図書紹介
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シルビア・ブラウンが視た世界の終わり END OF DAYS-終末予言と天啓
(シルビア・ブラウン、リンジー・ハリソン著、永島 静訳、東京創作出版、2020年12月15日発行、第1刷、269ページ、1,700円+税)

デニマルさん : 7月号

今回の本を紹介する前に、筆者とこの本の関係について触れて置きたい。実は、筆者の友人のS氏から紹介されて筆を取る事になった経緯がある。S氏とは、松戸市生涯大学のOBグループで20年近い付き合いが現在でも続いている。お互いに本と音楽が好きで同じ趣味仲間という関係もある。特に、S氏の本好きに関しては、もっぱら書く方に専念されている様で、12年間で6冊もの本を出版されている。中でも自分史は5冊も書かれ、「エピソード・エッセー」なる独自の分野を開拓し、現在でも執筆中である。そのS氏の技術的顧問が、今回紹介する本の翻訳者なのである。こうした関係にある筆者が、終末予言なる全くの専門外の本に取り込むことになった。筆者はサラリーマンの現役時代から30年以上もPM(プロジェクト・マネジメント)を実践してきたシステム構築の専門技術者である。その関係から有形・無形の顧客要件をプロジェクト化して、限られたリソース(人・物・金・時間)の範囲で種々のシステムを具現化して来た。そこではPM技法だけなく、蓄積された経験とスタッフとのコミュニケーション等を含む統合力が求められた。こうしたPM技術を標準化すべく、日本でもPMAJ(日本プロジェクトマネジメント協会)が設立され、筆者も会員として技術指導を兼ねて話題の本を紹介している。そこでは20年以上も関連書籍を紐解いている。今回取り上げる本は、今までとは全く異なった分野なので勝手が違う。筆者のシステム構築という現実的な世界感と霊能者が視る未知の世界感というか見えない世界の予言をどう判断するかの大きな違いがある。そこで色々迷った末に得た結論は、今までの経験を離れて、新たな気持ちで冷静にこの本を紹介することに努めたいと割り切ったのである。前段が長くなったが、本題に入ろう。この本は、大別して三つの内容に分かれる。一つは、世界の終末予言の歴史的な流れを纏めている部分と、二つ目が著者の指摘してきた終末予言と三つ目の人類終焉に関するものである。この本での最大のポイントは、二つ目の著者が2020年のコロナパンデミックを12年前に予言した点にある。これは詳しく後述するので、最初に終末予言の歴史的な潮流(古代信仰)とキリスト教を始めとする宗教に関する終末論について触れてみる。古代信仰の時代では、インカ文明やマヤ文明の太陽と自然現象の予見・予言。ネイティブ・アメリカン(先住インディアン)の自然と母なる大地の信仰。アボリジニの自然畏敬からの神話がある。主体はこれらを語る長老、酋長等の予言者である。次に世界的な宗教の発達へと繋がる。キリスト教やイスラム教等の終末論は、それぞれの経典に深く関係している。これらの詳しい内容は、本書を読んで歴史的な経緯と問題点をご理解頂きたい。著者は一般論として、終末予言は、「千年王国説(ミレニアリズム)」<新約聖書のヨハネ黙示録>、「黙示信仰」<旧約聖書のダニエル書>、「救世主信仰」<キリスト、イスラム、ユダヤ教のメサイア、神に遣えて人々の苦難を救う者>の三つに大別されると書いている。

シルビア・ブラウンとは          ――アメリカの霊能者――
著者について紹介したい。本書にある略歴には、1936年生まれ。全米一の人気と実力を兼ね備えた霊能者とある。更に、「行方不明者の捜索や有名事件の捜査でFBIや警察など公的機関に協力し、多数の難事件を解決、犯罪調査に貢献した。前世療法分野での研究活動にも精力的に取り組み、超自然現象の調査研究を通して、医師たちとの共同作業や祈りの場の建設などを行った。米国の人気テレビ番組やニュース番組などへの出演多数。40冊を超える著書のうち、20冊以上が「ニューヨーク・タイムズ」紙のベストセラーリストとなっている」とある。日本では知名度が低いが、本書の他に「あなたに奇跡を起こすスピリチュアル・ノート」(PHP文庫、2003年)等6冊が日本語に翻訳されている。中でも「シルビア・ブラウン―サイキックとして 半生とその足跡」(中央アート出版社、2003年)に、自らの半生を綴っている。時系列的には、1974年サイキック調査のニルヴァーナ財団を設立。更にシルビア・ブラウン催眠術トレーニングセンターを立ち上げ催眠術を教えていた。1991年には、人気トーク番組「モンテル・ウィリアムズ・ショー」に出演して、行方不明の人の消息やどこにいるのかを霊視したりしている。1993年の世界貿易センター爆破事件では、霊視情報を提供するなど活動の幅を広げ、アメリカの女性霊能者としての地位を確立していた。そして著者は、生前88歳で死ぬと予言していたが、2013年11月、77 歳で逝去している。

終末への予言とは            ――2020年コロナパンデミック――
この本は全米でベストセラーとなり話題となった。それは昨年から世界中に蔓延した新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの発生を12年前に予言していたからだ。著者は、それ以前から霊能者として、アメリカのテレビニュース報道やFBI捜査での行方不明者や事件の犯罪調査に助言し、種々のコメントをしてきたとある。だから知る人ぞ知る予言者である。本書では「私の目を通して世界の終わり」の項目に、その詳細が書かれてある。その文章の中に「細菌感染症が2010年に発生し、外来の鳥類に取り込まれたミクロのダニによって人間に感染する。既知の薬物と抗生物質では効果ない」とMERS(中東呼吸器症候群)を予言。そして「2020年頃には、重度の肺炎のような病気が世界中に蔓延し、肺や気管支を攻撃し、既知の治療法に抵抗するようになる。」と新型コロナウイルスの発生を予見している。このセンセーショナルな予言が的中したことで、世界中から注目が集った。この本には終末予言の大筋として、2050年から先の問題点(地球温暖化、健康問題等々)も書かれてある。そして最後に「人類の終焉」に関しても触れている。参考までに、著者が本書を出版した意図は「世界の終わりに近づいているかどうかの質問を、近年頻繁に受けている。そこで自分の予言を含めて、納得のいく答えを追求する為」と書いている。尚、原作の初版は2008年と編集部の付記がある。最後に、筆者はPMプロで後期高齢者の身では、人類の終焉まで生き永らえる自信もなく、著者の洞察力というか予言力に敬服する。今回は全くの専門外の本を紹介させて貰ったが、本書を的確に論じ得なかったと大いに反省している。

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