関西例会部会
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第155回関西例会 報告

PMAJ関西KP/幹事 吉岡 幸恵 : 4月号

開催日時: 2021年2月26日(金) 19:00~20:30
開催場所: オンライン開催
テーマ: 「起業による新規事業の展開」~世界初のソフトを創出するISV~
スピーカー: 大槻 滋俊 (おおつき しげとし)氏
株式会社シザナック 代表取締役 CEO

<はじめに>
株式会社シザナックを設立された、大槻様にご講演いただきました。
「世界初のフトを創出するISV(independent software vendor)」という心惹きつけられるソサブタイトルにあるとおりの、今回の例会は、前職である、京セラ株式会社時代で培われた経験・ノウハウを糧として、定年前に残る道もありながら、一念発起して起業され、革新的な技術の事例を、動画でもって目にも耳にもすることができました。
後半に伺った、前職時代の現稲盛和夫名誉会長との体験談には驚かされ、また、起業の原点と言われる、京セラフィロソフィーにある「大家族主義」にも触れることができました。

<講演概要>
まずは前職である京セラ株式会社での経歴のお話から。
ここで電子部品の営業部長から自動車開発営業部長になられた、2013年から退職までの期間がとても重要な時期で、ここに今のシザナックを運営していくヒントと大きな学びがあったとのこと。
今につながるその時期の開発についての紹介がされました。

一つ目はスマートシニックレシーバー(SSR)の開発について。
新幹線のホームの騒音の中、大事なお客様から電話がかかり、大切な情報の聞き逃しや聞き違いをするなど、スマホのスピーカーがユーザー目線で課題だと思っていたことから思いつき、スマートシニックレシーバーが誕生。
これを搭載した「よくきこえるスマホ」は累計1千万台を売ったそうです。

二つ目は超薄型スピーカー。
SSRの開発経験をもとに、将来のテレビである有機ELテレビをさらにかっこよくするスピーカーを作ってみようと考え、厚さ2mmのピエゾフィルムスピーカーを世界で初めて開発。
これに関しては、坂本龍一氏から直接電話がかかってきて来社され、木を揺らして音を出す振動スピーカーが欲しいと言われたエピソードも聞くことができました。

そして、株式会社シザナックのお話。
起業からわずか1年で、日本商工会や滋賀県知事の認定事業者に採択されるなど、躍進されています。
リアルタイム画像補正、振動スピーカー、超音波センサ(蝙蝠センサ)触覚通信アクチュエータ、圧電セラミックス センサ・アクチュエータの5つの技術を提供するプロジェクトについて、それぞれ動画を用いてリアルに紹介頂きました。

視覚や聴覚の障害を持たれる方がコミュニケーションできる、触覚通信アクチュエータ(タクタイル)技術然り、移動中にディスプレイを見ることが増える今の若者たちの健康被害を危惧され、目にやさしいディスプレイ画像補正技術(ステイサイト)として、画像補正技術を活かし、また、交通事故より多いお風呂の溺死事故を防ぐため、見守りに超音波センサ(蝙蝠センサ)技術使うなど、社会的な課題に目をやり、持てる技術を解決に結びつけるという、高い志を随所に感じられました。

タブレット、スマホの振動画像の事例動画では、ステイサイトを使わない方の画像を見てほんとうに気持ち悪くなりました。
また、京セラ時代からつながる振動スピーカー技術の紹介では、周波数帯域が広く、音をリッチにしてくれる技術ということで、動画で流れたおしゃれなジャズの音楽には、クリア感がありました。

そして、稲盛名誉会長との体験談。お父様の会社が倒産するという時、なんとかせねばと意気に感じ、京セラ社長に借金の肩代わりをお願いに行ったというお話。
借金を断られ、社長の言う大家族主義とはなにかと食ってかかったこと、そこで呼ばれた上司が意外にもお金をかしてやってくれないかと言ってくれたことなどなど、すっかりお話に引き込まれてしまいました。

京セラのフィロソフィーである大家族主義。
長男があほな末っ子のためにおやじに頼んでくれたという言葉が印象に残っています。

<おわりに>
終始熱い思いが感じられるお話しでした。
最初の方に、「業界、顧客をこえたところ、ユーザーの満足を得るためにやっている」と言われていたことがよみがえり、ほんとうにそうなんだなと感じました。

京セラの経営哲学でもっとも感銘を受けられた、
「潜在意識に到達するほどの強烈な願望を心に抱き、目標を到達せよ」という言葉が、聖書や先人の言葉とともに、今日の起業を支えるものとしてあったことが感じられ、プロジェクトの完遂においては、テクニカルなことだけではなく、潜在意識になるくらい願望し続けるという心を持つことが、成功の要諦であるということをしみじみ思いました。

ありがとうございました。

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