理事長コーナー
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プログラムマネジメントの時代へ

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :1月号

 みなさん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 今年は丑年(うしどし)。
 牛には「ゆっくりとかつ着実に進む」イメージがありますが、2021年がCOVID-19によって大きなダメージを受けた世界が、あらたな繁栄に向けて、ゆっくりとではあっても、着実に進む年となることを心から祈念しています。
 2020年を振り返れば、COVID-19によるパンデミックの対応に終始した一年でした。現在も感染拡大が続いていますが、人類は、過去に何回もパンデミックを経験し、それを乗り越えてきました。今回も必ず乗り越えると確信しています。
 パンデミックからの復興の歴史は、常に大きな転換点として歴史に刻まれており、2021年も大きな転換点になると想像しています。そしてそれはプロジェクトマネジメントの領域においても、大きな転換点となるのではないでしょうか。
 「プロジェクトマネジメントの役割が変わる」ということは、パンデミックが発生する以前から言われてきました。「アジャイル」「デザイン思考」「リーン」「イノベーション」など、最近のプロジェクトが対応すべき新たな動向を並べれば、従来のウォーターフォール型(予測型)のプロジェクトマネジメントでは対応しきれないことは明らかであり、何らかの変化が必要であったことは明らかでした。
 ただ、COVID-19のもたらしたパンデミックは、不確実という言葉では表せない、まったく先の見えない状況への対応、昨日までの普通の生活が、突然、何の前触れもなく、打ち切られるという状況への対応が求められる事態を引き起こしました。
 プロジェクトマネジメントは「変化への対応手段」であり、「戦略実現の方法論」だと言われています。その対応は多くの場合、将来のビジョンを設定し、バックキャスティングで現在の進むべき目標を定め、目標を達成するロードマップを計画し、それに沿って実践することで確実に目標を達成していくというプロセスが基本であったと思います。しかしながら、まったく先が見えず、ミッション、ビジョン自体が描き切れない状況では、このような手法では対応しきれません。
 プロジェクトマネジメントの発展を大きな流れでとらえると、限られたリソースのトレードオフのマネジメントから、多様なマネジメント領域のトレードオフをマネジメントするモダンプロジェクトマネジメントへ発展してきたと言えます。その前提には、マネジメント領域の優先順位を決定する、「共通の価値観」が前提としてあったのではないでしょうか。現在の状況とは、その共通の価値観が存在するという前提が成り立たない世界でのマネジメントが求められている、いわば、「価値観のトレードオフ」のマネジメントが求められています。その対応のためには、あらゆる情報を統合して将来を予見する想像力と、不確定な中で進むべき道を選択する決断力、あるいは既存の価値観を凌駕する価値観を自ら打ち出していくイノベーション力といったものが必要な時代に突入しているのかもしれません。これらは、従来のプロジェクトマネジメントでは、プログラムやポートフォリオから降りてくる与件であり、枠組みでした。
 そう考えてくると、「プロジェクトマネジメントの役割が変わる」という認識ではなく、「プログラムマネジメントを中核としたマネジメント」への転換が求められていると考えるべきなのかもしれません。もう少し具体的に言えば、マネジメントを実践する主戦場が「プロジェクト」から「プログラム」へ変わっていくということでしょう。
 PMAJの先達は、その流れを予見したのか、P2Mガイドブック改訂第3版において、P2Mの定義を、従来の「Project&Program Management」から「Program&Project Management」に変え、より強くプログラムマネジメントの重要性を強調してきました。それに伴い、最上位資格であるPMRの名称も「Project Manager Registered」から、「Program Manager Registered」へ転換しています。
 私たちは、この先達の先見性を受け継いで行こうと思います。具体的なアクションとして、その基盤となるP2Mガイドブックを、「実践的プログラムマネジメントのためのガイドブック」と位置づけ、社会に広く提示する準備を今年から始めたいと考えています。
 これからのPMAJに、ぜひ、ご注目ください。

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