今月のひとこと
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 PMを手ほどきしてくれた人 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :9月号

 残暑厳しい中、パラリンピックが行われています。ビクトリーブーケに注目しているのですが、黄色いヒマワリが赤いバラに替わってオリンピックの時とは違った印象です。これはこれでいいですね。ユニフォームが赤系だとちょっと目立たなくなりますが、持っているメダリストには愛らしく見えているのでしょうね。

 この夏、相次いで尊敬する元上司の訃報が届きました。編集子がITシステム開発プロジェクトに携わっていた時の上司でした。
 1人は、編集子が初めてシステム関係の部署に異動になった時の上司です。何も知らないまま、配属されたチームはシステム化計画に取組んでいました。1970年代の後半でプロジェクトマネジメントという言葉を使う人は周辺にいませんでした。ソロバンを電卓に置き換え始めた業務処理を、コンピュータを使って効率化しようというのがプロジェクトの狙いです。編集子は対象となる業務を現場で担当していたという立場で、現場の効率化に役立つシステム化を検討するという役割でした。その上司は、考え付く限りのアイデアを出せと指示されました。その当時のコンピュータの性能とか、会社の資金規模とかを考えずに、とにかく自由に出してみなさいといった感じです。投資を抑えるために、リスクを取って画期的な技術を取り込むといった冒険にも挑みましたが、効果が曖昧なアイデアはそぎ落として、現実的な要件のみでシステムの仕様を固めました。ここらあたりのバランス感覚は、その後大いに参考とさせていただきました。
 もう一人は、さらに大きなプロジェクトを統括された方です。P2M的にはプログラムマネジャーの立場になるのだと思います。よく叱られました。なかでも覚えているのは、システム障害があった時のことです。その方は、システム担当者が黙々と障害原因の調査を行っているところにきて、雷を落としました。「真剣味が足りない。今、システムのユーザはお客様の前で立ち往生している。そのことを思ったら、もっと真剣にやれるはずだ。」とんだ横槍です。障害が起きた時は、冷静に対応しないと2次、3次の障害を引き起こすというのは経験的に知っています。冷静に対応しているのを見て真剣でないとは言いがかりも甚だしいと思いました。しかしながら、障害発生の都度叱られていると危機管理の形が出来てきたから不思議です。障害発生時の連絡の仕方、チーム編成、連携手順等だんだん形になっていきました。その方は、普段は「俺は日本一の営業だ」と豪語されており、システムの開発・運営を担当された経験はありません。システム障害の対応についても、どうすればいいという答えを持っていたわけではなかったはずです。一人ひとりが真剣なだけでは、緊急時の対応になっていないということを見抜いたうえでの雷だったと、後々分かりました。
 素晴らしい上司に巡り合えたことは大きな喜びです。上司から学んだことを、十分に活かしきれなかったという悔いは残りますが、今も感謝しています。
以上

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