例会部会
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『第263回例会』報告

田邉 克文 : 2月号

【データ】
開催日: 2020年12月18日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「多様なプロジェクト経験からの学習」
~PMとして重要な力量とは何か?~
講師: 向後 忠明 氏/PMマイスター ナノカ株式会社

◆はじめに

業種も専門分野も異なる企業の中で「なぜ、プロジェクトマネジャーとしてプロジェクト(PJ)を成し遂げることができたのか?」それぞれの企業におけるPJ活動実例で特にプロジェクトマネジメント(PM)としての活動に影響を与えた行動と、そこで知ることのできたPJの実践において必要と考えられるポイントをPJ経験豊富なPMマイスターである向後 忠明氏を招き話して頂きました。

◆講演内容

講演の前半は、講師のこれまでの40年以上のPJ経験の中から代表的なものがピックアップされ事例として紹介されました。
エンジニアリング会社での石油化学プラントの建設PJの経験や、電気通信会社へ移籍されてからの海外の中央銀行の金融システム開発PJなどこれまで幅広く経験されたPJの事例を具体的にお話し頂きました。順調にいかないPJもありましたが、講師がトラブルシューターとして入られて、PJを成功裡に終えられた際のポイントについて特に熱く語られました。

講演の後半は、プロジェクトマネジャーの力量とは何かを中心に、PJを実践した際の重要なポイントと、具体的な問題解決アプローチを説明して頂きました。
これまでのPMと課題解決型PMの違いはPJ立ち上げ時の上流部分にあり、従来は顧客要望を元に契約ベースで始められていたものが、近年の課題解決型PMでは、曖昧/観念的な要求に対して、論理的思考を用いて解決することが求められていると指摘されました。
そのような課題解決型PMを進める上で必要な資質として、下記の2点を挙げられました。
  1. ① 未知の課題に対して物事を俯瞰的に捉え問題を認識し、解決できる共創力を発揮できる。(<課題解決型アプローチ>)
  2. ② プロジェクトマネジャーとして、チームを率いる組織編成力や、パーソナルに関わるマネジメント力を持っている。(<実践力とプロジェクトマネジャーの行動特性>)
 それぞれの内容は下記の通りです。
<課題解決型アプローチ>
  • 現状分析
    ①観察・情報(ありのままの姿)、②状況分析(ありたい姿)、③原因の追究(なぜ)、④仮説課題の抽出(施策の方向性)、⑤ギャップ分析(SWOT分析)
  • 課題設定
  • 目標設定(SMARTの原則)
  • PJ要件の定義
<実践力とプロジェクトマネジャーの行動特性>
  • 実践力は、プロジェクトマネジャーの個人に付随する特質であり、高いパフォーマンスを発揮する源泉となっている。
    実践力の源泉として以下の3点を挙げられた。
  • 認知力・・・全体的視点でかつゼロベース思考で独自な発想(感性)で事象を見える化、具体化できる。
  • 見識・・・深い知識・経験/自分なりの価値観から洞察力豊かに物事を判断できる。
  • 行動・・・プロジェクトマネジャーとして的確でステークホルダーも納得できる行動ができる。
認知力は、全能思考とも言われ右脳で感じて、左脳で理解し、その総体として見識ある判断を元に人を動かす思考形態である。全能思考に基づく行動(行動特性)には、責任感、倫理観、誠実性、多様性からなる自己規律があり、自己規律は人としての基本特性で人として持っていなければいけないものである。

◆まとめとして
PJの成否は、規模に応じたPM組織の編成が必要であり、そしてその組織を支援するPMOのような組織が必要となる。但し、人を集めればよいのではなく、成熟した専門の人材を集める必要がある。PJは命題に対して、知識・経験を得て、認知・見識・行動力を備えた実践力をもって成果に結びつける。そして、そのベースに自己規律がある。
今日の講義の中でPMそのものの技術の重要性を取り上げていないが、PMの知識は前提であり、その上で実践力を働かせることでPJを成功に導くことができるという説明で、講演は終了となりました。

◆執筆者所感

講演を聞き終えて、講師の豊富な経験を元とした求められるプロジェクトマネジャーの人間像のイメージを持つことができました。マネジメント技術もさることながら、人間力がプロジェクトマネジャーには必須の能力、また、資質であると改めて認識しました。資質/素養を後から短期間で鍛えられるものではございませんが、その点を意識して業務に取り組むことで、徐々に自分のものとしていくことが必要だと思いました。今回参加された皆さまは、どのように感じられましたでしょうか?

例会では、今後も引き続きプロジェクトマネジャーにとって有益な情報を提供してまいります。どうぞご期待ください。
以上

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