PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(160)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :7月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●日本人の若手プロ選手の大活躍
 前号でマスターズ2021に優勝した「松山英樹選手」の事を紹介した。その後、全米女子オープン2021に「笹生優花選手」が優勝した。その少し前は、全英女子オープン2019に「渋野日向子選手」が優勝した。

 一方米国のプロ野球界に目を転じれば、「ベーブルース」の再来と評価されている「二刀流」のエンジェルスの「大谷翔平選手」が存在する。彼は米人選手より背も高く、大きい。打者として本塁打競争をする一方、剛速球で次々と強打者を打ち取るピッチャーをやり遂げている。米人も、日本人も、信じられない程の彼の大活躍である。

 更にプロテニス界では、数々のメジャー優勝を遂げている「大阪なおみ選手」が存在する。彼女の父はハイチ共和国の出身、母が日本人で、その間に生まれた2人の姉妹の妹である。彼女はハイチ代表でオリンピックに出場すると聞いている。彼女は今後、この世界で益々活躍するであろう。

 一昔前では考えられない様な日本人の若手選手達の国際的檜舞台での大活躍である。プロ・スポーツ界で優勝するには、タフな精神、優れた頭脳、強靭な体力、そして体が大きい事が必須要因である。

 最近の日本人の若いプロ選手達は、男女共にこの要因を満たしている。特に背が高くなり、体も一層大きくなった。しかも国際的檜舞台で「モノオジ」しない。これ等が大活躍の基本要因になっている。兎に角、筆者の「エンターテインメント論」を論じる為の素材やニュースに事欠かない。今後、本論を益々、有意義に、楽しく、展開していく積りである。任せて欲しい。


●「100年人生タイム・テーブル」と「後半人生の課題」
 さて先々月号のテーマに戻ろう。下記の「100年人生タイム・テーブル」を見て欲しい。

 繰り返しであるが、今後の世代の多くの日本人は、100歳まで生きると言われている。驚くべき事は、本人が会社や官庁などで最初に管理職になってから定年までの期間が約「35年」、定年から死ぬまでの期間が約「35年」と想定され、その長さが同じであると云う事である。その同期間は何を意味するのか? この機会に是非、考えてみて欲しい。

100年人生タイム・テーブル
100年人生タイム・テーブル

 「人生は一瞬」と言う人物は、死の間際の人物である場合が多い。しかしその人物でさえも、今まで歩んで来た過去の人生を時間軸に沿って正確に思い起こせば、「物凄く長い期間」であったと認識するだろう。

 この物凄く長い期間が、これから死ぬまで続くのである。そう思うと「不安」に思う「不安人物」とまだまだ「元気」でやれると思う「元気人物」に分かれる。

 しかし「不安人物」にも、「元気人物」にも、共通する解決すべき課題がある。前々号で紹介した「Wish List」での対応では、とても乗り切る事は出来ないし、その効果も限定的であると判断している。

●何故、本論で「人生論」を論じるのか?
 そもそも何故、本稿のエンターテインメント論で人様の「人生論」を論じるのか? 「This is not your business」と言われそうだ。しかし考えてみて欲しい。エンタテイメント行動(後述)は、「後半人生」に深く関わる。もっと正確に言えば、「前半人生」でエンタテイメント行動に深く関わっていたか? 全く関わっていなかったか? この違いが「後半の人生の課題」の解決を左右するからである。

 この課題とは、「短文」で表現すれば、「豊かな生活を過ごし、楽しい人生を送る」事である。もっと短い「語」で表現すれば、「カネ」と「タノシミ」の事である。

出典:金と楽しさ
出典:金と楽しさ
出典:金と楽しさgoogleusercontent.30-p-k-no-numyfaithradio.com/wp-ontent/Medium

 さて「後半の人生」に入ってから、この課題の意味に気付いた人物は、カネとタノシミの獲得度合いによって、①豊かで、楽しい人生、②豊かだが、楽しくない人生、③貧しくても、楽しい人生、④貧しくて、楽しくない人生、これらのどれかに該当して100歳まで生きる事になる。

 さてこの人物は、下記の予測から①の人生となる可能性が低くなる一方、④の人生になる可能性が高くなる。

 筆者は何度か本稿で述べた事がある。それは、約30年前から今も、日本が明治維新と戦時を除き、現代史上初の「構造的危機」に直面したと主張してきた事だ。もし「今のまま」で自己改革(一種の革命的変革)を断行しないと、日本は大きく傾き、最悪の場合は、アジアの小国に凋落するかもしれないと予測した事である。

 残念な事に、筆者の主張と予測が的中するかもしれないと云う事実が次々と起こっているのである。筆者は的中など一切望まない。しかしもしも的中すると多くの日本人に待ち受けるのは「日本の凋落」である。従って「後半の人生」は、多くの日本人に厳しい、惨めなものになるかもしれないと云う事である。

●後半人生の課題解決策
 後半の人生の課題解決策は、以下の通りである。順次その内容を解説していきたい。しかしその内容は長文になるので次号以降も繰り越して説明を続ける。

後半人生の課題解決策

1 経済的基盤の形成(主としてカネの課題)
   1-1 積極的収入獲得や積極的資産形成(投資)
  1. >会社勤務、各種の会社経営、社員研修事業、特技教室事業、エンタテイメント出演料獲得、保険外交員、その他諸々(書き切れない)
  2. >株式投資、不動産投資(国内、海外)、
   1-2 消極的収入獲得や消極的資産形成
  1. >年金収入、生活保護支給
  2. >不動産賃貸料、既存保有株配当、投資信託配当、預金利息、

2 精神的基盤の形成(主としてタノシミの課題)
   2-1 積極的精神的欲求充足
  1. >自らエンタテイメント行動をして自ら楽しむ。
  2. >自らエンタテイメント行動をして他者を楽しませる。
  3. >自らエンタテイメント行動の内容を研究し、深め、自他共に楽しむ。
  4. >他者のエンタテイメントを享受する。その内容を研究し、享受性を深める。
   2-2 消極的精神的欲求充足
  1. >他者のエンタテイメントを享受する。

●カネを幾ら払っても買えないもの
 「カネ」を幾ら払っても絶対に買えないものが世の中に数多くある。エンタテイメント行動(趣味、道楽、芸事、習い事、芸術的創造など)がその1つである。

 これを手に入れる事とは、その行動を体得し、楽しめる様になる事である。これにはカネが掛るだけでなく、自ら努力と時間を投下しないと絶対に手に入らないものだ。この場合の時間とは、1年や2年ではない。最低でも5年から最長なら20年以上掛るものだ。

出典:趣味
出典:趣味
出典:趣味
出典:趣味 frebers.com/Hobbies_and_Interestst=930%2C700

 例えば、「後半の人生」が開始した時、即ち定年になった時、ピアノを弾ける様になり、楽しめる様になりたいと思い立つ。ピアノ教室に通う。ピアノ教室ではピアノ発表会を開催し、日頃の練習の成果を披露する。しかし人前で堂々と弾ける様になるには、最短でも5年近くは誰しも掛る。歳を取っているので若い時の様にはいかない。

 「クールで格好いいジャズピアノ」は、多くのピアノ愛好者が憧れだ。自由に弾けて、楽しめる様になりたいと思う。ジャズピアノ教室に通う。最短でも更に5年掛る。そして弾けるだけでは満足せず、ジャズのライブハウスでプロ仲間と共演したいとライブハウス通いを始める。そしてプロ演奏者に接近し、付き合って貰い、チップを「裏」で手渡し、ジャズセッションに参加させて貰い、耳の肥えた常連客の前で、恐る恐るピアノを弾かせて貰う。

 それに慣れてくると、いよいよ自分のジャズバンドを編成し、ジャズのライブハウスの経営者の許可を得て、自分が付けたバンド名でお店に出演する。ライブハウスの出演者名が案内書に出る。しかし多くの場合、1回~2回の出演で終わる場合が多い。しかし此処迄に到達するには15年位掛るだろう。

 その後も頑張り、お店の経営者の信用を得る一方、固定客も付きそうになると、いちいちお店と出演契約交渉をせずとも、出演日時さえお店と打ち合わせて決めれば、毎月1回又は数回、決めた日に出演が自動的にできる様になる。この状態を「箱出演」と云う。これはプロ仲間での「隠語」の1つである。「箱出演」していると言えば、プロであると宣言している事になる。「本職」を別に持ちながら「箱出演」する人物を「兼職プロ」、「箱出演」や「コンサート出演」や「ジャズピアノ指導」など「音楽」で稼いでいる人物を「専業プロ」と筆者は命名している。此処迄来るには最短でも15年、最長で20年の時間は必要かもしれない。

 以上の事は「ピアノ」に限った事ではない。他の「タノシミ」としての「歌」、「ギター」、「ドラム」、「テナーサックス」などから「尺八」、「三味線」、「笛」などまで同じである。

 更に絵画、彫刻、俳句、和歌などのエンタテイメント行動も、専業プロ又は本職を持ちながらの兼業プロになるには、同じだけの「時間」が必要である。以上の事は、「エンタテイメント行動」だけではない。「本職」を持ちながら新しい学問、学説、著作など創造的行動に取り組んだ場合にも当てはまる。

●成り上がり者
 日本のテレビ番組で本職に成功し、膨大な資産を築いた人物が時々登場する。その人物は東京都内の豪邸に住み、凄い値段の絵画や彫刻を集め、高価なスポーツカーや乗用車を乗り回す。箱根や軽井沢などに凄い別荘まで保有する。庶民の憧れの人物である。

 しかし欧米社会では、日本にない「人物尊敬評価基準」がある。「本職」で大成功して超金持ちになった人物であっても、「本職」に関係しない別分野で「カネ」で買えないものを体得していない場合、「成り上がり者」と評価される。

 本職以外で「カネ」で買えないものを「身」に付けた人物は、欧米社会の政界、財界、官界、学界、特に社交界で、「裏」で最も尊敬される。「カネ」で買えないものを「身」に付けていない本職だけで成功したカネ持ち日本人は、欧米社会では「表」では尊敬されるが、「裏」では尊敬されない。しかも「本職」の重要場面では「裏」で信頼されない場合が起こる。この事を多くの日本の政治家、官僚、学者、そして企業人(社長と社員)が知らない。

つづく

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