プログラムマネジメント実践事例集 (エッセンス版)
PMAJ APC 竹田 直規 : 7月号
PMAJ会員の皆さん、こんにちは。今回は、APC(Advanced PMR Club)が発行している「プログラムマネジメント実践事例集(エッセンス版)」についてご説明いたします。
1.APCについて
APCは「PMRの認知向上活動およびPMRによる価値創造活動を通じて相互啓発し、プログラムマネジメントの普及促進を図ること」を目的として、2018年9月から活動しています。現在18名のPMR資格取得者が参加し、月1回のWeb会議を開催しています。直近の会議では、PMシンポジウム2021の講演内容とプログラムマネジメント実践事例集(エッセンス版)への追加事例について審議しています。
2.プログラムマネジメント実践事例集 (エッセンス版)
1)発行に至った経緯
APCの目的の一つ「PMRの認知向上活動」について議論を重ねた結果、「PMS資格取得者やプロジェクトマネジメントを実践している人に、PMRおよびプログラムマネジメントの理解を広める」ことにしました。そのための具体的活動として下記2項目を実施することに至りました。
- ①PMシンポジウムで「プログラムマネジメントの実践事例」を講演する。
- ②講演した実践事例に調査研究した事例およびAPCメンバーが個人的に実践した事例を加えた「プログラムマネジメント実践事例集(エッセンス版)」を発行する。
2)プログラムマネジメント実践事例の収集
ほとんどのAPCメンバーは企業に所属しており、企業活動としてプログラムマネジメントを実践していますが、その事例紹介は守秘義務の制約があり、企業が公開している一部の案件を除いて紹介できない状況です。そこで、世の中に公開されている企業・自治体・省庁の活動を調査研究しプログラムマネジメントとして評価できる事例、およびAPCメンバーが個人的に実践した事例を収集することにしました。
3) プログラムマネジメント実践事例の分類
プログラムマネジメントについては「P2M標準ガイドブック」第2部に記述されており、プログラムの分類が「図表2-1-4 プログラムの類型と事例」で示されています。
図表2-1-4 プログラムの類型と事例
分類 |
類型 |
具体事例 |
戦 略 型 |
組織改革 |
M&A、事業構造改革、リストラクチャリング、組織再編など |
商品改革 |
大型の新製品やサービス、新規素材、医薬品など |
新ビジネスモデル |
新期市場(顧客)開拓、新期バリューチェーン構築など |
研究開発 |
宇宙開発、地球環境関連(大気汚染や水質、防災など) |
創作活動 |
映画製作、テレビドラマなど |
社会インフラ |
スマートシティ |
オペレー ション型 |
建設関連 |
プラント、発電所、鉄道、空港、市街地再開発など |
資源関連 |
資源探査、油田、鉱山などの開発や運用など |
IT関連 |
人事や経理などの基幹系システム、生産管理、銀行勘定系システムなど |
当初はこの分類表に収集した実践事例を適用しようとしましたが、APCメンバーが個人的に実践した事例は当てはまりませんでした。そこで、実践事例の特性を分析し、分類と類型を追加することを検討しました。その結果を下表に示します。追加した分類と類型をオレンジで示しています。
分類 |
APCの定義 |
類型 |
APCが紹介する具体事例 |
実践 事例 |
事例 研究 |
戦 略 型 |
P2Mの特徴であるミッションプロファイリングと3Sモデルを生かしたスパイラルアップしていくプログラム |
組織改革 |
中小規模の全員参加型業務改革 |
○ |
|
JAL再生 |
|
○ |
経営戦略 |
建設会社の中期経営計画策定 |
○ |
|
建設会社の地球環境への取り組み |
○ |
|
富士フィルム第二の創業 |
|
○ |
商品改革 |
建設会社の商品企画 |
○ |
|
新ビジネスモデル |
くまモン |
|
○ |
研究開発 |
|
|
|
創作活動 |
|
|
|
社会インフラ |
|
|
|
人生設計 |
マイプログラム |
○ |
|
55歳からの技術士挑戦 |
○ |
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オ ペ レ | シ ョ ン 型 |
3Sモデル(スキーム・システム・サービス)を活用したプログラム |
建設関連 |
|
|
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資源関連 |
|
|
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IT関連 |
|
|
|
イベント企画 |
大規模セミナーのウェビナー化 |
○ |
|
非常事態 |
台風による床上浸水家屋の復旧 |
○ |
|
介護 |
○ |
|
クルーズ船(DP号)の感染症対策~PMRとして学ぶこと |
|
○ |
イ ベ ン ト 型 |
一過性で終わるから、「やってみたい・やってよかった・またやってみたい」のプログラム |
団体活動 |
学生開催イベント |
○ |
|
家族 |
子供の結婚 |
○ |
|
家族旅行 |
夫婦青森旅行 (47都道府県制覇) |
○ |
|
4) APCが紹介する具体事例の特徴
今年発行する第3版では16事例を紹介します。その内12事例はAPCメンバー(APCメンバーが推薦したPMSを含む)が実践した事例で、内訳は個人生活で実践した事例が8件、所属企業で実践した公開可能な事例が4件となっています。残りの4件は公開された書籍や報道資料を調査した事例研究で、企業の事例が2件、地方自治体の事例が1件、社会的影響の大きい事例が1件となっています。
APCメンバーが個人生活で実践した事例では、非常事態に対しプログラムマネジメントを活用し成果を得るに至った経緯や、人生設計や家族のイベントにおいてもプログラムマネジメントが有効であることが紹介されています。企業や地方自治体の事例研究では、成功に至る過程でプログラムマネジメントの考え方や手法が取り入れられていることが紹介されています。一方で社会的影響の大きい事例では、そこから学ぶべき教訓をプログラムマネジメントに応用する形で紹介しています。
5) プログラムマネジメント活用への期待
色々な類型の実践事例を知ることにより、日常の身近な課題に対してもプログラムマネジメントが活用できることをご理解頂けると思います。次の案件?明日から?今から!プログラムマネジメントを活用しましょう。更にはPMR資格取得への挑戦を始められることを期待しています。
3.今後の活動
プログラムマネジメント実践事例集(エッセンス版)の事例拡充、およびPMシンポジウムなどでの講演を継続して行う予定です。又、価値創造についても調査研究を進める予定です。
4.APCメンバー募集
APCは、PMRの有資格者であれば誰でも参加できます。参加をご希望の方は、 こちら (PMAJホームページ)からご連絡ください。入会された方には、PMAJ理事長よりPMRバッジが貸与されます。
多くの方々のご参加をお待ちしています。
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