例会部会
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『第268回例会』報告

田邉 克文 : 8月号

【データ】
開催日: 2021年6月25日(金)
テーマ: 「オンラインでのグローバルコミュニケーションを上手く進めるための秘訣」
講師: 井上 多恵子 (いのうえ たえこ)氏 /
レジュメプロ代表 兼 グローバル企業人事

◆はじめに
皆様はオンラインでのグローバルコミュニケーションにご苦労されていませんか? COVID-19の感染拡大をきっかけにオンラインでの業務が日常化し、海外出張の機会も失われています。そのような環境下でもグローバルプロジェクトでは、目標を共有し、メンバーを動機付けしながら、プロジェクトを推進する必要があります。例会では、オンラインでのコミュニケーションを円滑に進めるポイントを井上 多恵子氏を講師としてお招きし、お話し頂きました。

◆講演内容
講演前半は、グローバルプロジェクト発足から終了まで一連の流れにそった留意点と効果的な表現を、後半で、ご自身が参加されているグローバルコミュニティについて紹介されました。

最初に、『オンラインでのグローバルコミュニケーションにおけるハードル(乗り越えないといけない壁)とは?』 という問いから始まりました。
参加者からはチャットで、「時差の問題」、「文化の違い」、「相手のしぐさ(表情)が見えない」、「開始時間に集まらない」等の回答がありました。 講義は、その後も途中Q&Aを交えながら参加者が直面している課題を中心にフランクな雰囲気で進められました。

前半の中心としては、プロジェクト発足から終了時までの一連の流れを5つに分けて各場面で起こりうる事例を元にわかりやすく説明されました。
  • プロジェクトキックオフの準備(<オンラインのメリット>)
  • プロジェクトキックオフ会議
  • プロジェクトキックオフ会議終了後のフォローアップ
  • プロジェクト最中のコミュニケーション
  • プロジェクト終了時のコミュニケーション

一例として「プロジェクトキックオフの準備(<オンラインのメリット>)」の場面で話されたポイントは、以下の通りです。
  • 従来1.5日集中してやっていた(オフラインでの)会議を今は分割して実施している。ただし、同じように実施するのではなくメリハリをつけて大事なことにフォーカスして実施するようになった。
    ( Nice to have(あるといいこと) ⇒ Need to have(ある必要があること) )
  • 時差の考慮は、できるだけ皆が参加しやすい公平な会議時間帯を設定する。
    誤解を生まないよう相手時間で書くと良い。※サマータイムの考慮も重要
  • メールの件名からわかりやすく書く必要がある。(Clear subject line)
    タイトルだけ見て、本文を読む/読まないを決める人もいる。
    内容:明確な目的、目指す結果、アジェンダ、参加者、など

 <オンラインのメリット> (コスト/時間削減以外で特に印象に残ったものを抜粋)
  • 疲労感の軽減
    1. ・ 入出国手続き、移動する機内、時差との闘い、警戒感(荷物盗難のリスク他)
  • 多くの人が参加できる
    1. ・ 費用も、時間もかかるので今までは責任者しか来られなかったが、担当者でも自由に参加できるようになり、意思疎通がスムーズになっている。
  • オンライン会議は平等で話しやすい
    1. ・ 普通の会議では、座る場所から決まっていて、担当者が上の方に発言しにくい場面があったが、オンラインでは皆同じなのでその距離感がなくなる。
  • 研修を複数回の開催に分けられる
    1. ・ 研修を詰め込み式の1回で済ませるのではなく、教えた内容を1週間後に確認する等複数回に分けることで、学びの定着や実践を促進できるようになる。

講演の後半では、コーチングの神様といわれているマーシャル・ゴールドスミス氏が主催するグローバルコミュニティメンバーとしての活動を紹介頂きました。
ゴールドスミス氏は、ご自身の知見を参加メンバーに惜しみなく伝え、メンバーには先で、今度はメンバー自身の知見を次世代へ伝えていくことを期待するコミュニティを創られました。同コミュニティは現在全世界350名(日本人2名)のコーチや組織のリーダーなどで構成されており、講師は、そのメンバーの一人として参加されています。コミュニティでは心理的に安全な場所になるように努力し、自分ができる最大限のことを協力することになっており、講師は日本人として日本のプロジェクトや、人の紹介をして貢献し、世界のハイレベルの方々の中で学びを得られていると話されました。

◆まとめ
全体を通して、Q&Aを随所に交えて講演され、参加者が実際に直面しているグローバルコミュニケーションへの課題/疑問点へ的確なアドバイス、助言をされました。
講演の最後に、マーシャル・ゴールドスミス氏の言葉である
Did I do my best to XXX? (XXXするために自分はベストを尽くしたか?)
のメッセージを参加者へ贈り、締めくくられました。

◆執筆者所感
講演を聞き、オンライン会議とオフライン会議は、手段の違いがあってもコアとなる部分は変わらず、オンライン会議では、より事前準備会議進行会議結果伝達が重要だと再認識しました。一方で、会議がオンラインになることの効果(メリット)は絶大で、会場をセッティングして、そこに人を集めるためのコストや労力の他にも様々な良い点があることがわかりました。アフターコロナの世の中でもこの流れが続くとは思われますが、個人的には、対面で対話する従来の会議形式でのメリットは十分にあると思っており、将来どのようにオンラインとオフラインの会議の使い分け(棲み分け)がされていくのかを注目して見守っていきたいと思っています。

例会では、運営メンバーを募集しております。ご興味をお持ちの方は、是非、ご一緒に例会運営へご参加ください。参加ご希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。

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