PMプロの知恵コーナー
先号   次号

「エンタテイメント論」(159)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :6月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●松山英樹選手、プロ・ゴルフ競技「マスターズ2021」に優勝と筆者の予言
 前号で解説した「Wish List」より効果的な「問題解決策」は、「エンタテイメント」の本質と効用に広く、深く関わっていると「予告」した。そしてそれを本号で解説する予定であった。にも拘わらず、本号の冒頭から松山英樹選手の日本人として初の「マスターズ・トーナメント優勝」の事を書いた。

出典:松山英樹・ゴルフ・マスターズ2021 優勝
出典:松山英樹・ゴルフ・マスターズ2021 優勝
出典:松山英樹・ゴルフ・マスターズ2021 優勝
https://search.yahoo.co.jp/image/search=UTF

 その理由は、ゴルフ観戦がエンターテインメント論の対象である為だ。更に今から10年前、2011年11月25日、「本稿・第45号」で松山英樹選手の事を書いた為でもある。彼は「マスターズ2011年」に招待され、見事に「アマチャー優勝」を成し遂げた。筆者は同号で「松山選手は将来、マスターズに優勝するチャンスを掴むだろう」と予言した。その予言は的中した。

 松山選手は、マスターズの最終日、4バーディ、5ボギーの「73」でプレーを終了し、通算10アンダーとして1打差で逃げ切り、優勝した。ウィル・ザラトリスが通算9アンダー2位。

 上記の通り、彼は、若さ溢れる19歳で「マスターズ2011年」に初出場。いきなり「アマチャー優勝」をしたのである。その時から10回目の挑戦で悲願のグリーン・ジャケットを手にした。アジア人の世界メジャー優勝者は、2009年「全米プロ選手権」のY.E.ヤン(韓国)以来2人目。マスターズの優勝は彼が初めである。

 松山選手は、愛媛県出身の29歳。2013年にプロ転向し、2014年から米プロツアーに本格参戦。同年の「ザ・メモリアル・トーナメント」で初優勝。2017年8月の「WGCブリヂストン招待」で5勝目を飾った。それ以来3シーズンは勝利がなく、3年8カ月振りの6勝目がマスターズ優勝となった。

 日本人選手がそれまでのマスターズで最高位を獲得した人物は、2009年の片山晋呉の第4位であった。かつて日本中を賑わせたゴルフ選手は、尾崎将司、青木功、中嶋常幸の3選手であった。彼らは、いずれもマスターズ優勝を「夢」としていた。しかし誰一人、その「夢」を叶える事が出来なかった。

 松山選手は、2021年の東京オリンピックに出場する予定。しかしマスターズ優勝の方がオリンピックの金メダルより遥かに価値と名声は高い。何故ならゴルフ界で古今東西のプロ選手も、アマチャー選手も、多くのゴルフ愛好家も、マスターズを特別の競技と認識し、特別の敬意を払っているからである。

●松山英樹選手の「マスターズ2011」での「ベスト・アマチャー優勝」
出典:現在の松山選手 同上
10年目の挑戦で優勝
出典:松山英樹 2011年マスターズ・アマチャー優勝・TBS
 松山選手は、上記の通り、「マスターズ2011年」の「アマチャー優勝」を遂げた。彼は、その時に優勝したシャール・シュワーツェルと共にマスターズ主催のカントリークラブの重鎮から祝福の場に招かれた(上記右の写真。白いゴルフウエアが松山選手)。暖炉の上の絵は、球聖「ボビー・ジョーンズ」の肖像油絵である。松山選手は、10年後の今、優勝のグリーン・ジャケットを着て、同じ席に座ったであろう(その写真が見つからない)。

 さてゴルフに関心や興味がない読者の為にマスターズについて概説する。

●マスターズ競技とは?
  1. >マスターズ(競技)は、米国ジョージア州の「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・カントリークラブ」が毎年主催し、選手と観客を招待して行う競技である。
  2. >マスターズは、世界的ゴルフ競技と評価された全米オープン(アマチャーが参加可能な競技がオープンの意味)、全米プロ、全英オープン、全英プロ、そしてマスターズの5大競技の1つである。
  3. >マスターズは、ゴルフの球聖「ボビー・ジョーンズ(Robert Tyre "Bobby" Jones, Jr 1902~1971年)」が彼の友人で実業家のクリフォード・ロバーツの協力を得て創設した競技である。1934年(昭和9年)、最初のマスターズ競技が開始された。

出典:ボビー・ジョーンズのグランドスラム達成のカップ
出典:ボビー・ジョーンズの
グランドスラム達成のカップ
Grand+Slam.jpg (400×329)
(bp.blogspot.com)
出典:ボビー・ジョーンズ
出典:ボビー・ジョーンズ
pinimg.com/564xbaaca
ad45db9ddd8
出典:ボビージョーンズの墓
出典:ボビージョーンズ
の墓
stagingc8.alamy.com/
cemetery-to-robert-tyre-jones

  1. >マスターズ創設者のボビー・ジョーンズは、ジョージア工科大学、ハーバード大学など卒業。弁護士で終生を送った。ゴルフをアマチュアで貫いた人物。実力はプロを上回った。
     1930年、28歳で全英アマ優勝、全英オープン優勝、全米アマ優勝、全米オープン優勝と、アマチュアーとして参加できる世界4大競技を1年間で達成。これを「グランドスラム」と云う。この言葉が現在までスポーツ界で使われてきた。しかし彼は1年間グランドスラム達成の7週間後、28歳で競技生活から完全引退。背骨の痛みの症状が原因。
     彼は、晩年、車椅子生活をし、1971年69歳で死去。1974年に世界ゴルフ殿堂が設立され、最初に殿堂入りした。そして「球聖」としてゴルフ史に名を残した。
  2. >マスターズは、毎年4月第2週目の日曜日が最終日とする基準で開催される。出場選手は、招待されないと参加できない。前年度のメジャー優勝者や世界的競技の賞金ランキング上位者が招待される資格があると言われている。しかし絶対ではない。あくまで名手(マスター)として同カントリークラブが最終選定し、決定して、「招待」する。日本のマスコミは資格があれば当然出場できる様に報道している。正しくはない。
  3. >マスターズは、松山選手を含めマスターズ優勝者を毎年必ず招待する。そして本人は亡くなるまで競技に出場できる。競技できなくなっても特別ゲストとして招待される。筆者と同年齢(81歳)で、憧れの選手で、直接会った事もある「ジャック・ニコラウス」は、毎年、招待され、同競技に参加している。
  4. >マスターズを観戦したい観客は、同カントリークラブの所属メンバーでない限り、幾ら金を積んでも、招待されない限り、観戦する事は出来ない。

●マスターズのゴルフ場の自然に囲まれた美しさ
 余談であるが、筆者は、新日鉄ニューヨーク駐在員時代、同僚の某駐在員の好意でマスターズを観戦する幸運を手にした。

 同駐在員は彼が懇意にする某米国企業の某社長に頼み、某社長がマスターズの最終日に観戦する特別招待の権利を筆者に譲ってくれたのである。筆者は夫婦で観戦する事ができた。この最終日、勝ち残った青木 功選手をマスターズのコースで見た。2アンダーで優勝を争っていた。彼は顔面蒼白、極度の緊張感で周囲を見る余裕もなかった様だ。まさに「命懸けの勝負」をしていた。しかし終盤、崩れ、優勝できなかった。名手・青木選手にしても優勝は叶わなかった。

 さてマスターズを観戦した時、木々と花々、小川、小鳥の鳴き声、リスの群れに囲まれた。
 素晴らしい環境下のゴルフ場を満喫した。今、TV生中継で選手達の戦い振りの背景の自然風景を見ると、今も懐かしくその時の状況を思い出す。昔も、今も変わらぬ美しさ保っている様だ。自然に囲まれたフェアーウエー、グリーン、バンカー、橋などの設計の見事さとコースの手入れの素晴らしさは、言葉で表現できない。しかも「荘厳さ」まで漂っている様である。

 世界最高のゴルフ場の舞台で、世界最高のゴルフ・マスターズ(名人達)が世界最高水準の技で四日間戦う。この観戦は、まさしく世界最高水準のエンタテイメントである。
出典:コース、観衆、クラブハウス
出典:コース、観衆、クラブハウス
出典:コース、観衆、クラブハウス
出典:コース、観衆、クラブハウス
出典:コース、観衆、クラブハウス
images.search.yahoo.com/search/and getwallpapers.com/wallpaper/full

 ちなみに「エンターテインメント論」の第1号は、2008年3月24日である。既に13年が経過した。「光陰、矢の如し」である。しかし今まで解説した「エンターテインメント論」は、解説すべき全体の半分にやっと達しただけ。エンターテインメント論は、幅が広く、奥が深い。まだまだ続く。
つづく

ページトップに戻る