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日本の危機の認識とプロジェクト・マネジメント活用への提言 (11)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 3月号

Z. 3月号のテーマは何かな?
I. 2月号でアベノミクスの経過を書いてきましたが、この時点でグーグルのアベノミクス評価を読んだ。ここでそれらの評価を記載することも考えたが、第三の矢に関する評価が希薄であることに気づいた。このエッセイは論評ではなく、困難な時期に更に何をすべきか提案することだと思い、書き上げた原稿を来月に回すことにしました。
Z. わかった。アベノミクスはまだ急がなくていいのかもしれない。
I. そこで今月号はまだ書いていないグローバリゼーションに対する行動で何が求められているかを優先させることにした。
Z. それは結構なことだな。
I. 日本は1990年製造業世界一となりましたが、その後したことは、土地買収関連の財テクだった。結果は1997年バブル崩壊で、一挙に奈落の底に落ち込んだ。一方米国は1995年に軍用のインターネットを開放し、世界各国にネットワークを広め、いち早くグローバリゼーション活動が出来上がり、勢いを戻した。
Z. その後の日本の活躍はどうだったのかな?
I. 日本はバブルの修復が忙しく、グローバリゼーション対策などなかった。
この間米国の勢いが増し、2000年からIT経営が活発化したことです。IT経営の事例を提供します。
  1. ①「チョイス・ボード」がもたらす革新
    インターネットの発展で米企業は顧客との伝達が容易になりました。デルはPC(パソコン)の仕様を客に任せたことで、客が望む最低機能だけのPCがよく売れ、30万円のPCは数万円まで値下げできたが、顧客数の増加で巨万の富を獲得した。
  2. ②アマゾン・ドットコムは自社の倉庫を自動化し在庫削減に成功
  3. ③セメックスは工事現場を持つ事業所にセメントミックスを要求通りに届けられるシステムを開発し、競争他社を蹴落として中小企業から世界三位の企業に達成
  4. ④製造業の場合生産性の向上は必須の課題ですが、普通の事務関連業務も含めて、資産・コスト・サイクルタイムを手際よく整えることで10倍の生産性向上が達成された。あらゆるものをデジタル化することで10倍の生産性を作り上げた
Z. 私も米国企業のIT経営の話を聞いているが、日本は後れを取っているようだね。理由は何かな。
I. 答えは簡単です。合理化の対象が『モノ』から『コト』に変わったのです。
Z. それはどういうことかな。
I. 自動車産業でいえば、これまでの収益向上は生産性の向上でした。製造ラインは個別機種ごとでしたが、別の機種の部品を間違いなく供給できれば製造ラインがへり、生産性が向上します。供給される部品(モノ)は変わらないが、ラインの仕組みを変える(コト)で、生産性が向上します。これに対し合理化が遅れていた分野が沢山あります。手書きしていた仕様書を、IT化すれば、次の同種の注文は、PCで簡単に作成できる。仕様の変更も簡単にでき生産性が向上する。
Z. それなら日本でも簡単にできるではないか?
I. そこに問題があります。稟議方式ですべてを決めていると、IT経営を幅広く拡大できません。組織そのものを合理化する必要があります。
Z. ITユーザー協会に聞いてみると60%は活動していることになっているがどうなのかな。
I. タテマエはではそのようになっているようです。米国のIT経営ユーザーはITソフトを自社で開発しています。日本は米国企業からITソフトを買って使っています。
その場合航空会社、銀行、証券会社等グローバルなつきあいをしている業界は米国のソフトを買っても支障ないのですが、従来の稟議式経営では米国のソフトは使えません。米国のソフトを買った企業は、以前の日本的ソフトに変えたことで機能が回復したが他は使えなかった。
Z. それは何なのかな!
I. ここにIT経営に役立つ本があります。ERP活用による経営改革があります。まずどのような経営をしたいのか、戦略を含めて自社でITソフトを作り上げる必要があります。 この場合は経営者の戦略、ビジョン等が明確できびきびしたものが求められます。
それからもう稟議制は卒業してください。競争に勝てません。

  1. ①財務省をはじめ、日本国の官僚システムは島国日本的です、古いものが明確に残されています。課が無くなると、わずかでも予算が減るので、行政改革ができません。IT経営は仕組みが簡略化して初めて生産性向上があります。
  2. ②島国日本国は些細なことにこだわる民族です。大きなことには寛容です。都知事選挙出5,000万円借金したことで、現職都知事が非難され立候補を取りやめた。検事正昇格時に、仲間と遊び程度の賭けゴルフ?賭けマージャンをしたと昇格を辞退した。
  3. ③経団連傘下のタテ型組織は競争力に乏しい。日本式タテ型組織は優秀でも忖度のない社員は外され、イノベーションが難しい。
  4. ④最近の新聞で富士通の社員が米国流のJOB型プロジェクトマネジメント方式を実行するため社内募集をすると言っている。日本がコロナで動き始めたのか?
Z. 日本がグローバリゼーションに乗り出すには、まず何をすべきかな!
I. 古い本ですが、簡単な事例として下記本を紹介します。
  1. ①著者青柳六郎太、染村哲也、山本良樹【ERP活用による経営改革の秘訣】
  2. ②著者仲元俊二【アメリカ経営56のパワーシステム】日本企業は彼らに勝てるか

A 【ERP活用による経営改革の秘訣】
第1部 中堅企業と経営戦略
第1章 中堅企業におけるキャッシュフロー経営
 ⅰ)“損益改善”だけでは解決しない
 ⅱ)“時は金なり”―リードタイムをキャッシュに変える公式
 ⅲ)損益改善からキャッシュフロー経営へ転換
第2章 中堅企業における企業価値武装
 ⅰ)中堅企業における企業価値戦略
 ⅱ)中堅企業の企業価値武装狙い
 ⅲ)企業価値としてのEVAの意味
 ⅳ)企業価値におけるROAの意味
 ⅴ)社内の目標管理指標には向かないROE
 ⅵ)企業価値/MVAの考え方と活用法
 ⅶ)企業におけるキャッシュフローの意味
 ⅷ)企業価値/キャッシュフローの考え方と活用法
 ⅸ)キャッシュフローには三つの色がある?
 ⅹ)中堅企業のキャッシュフロー戦略
 xi)キャッシュフロー創造の7つの手段
 xii)財務活動で作るキャッシュフロー
第3章 ERPと販売プロセス革新
第4章 ERP導入と在庫管理プロセス改革
第5章 ERP導入と請求回収プロセスの省力化
第6章 ERPと生産プロセス革新
第7章ERPと物流プロセス革新
第8章ERPと経理プロセス革新
第9章 ERPと経営意思決定支援
第10章EIPとERP
第11章FRP 導入にあたっての組み方

B. 仲元俊二著【アメリカ経営56のパワーシステム】「日本企業は彼らに勝てるか」
   “戦略なき日本企業の終焉”
  著者は川崎重工の営業責任者として23年間
・1990年から米国化学会社ハーキュリーズ社の日本法人代表として11年間
・日米合弁会社の社長も兼任した経験から、今の日本企業や政府の対応の鈍さがあまりにも心配である。
・アメリカが実際に経営している内容を説明する。日本はどれだけできるのか日本人の
 皆さんで議論してほしい。
◎検討項目
PART 1 アメリカ企業とビジネスマン
1) ビジネスマンの社会的地位
 ・自分自身の力でより高い地位をめざす
 ・猛烈に働くエリートビジネスマン
 ・年齢・体型も尊敬の基準になる
2) 効率と能率を重視するアメリカビジネス
 ・長期戦は苦手なアメリカのビジネスマン
 ・有給休暇も「効率」を高める手段
3) 二次元的な思考をするビジネスマン
 ・個人主義の国でも、尊重されるテームワーク
 ・退職後は地域のボランティア活動
4) アメリカ企業に給与は「職務給」が原則
 ・職務給でも年金や経験年数は考慮される
 ・アメリカ企業の人事考課は「絶対評価」
5) 社員の職務給を決定する合理的プロセス
 ・人事考課の結果は必ず本人に開示
6) 上級幹部と専門職の給与システム
7) 職種による報酬の決め方
 ・給料日は週単位で決められ、手当はつかない
 ・税金は各個人が自分で納める
8) アメリカ労働組合の実態
 ・組合は産業・職業単位
 ・団体交渉の方法は排他的交渉単位制度

PART 2 アメリカ企業とCEOの役割
1) 典型的な学歴主義のアメリカビジネス社会
   ・猛勉強に励むアメリカの大学生
2) アメリカ企業のエリート育成法
 ・ハイポテンシャルの選別基準
 ・ハイポテンシャルを見出す人事考課システム
3) ハイポテンシャルから誕生するCEO
 ・CEOを選出する選定委員会
4) CEOは外部からもスカウトされる
 ・毎年増へ続けるヘッドハントCEO
5) CEOの報酬額
 ・CEOと日本社長の報酬比較
6) 高報酬と解雇の狭間にいるCEO
 ・ポストを退けば会社とは無関係になる
 ・アメリカの経営陣は役割分担が明確
 ・役員報酬の3分の2はストックオプション
7) 役員報酬になぜストックオプションが必要か
 ・ストックオプションの欠点
8) 役員賞与の非課税のシステムのメリット
 ・日本役員はなぜやる気がないのか
 ・上位5人の役員報酬を公表するアメリカ

PART 3 アメリカ企業と経営理念
1) 株主のためにあるアメリカ企業
2) 資金調達は直接金融で行う
 ・積極的に会社経営に参画する機関投資家の存在
 ・常に会社業績をウオッチしている証券アナリスト
3) 経営内容を積極的に開示するアメリカ企業
 ・株主に対する姿勢が日本とは根本的に違う
 ・短期間ではないアメリカ経営
4) 内部留保の使い方に見る日米経営の違い
 ・活発に行われる自社株買い
 ・厳しく禁じられているインサイダー取引
5) アメリカ監査法人の役割と責任
 ・情報開示の対応が遅れる日本の監査法人
6) 格付け会社の厳しい企業査定基準
 ・格付け会社の収入元は発行体からの手数料
7) 取締役の大半は社外取締役で占めるアメリカ企業
 ・取締役と業務執行役員は別
8) 多彩な人材から招聘される社外取締役
 ・絶対的な権限を持つアメリカの取締役
9) 強大な権力を持つアメリカの監査委員会
 ・日本の監査役は一丁上がりの飾り人形
 ・取締役削減にようやく動き出した日本企業

PART 4 アメリカ企業の経営戦略と倫理
1) アメリカ企業の戦略決定プロセス
 ・何から何までトップダウンではない
 ・アメリカ企業の営業はマーケティングを中心に展開
2) 商品の販売価格は平等が原則
 ・顧客との力関係で価格を決めるのは違法
 ・アメリカから輸入する場合にも価格に注意が必要
3) アメリカ企業と独禁法違反
4) 収益より倫理を優先するアメリカ経営
5) セクハラは企業の管理責任となる
 ・セクハラの2つのタイプ
 ・セクハラ対策の専門責任者を社内に置いている
6) エイズ患者とアルコール・薬物依存社員への対応
 ・アルコール依存症への対応は詳細な規定がある
 ・アメリカ企業は違法な薬物を排除する義務がある
7) 倫理遵守のシステムが確立しているアメリカ企業
 ・経営倫理委員会が社内に設けられている
 ・倫理違反を防止・発見する「社内管理プログラム」
8) 企業犯罪を防止する「量刑ガイドライン」
 ・社内管理プログラムの要件
 ・倫理違反の多くはルール違反どまり
 ・業界団体の組織にも表れているアメリカの経営倫理
 ・日本の経団連はこのままでは国をダメにする

PART 5 アメリカ企業のM&Aとマネー戦略
1) アメリカ企業の会計基準
 ・時価主義、業績の開示、連結決算の3つのポイント
 ・業績の適時開示と連結決算を重視
2) アメリカ企業のパワーを生むM&A
 ・アメリカ企業はなぜ世界シェアにこだわるのか
 ・欧米主導のM&Aが日本に押し寄せてくる
 ・トラベラーズは日興証券をどのようにしてグループ化したか
3) 5年以内に株式公開するベンチャー企業
 ・ベンチャーキャピタルの86%が個人集団の独立系
4) 欧米の金融機関を襲う再編の嵐
 ・金融大競争を巻き起こす3つの要因
5) 自動車業界の国際グループ化
 ・提携・合併による包括的な乗数効果を狙う
6) 欧米の化学メーカーはコア・ビジネスに特化
7) アメリカ企業の最大金融兵器「ヘッジファンド」
 ・ヘッジファンドはレバレッジ(テコの効果)を利用する
 ・年間41兆ドルを動かすヘッジファンド
8) ヘッジファンドに影響されないアメリカ経営とは
 ・ヘッジファンドの数は無数

PART 6 アメリカ企業の雇用システム
1) 人材採用のシステムが明確なアメリカ企業
2) アメリカ企業の人材募集法
3) 訴訟に発展する経歴照会
4) アメリカ企業と雇用差別禁止法
5) レイオフは経営手法の一つ
6) アメリカビジネスマンの定年
7) アメリカ企業の早期退職制度
8) “肩たたき”を外注するアメリカ企業

PART 7 アメリカ企業と社会保障
1) アメリカの健康保険制度
2) アメリカ民間医療保険の4つのタイプ
3) 通勤途上の災害に労災が適用されないアメリカ
4) 退職金制度を持たないアメリカ企業
5) 企業年金は「確定給付型」と「確定拠出型」の2種類
6) 401Kプランとアメリカビジネスマン
7) 終身雇用が日本企業の競争力を弱らせている
 ・官民あげて作り上げたて作り上げた終身雇用制度
 ・日本は終身雇用政策から脱却

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