今月のひとこと
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 家飲み元年 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :6月号

 関東地方もぼちぼち梅雨に入ろうとしています。この時期は何といっても紫陽花(アジサイ)です。雨水を吸い上げる力が強いことから、空がどんよりとすればするほど花の色が際立ち、枝葉が膨らんできます。頑張って綺麗に咲いてくれるのですが、花を見て心が浮き立つというわけではありません。紫陽花の名所にお寺が多いこともあり、地味な花だという印象です。また、土壌の酸性度によって花の色が赤くなったり青くなったりする性質があり、リトマス紙を連想します。リトマス紙を使った実験を初めて体験するのは小学生の頃だったでしょうか、その頃、理科は楽しい遊びの時間でした。そんな懐かしい記憶を思い起こさせる花が紫陽花です。

 緊急事態宣言措置として飲食店での酒類提供STOPが要請された地域では、どこにも立ち寄れずに真っ直ぐ帰宅という日々が続いています。仕方なく、酒販店等でお酒を仕入れて家飲みで我慢している人が大勢います。どのようなお酒が飲まれているのか気になるところですが、まだ断片的な情報がマスコミ等に流れ始めたという状況です。一説ではウィスキー等のアルコール度数の高いお酒類が売れたとか、ワインやビール系が売上げを大きく伸ばしたといわれます。パーティーで飲まれるシャンペンが減ったという話も聞かれます。わが日本酒は残念ながら減っているとのことです。
 宴会が開かれなくなったので、宴会用のお酒が減るという説明はよく分かります。その点では、ビールも大きく売上げを減らしているはずですが、より安価なビール系飲料と併せて家庭での消費が増えたと解説されています。ビール及びビール系飲料はスーパーやコンビニで気軽に買えますので、この解説は納得感があります。
 外食が制限されるようになり、自宅で高級食材を使ったり、高級料理の宅配サービスの利用が進んだことによりランクアップしたワインを購入する向きが増えたという解説がありました。もっともらしい解説ですが、本当のところはどうなのでしょうか。自宅でどういう状況でワインが飲まれているのか、調査結果が出るのを待ちたいと思います。
 そして、わが日本酒です。いわゆる普通酒ではない「ちゃんとした」日本酒にとって、家飲みは拡販のチャンスのはずです。しかしながら、様々な制約があって販売が進みません。消費者の目線で、売れない理由を考えてみました。一つは「欲しい酒が買えない」という事情です。自分が好きな「ちゃんとした」日本酒を置いている酒販店が少ないのです。馴染みの居酒屋には、その店特選のおいしい地酒があったりしました。○○屋に行くと☆☆酒が飲めるといった情報がSNSでも流れていました。ところが、急に在宅勤務になった方の自宅周辺にそんな特選酒は売っていません。それどころか「ちゃんとした」日本酒を置いている酒販店がないケースも多いのです。
 通販を使うという手もありますが、本数を揃えないと送料が高くつきますし、一升瓶を取り寄せると家人がいい顔をしないという家庭も多いようです。ちゃんとしていてもいなくても一升瓶の形状は同じですので、体裁がよくないのだそうです。多分、これが2つ目の理由です。ワイン好きは趣味の一つと見做せるけれど、日本酒好きは只の「呑兵衛」でしかないということです。
 日本中の酒蔵が「ちゃんとした」日本酒を提供しようと頑張っています。家飲みの拡大を、大勢の人が「ちゃんとした」日本酒を家庭で楽しめるようになるチャンスとして活かすことができないものでしょうか。
以上

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