から覚悟し、耐えること。それが出来ないならヘッドハンターからの「素晴らしい転職の話」に乗ってはならない。

 しかし今後の人生で二度と来ないかもしれたい絶好のチャンスを活かさない手はない。活かさず、一生後悔する事は避けるべきだ。従って心を鬼にして「裏切る」ことである。

出典:非難ごうごう
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★退職の正式の意思表示後、退職撤回厳禁
 退職の意思表示をした際、帰属する会社の社長から慰留を迫られ、極めて好条件の地位、処遇、待遇等を提示される場合がある。しかし退職の意思表示を絶対に撤回してはならない。

 もし本人が退職の撤回をすると、本人を採用決定した会社、転職に関わったヘッドハンター、その帰属するヘッドハンター会は多大な経済的損害(機会損失を含む)を被るだけでなく、彼らは、本人への今までの信頼、信用を一挙に消去する。彼らは、本人を許さない。

 特にヘッドハンター達は、世界中に人的情報ネットワークを持つ存在である。彼らは本人の詳細を「ブラック・リスト」に記録する。そして相互に最新情報などを交換する。その結果、本人に「素晴らしいヘッドハンティングの話」は永久に来なくなる。

★退職の正式の意思表示後、「退職届」の提出厳守
 本人の退職の正式の意思表示に了解が得られない場合であっても。退職届を提出する事を絶対に怠ってはならない。退職届を提出した日から2週間後、退職の法的効力が発生する。換言すれば、了解が得られたか否かを問わず、本人の退職は法律的に確定するからである。

★裏切りの恩返しの厳守
 本人は、新しい会社に変わって成功すれば、その時こそ、自分を育て、支援してくれた前の会社、社長、社員に「裏切った」事への謝罪の意を具体的に現す「恩返し」を忘れずに実践することである。

 人は誰でもより良い条件の仕事を探し、「やり甲斐」と「生き甲斐」を求める。これは誰にも許される事である。しかし昔の日本では、転職者は批判や非難を受けただけでなく、転職先での地位や処遇は却って悪くなり、不利になる事が多かった。そのため多くの人が転職を避け、帰属する会社で「忠誠」を尽くす生き方を選択した。現在の日本では、転職の機会が増えた。しかし依然として終身雇用や年功序列の制度が残存する。諸外国の様に日本の労働の流動性が高まって欲しい。

●ヘッドハンター(首狩り族)
 「ヘッドハンター」とは「首狩り族」のことである。

出典:首狩り族
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出典:ヘッドハントされた人
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出典:首狩り族 alamy.com/comp/tribe-of-ex-headhunters-goroka
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 ビジネスの世界のヘッドハンター達は、某企業の社長から要請され、求められた人物を極秘裡に日本又は世界中の中から探し出し、一定の人物評価や業績評価を行い、当該企業の社長や重役に紹介し、社長、役員など上級ポストに就任させると云う仲介の仕事をする人物を云う。

 このヘッドハンターで組織する企業を「エグゼクティブ・リサーチ会社(俗称ヘッドハント会社)」と云う。またヘッドハンターをエグゼクティブ・リサーチャーと云う。この会社は、「社会の人事部」の役割を果たす会社である。

 不思議な事に、ヘッドハンターの仕事をしている人物は、自分がヘッドハンターと言われる事を極めて嫌う。筆者が親しくしていたヘッドハンターも嫌っていた。

 「何故ですか?」と問い正す事は気の毒な気がしたので聞かなかった。多分、「首狩り族」と云うと非人道的な事をする人物、首(ヘッド)を手に入れる(ハント)人物と無意識に持たれる事を嫌った為であろう。

●ヘッドハンター会社のヘッドハンティングに依る収益
 ヘッドハンティングに成功するとヘッドハント会社は、ハントを要請した企業から成功報酬を受け取る。その額は、ヘッドハンティングされ、働き出した人物がボーナスを含む1年間で得るであろう所得額と同額(100%)の報酬を得る。ヘッドハンティング会社も、ヘッドハンターも相当の稼ぎを獲得している。

 約50年前から米国や欧州から有名ヘッドハンター会社が次々と日本に上陸した。その後、徐々に「ヘッドハンターの存在」が知られる様になった。彼らは多くの優秀な人材をヘッドハントし、多くの企業の社長や役員に転職させた。

 このヘッドハント会社と人材紹介会社は、人を紹介する点は同じ。しかし両者は基本では異なる。ヘッドハント会社は、ある会社のヘッド又はヘッド的な地位にいる人材を探し、ハントし、別の会社のヘッド又はヘッド的な地位に就ける事を仕事とする。またその成功させた報酬額は、別の会社でヘッド又はヘッド的な地位に就いた時の年収額とすること。

 しかし人材紹介会社は、ヘッド又はヘッド的人材に拘らない。もっと下位の人材の紹介を主とする。成果報酬額は遥かに少ない。

 最近は、偽物のヘッド会社や人材紹介会社が乱立し、まともな競争でなく、安い人材紹介コスト競争になった。その為に本物の優れた人材が埋もれ、紹介されなくなった。極めて拙い事である。

 ところで筆者が「Live Fish」、「Dead Fish」の隠語やヘッドハンターの実態を何故、詳しく知っているのか? 来月以降で順次説明する。

つづく

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