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応援してもらえる力 2

井上 多恵子 [プロフィール] :5月号

 「土の時代から風の時代に移行した今、肩書ではなく共感を通じて誰と繋がっているか、が大事」先日開催されたオンラインブランディングフェスタで、セミナーズの清水社長がこのように語るのを聞きながら。私は心の中で叫んでいた。「やった!私にもようやく追い風が吹いてきた!」と。
 会社で出世するタイプではないと自覚した私は、父親が立ち上げたレジュメプロ(レジュメや職務経歴書の作成支援)の仕事を2000年から手伝う中で、自分ブランディングを模索し続けてきた。願い事を口にすると叶いやすくなると以前どこかで読んだことがあり、「レジュメプロを通じて提供している価値」について、ことあるごとに周りに伝えてきた。20年かけて少しずつ広がってきたが、願っていたほどには広がっていない。父親と共著で本を3冊執筆した後、次の本を出すべくお金と時間を投資して出版塾に通ったが、形にはならなかった。東北大学で教え始めた時、他の大学にも広がると期待したが、残念ながら広まらないまま、教授の御退任と共に、講座自体が終了となってしまった。
 最近その流れが変わり始めた。自分が提案した施策やセミナーが形になりかけているだけでなく、著名な編集者の方から本を執筆するチャンスを頂けた。この背景について考えてみた。
 一つは、上述した天体における惑星の配置の影響を受けて、風の時代に移行したという大きな流れを受けていること。二つ目は、周りに受け入れられなかった下積みの時代に、筋肉を強化するように、関連スキルを継続して磨いてきたことだ。英語力と文章力を磨き、レジュメプロでは、どの依頼に対しても期待をこえる結果を提供することを心がけてきた。英語指導力も、より分かりやすくより面白く伝えるための工夫を知人に週一回教える中で重ねてきた。ワークショップのファシリテーションについても、国内外そして社内外から貪欲にノウハウを吸収し、試してきた。
 三つ目は、私が磨いてきたスキルや経験知を理解してくれる人達との出会いがあったことだ。上述したオンラインブランディングフェスタで総合プロデユーサーの渋谷文武さんが、「1階にいる人から見たら高層階の違うフロアにいる人も同じに見える」と語っていた。つまり、一般の人から見たら高みのスキルの違いは判らないということだ。この壁に長年阻まれてきたというのが、私が伸び悩んできた大きな要因の一つだ。レジュメプロのサービスを例にあげてみるとわかりやすい。質の違いを理解してもらえないと、安価で提供するところに流れる。マーケティングやブランディングも学んだが、力不足だった。そんな中、幸運なことに、2019年、コーチングの神様マーシャル・ゴールドスミス氏から、彼がつくったコミュニティへの参加のお声掛けを頂くことができた。そして、計8名でお互いの夢を応援し合うという活動に参画する中で、自分の夢を言語化し共有したことが大きい。著名な著者、コーチ、TEDでも話したことがあるNPOのリーダー、大手企業で人材育成に携わっている人などで構成されるプロフェッショナルコミュニティーで、お互いを支援するという価値観で集まっているのだからパワフルだ。どう優先順位をつけどう語るかを考えた結果、選んだ夢の一つが、国内外の優れたコンテンツを相互に紹介する役割を担うことだ。それを仲間に伝え、彼らから賛同を得るというプロセスを経たことで、その夢が私の潜在意識にしっかり入った。その後まもなく、マーシャルさんのコンテンツを英語で学ぶセミナーを提案し、それが形になった。そして出版塾に通っても実現できなかった本の執筆も、企画が動き出している。
 私なりに考えた成功の方程式は、「応援される力=時代の変化による追い風のもと、磨いてきたスキル×応援してくれる人どの出会い×出会いを活かす力」だ。磨いてきたスキルがまだない人はどうすればいいのか。それは、夢を持ち、それを周りに自分の言葉で語り、夢に向かって歩もうとしている姿を見せることなのではないかと思う。少なくとも、私ならそんな人を応援したい。実際、職場の新入社員の決意に共感し、応援したい気持ちになった。「世界中の人が自分らしく学び、自分の幸せを見つけていけるよう、がむしゃらに頑張ります!」思い起こせば、私が新入社員だった時は、自分中心で他者のことを考える目線はゼロだった。だからこそ余計にこのピュアで素敵なでかい夢に心を動かされたのだろう。彼の成長を見守っていきたい。
 2020年の10月号で、「応援してもらえる力」と題した記事を書いた。その時は、ドラマ「半沢直樹」や後輩が書いたメールなどを紹介して、正義を貫こうとする姿や相手への心遣いが応援してもらえることに繋がる例を紹介した。今益々重要性が増しているこの応援してもらえる力の続編という形で今回お届けしたわけだが、これからもこのテーマに注目していきたい。

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