理事長コーナー
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DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質
~なぜ今プログラムマネジメントなのか?~

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :2月号

 先月のこのコーナーで、2021年は「歴史的な大きな転換点になると」と書きました。これは誰もが予感していることだと思います。そして、その大きな転換をもたらす項目の一つとして「DX(デジタルトランスフォーメーション)が大きく進展する」ということを挙げる方も多いと思います。
 日本でDXが注目を集めるようになったのは、2018年9月に経済産業省が発表した、「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会の報告書『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』」からでしょうか。「2025年の崖」という衝撃的な言葉が経営者の心に刺さり、大きな議論となりました。
 その議論が展開されているさなかにCOVID-19によるパンデミックが発生し、あっという間にリモートワーク、オンラインセミナー、在宅勤務、オフィスの縮小などが表出し、議論よりも先にリアルのDXが進んでいるかのように見えているのが現状のような気がします。
 DXレポートで紹介されているDXの本質を一言で言えば「市場の変化に対応するため組織、文化、従業員の変革を牽引し、ICTを活用してネットとリアルを統合した新たなビジネスモデルによる新たな顧客価値創出を図る。」ということになります。
 ここで重要なのは、「組織、文化、従業員の変革を牽引し」という部分だと考えています。なぜなら、内部構造の変化を伴わない変革は、やがて内部構造の慣性力に引っ張られて元に戻ってしまう可能性が高いからです。
 歴史を振り返ってみると、戦後の日本の高度成長は、組織を機能別、役割別に縦割り、階層割に分解し、一つ一つの機能部門に、決められたものをより正確により早くより安く作るノウハウを蓄積するという、「機能別組織による高品質・高効率化」によって成り立ってきました。いわば、普遍的な価値観が存在した時代に適応した「定常業務の強み」を活用した戦略だったといえます。
 21世紀に入り市場や個人のニーズが多様化している現在では、多様化する価値観を常に把握し、それらを満足するサービス・製品をタイムリーに企画し、組織をダイナミックに変化させ迅速に目的を達成するという「目的達成主導型」の戦略が求められます。
 日本の現状は、「定常業務の強み」の成功体験から脱しきれずに、「目的達成主導型」業務運営へ移行が進まない中で、国際競争力を継続的に失い続けているように感じます。
 PMAJが「プロジェクトマネジメントの時代へ」をメインテーマに掲げる理由はここにあります。
 P2Mの提唱するプログラムマネジメントのフレームワークに「3Sモデル」があります。これを一言で言えば、「プロジェクト業務と定常業務をサイクリックに繰り返し、継続的な価値創造を実現するモデル」ということになります。
 今の日本に必要なのは、定常業務の強みを捨て去るのではなく、従来の定常業務の強みを生かしつつ、「目的達成主導型」業務運営を強力な横糸として通し、サイクリックな循環を促すことで、新たな価値の創造と提供を継続的に生み出し続けるビジネスモデルを構築することではないでしょうか。これはまさに、プログラムマネジメントの活動であり、今、プログラムマネジメントが求められる理由がここにあります。
 我々PMAJは、このような企業、社会、働き方が大きく変革する時代に対応する、プログラムマネジメントを提唱し、そのフレームワークを提供することで、広く社会に貢献していきたいと考えています。
 2021年のPMAJに、ぜひ、ご注目ください!!

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