理事長コーナー
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ティッピングポイント

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :9月号

 先日、Facebookからのレポートを見て、思わず、「オッ!!」と叫んでしまいました。
 PMAJはFacebookにニュースを投稿しており、Facebookから、今回投稿したニュースに対して、何人がリーチしたか(何人が読んだか)、何人のエンゲージメントがあったか(何人が「いいね」などの反応をしてくれたか)のレポートが報告されます。前回の報告までは100人程度だったのが、いきなり330人になっていたので、冒頭の叫び声になった次第です。
 ちょうど、PMシンポジウム2021の主催者講演の準備ため、「ティッピングポイント」(マルコム・グラッドウェル著 高橋 啓訳 飛鳥新社)を読んでいた時であり、「もしかして、PMAJのFacebookもティッピングポイントを迎えたか!?」と期待してしまいました。
 この「ティッピングポイント」というのは、「すべてが一気に変化する劇的な瞬間」のことであり、たとえば、それまで知られていなかった本が一躍ベストセラーになるような社会現象の説明によく使われます。
 もし、PMAJのFacebookがティッピングポイントを迎えているとしたら、次回のニュースには、もしかすると1000人のリーチがあるかもしれません。楽しみですね。

 一方、地球環境で「ティッピングポイント」という言葉を使う場合は、「地球温暖化がある臨界点(産業革命前の世界の年間平均気温から2℃高い気温)を超えると、急激な、そして元に戻らないような地球環境の変化が起きてしまう。」という意味になります。
 2021年7月2日に放送されたテレビ東京の「ガイアの夜明け」の中で、国立環境研究所の江守正多氏は、「現在すでに産業革命前の平均気温に対して約1度上昇しており、このまま臨界点を超えて進めば、地球温暖化に、急激な、元に戻らないような変化が起きる。その最初の引き金をわれわれの世代が引いてしまうかもしれない。」と警鐘を鳴らしていました。
 実は、このことは以前から指摘されていて、ある科学者のグループが『Nature』誌に2019年11月末に寄稿して、「気候問題に関して、かつて考えられていたよりも多い『ティッピングポイント(転換点)』があり、もはや時間は限られてきている。」と述べています。
 一方で、その寄稿のなかで、次のように述べています。
 「ティッピングポイントは必ずしも災難の兆候とは限らない。人々は、気候変動の問題は変えられると考えている。その考えが、最も重大なティッピングポイントなのだろう。」
 今、この原稿を書いている時点(8月25日)でも、日本のCOVID-19の感染拡大は止まっていませんが、過去のパンデミックの例を見ても、ウイルスの感染は、ピークに達すると、逆のティッピングポイントを迎えたかのように急激に終息します。
 COVID-19のクラスターが日本全国に広がり、ワクチンの接種が急速に進んでいる現状から判断すると、近い将来、急激に終息を迎えることが予想されます。
 過去のパンデミックが、たとえば14世紀のイタリアの黒死病が終息後の世界に大きな変革をもたらし、ルネサンスへつながったように、COVID-19も今後の社会に急激な変革を引き起こすことになると予想されます。そして、その流れは、海外ではすでに発生しているかもしれません。
 我々は、感染防止策を徹底しつつも、感染拡大のニュースの背後で起こりつつある急激な社会変革の流れに注視し、その変革をチャンスとして、地球温暖化を食い止めるためのティッピングポイントを引き起こすべく、ひとりひとりが活動を開始すべき時なのだと思います。
 2021年9月2日(木)のPMシンポジウム2021の主催者講演として、そんなお話しをさせていただきますのでご期待ください。

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