投稿コーナー
先号   次号

日本の危機の認識とプロジェクト・マネジメント活用への提言 (9)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 1月号

Z. Iさん、1月号は下記3テーマが課題になっていたがどうするかね。
I. その通りです。最初は(1)ですが、12月号で多くを報告したので、今回は別の角度からアベノミクスを見ることにしました。それが
( 2 ) 官僚組織のアベノミクスへの対応:
「通貨」で読み解くこれから7年「先読み!日本経済」榊原英資著
( 3 ) 「日本をダメにした財務省と経団連の欺瞞」三橋貴明著
( 4 ) 「経済ニュース」は嘘つく!日本経済の真相【高橋洋一】初版2014.5.
( 5 ) 消費税という巨大権益【大村大二郎】初版2019.4.
( 6 ) 「上級国民」・「下級国民」【橘玲著】初版2019.8.
です。
しかし、今月号は(2)だけに絞って検討します。

( 2 ) 官僚組織のアベノミクスへの対応
本テーマに関連する書籍が下記出版されています。
以下を『渡辺 貢成』が読み、コメントを付けます。読者も一緒に検討してください。
ここで一つ提案させてください。世界中を見渡すと種々の観点で経済政策をおこなっています。ここでは2つの流派に分類されると考えました。


Ⅰ派:国民が豊かに、安全に暮らせる経済を望む

Ⅱ派:自分一人が得をするならば、自分以外の国民が貧困化しても構わない


これを頭においてご検討ください
( 2 ) 官僚のアベノミクス対応
「通貨」で読み解く、これから7年『先読み!日本経済』【榊原英資著】 初版 2013.12.が出版されていました。

今回はここで前政権から安倍政権に移されて以降の変化の報告と
前政権が実施した内容を評価してみることにしました。
最初はアベノミクスの実践記録とこの図書①を比較して、何が問題であるか検討することにした。
1 ) アベノミクスの概要と実績
第一の矢:(金融を緩和する):長年デフレ状態が続く現状で、大胆な金融政策を実施する
  ため、民主党が決めた消費税8%増税の延期を宣言し、{緩やかなインフレ率2%}を目指し、実行された。そして2年後は満点ではないがインフレ政策が功を奏した。アベノミクスの勝利

アベノミクスは前政権が実施したデフレ状況を解消するために、第1の矢で「緩やかなインフレ率」で緩やかにデフレを解消する政策をとった。それは世界中の諸国での常套手段だからです。
これに対し、榊原氏はアベノミクスの言うインフレ目標2%はナンセンスで、デフレを無理に解消することはないという見解。対決1

榊原氏の主張と実践した状況報告
第一の矢で日銀が決めた金融緩和政策は
消費者物価前年度比上昇率2%(物価安定の目標)を、2年程度にめどに実施し、早期実現をめざした。
年間60~70兆円のマネタリーベエース(資金供給量)増加を目指す金融市場調整)
長期国債買い入れ拡大(年約50兆円に増加)と年限長期化(3年→7年)、
ETF株価指数連動型上場投資信託)やJ=REIT(不動産投資信託)の買い入れ拡大など。黒田総裁は「戦力の逐次投入はしない。現時点で必要な措置をすべて講じた」と強調。その結果為替レートは12月11日に1ドル80円前後から100円前後まで、1年でほぼ20%に近い円安ドル高になった。日経平均株価は12年11月で9,000円前後から15,000円以上1年で60%の株高になった。

第2の矢の「財政出動」は国民に納得しやすいと榊原氏。
  財政出動には日本のインフラの老朽化があり、オリンピックで、財政出動は容易です。第2の矢は大いにやるべしという榊原氏のコメント握手

第3の矢は「成長戦略」の焦点が定まっていないから課題が残っている。
  という榊原氏のコメントは同感である。
・安倍総理に断固として法人税減税を求める。

榊原案の現時点での対策は従来からの日本人が取る対策である。島国日本人の心配性を受け入れた説である。彼の説明は第一の矢で実施した程度で、デフレは心配ないと言っている。しかし、これは消費税8%増税を当てにして、打った手で、デフレ対策をしたといえるのではないか?逆に言えば消費税を取りさえすれば心配ないよというものかもしれない。

では今回の論理で感じたことは、彼はグローバル対応的人材でないということである。日本が製造業での優位性を求めれば、世界一の特徴は何であったか考え、前進を勧めるべきであったはずだ。日本の生きる道は数多くあったはずである。

韓国は日本の現状より厳しかった。だが日本は韓国に負けてしまった。韓国は日本の良さ、悪さを調べてグローバリゼーションへの対応を考えていた。
しかし、日本の経団連と官僚は「高偏差値人材が最高の人材」という日本国的概念で団結したことで、国家運営で勢力を伸ばせたが、逆にグローバル政策では有効な決定をしていない。アジア族にも負けている。それは発想が日本的だからである。国は大企業に私の推定では400兆円の減税をしている。この金は大企業の従業員の報酬を支払わずに、懐に入れてしまったもので、大企業の収益ではない。発想がⅡ派的発想であることを明確にしたともいえる。更にうがった見方をすると、「タックス・イーター」という図書の図0-1を見ると日本は1990年(製造業世界一となるまでは、一般会計税収と歳出総額の差は10兆円であった
日本国の乖離する税収と歳出
が、それ以降その差は60兆円となった。2000年~2015年までの差額は555兆円である。この15年間の余剰金が400兆円ということは、国債の利用が官だけであったため、ゆとりの多かった予算を組んだことがわかる。この時期に官は民間人の貯金から、官の持ち物に代わってしまった。官はこれらのプロジェクトの会計監査はできるが、外部の監査ができない以上、国民は泣き寝入りしか仕方がない。更に欲をかいて、低収入者からも税金をとる手段を考え、高偏差値人種の格上げをもくろんだのかも知れない。これを減税として懐に入れると、意図的な犯罪に近い。「オレオレ詐欺は年間400憶円弱の損害であったが、経団連への減税は過剰予算の収益といえる。それだと減税詐欺は年間34兆円となる。アベノミクスで上げた案件だけでGDP600兆円をめざすには、過剰予算プロジェクトを調査する必要がある。
この対策としてはGDPベース採用からGNPベースに切り替えるのが望ましい。GNPは海外での生産を含めた数値だから簡単にごまかしはできない。GNP採用を主張したのは同志社大学大学院ビジネス研究科浜矩子教授である。浜教授は2013年『「老楽国家論」反アベノミクス的生き方のススメ』、2016年「アホノミクス完全崩壊に備えよ」を出版している。

財務省政策を眺めると日本人の報酬が下がり、韓国、台湾、ベトナム以下になるに相違ない。経団連の安易な政策は、Ⅱ派政策に属し、下級労働者的位置づけが日本社会に迫っている。
 本件も焦点が定まっていないと危険であることは忠告に値する。
このタイミングで消費税増税は警戒である。同感
準備不足でTPP交渉は避けるべきである。  同感
アベノミクスは規制開放を実施せよ。  地域開発は規制開放が求められる
渡辺私案 財務省と経団連の政策は従来の日本的な発想から離れて、昭和時代の官僚に備わっていた【ノブリス・オブリージュ】が見当たらない。

結論、榊原氏は国債と消費税を使って過剰なデフレを救ったという感じがする。結果として日本国はビジネスで収益をえる機会を逃し、国民から集めた金で、その余剰金を大企業の減税に利用したという意味ではⅡタイプ派の勢力が増している。
Ⅰタイプ:国民を豊かに、安全に暮らせる経済を望む方式
Ⅱタイプ:自分一人が得をするならば、自分以外の国民が貧困化しても構わない
再度お聞きしたい。あなたはⅠ派を望むか!Ⅱ派を望むか?

この分類からするとアベノミクス派はⅠ派であり、消費税派はⅡ派である。
私が参加した某町地域再生協議会は雀の涙的予算で地域再生を狙ったが、学校や町舎の雨漏りの修繕費用の捻出もままならなかった。この結果校舎の改築はなされず、大企業への減税に利用された。

しかし、私が参加した地域再生協議会は多くの協議会が現状の規制を守りながら組織の持続的維持可能性を求めるために、参加者は基本的に無報酬で、成果を出すには個人的負担が多くなっているが、持続的維持可能性はできていない。
しかし、日本人は何かをやらせると現場対応能力に優れ、向上心があり、そこに喜びを見出している人が多い。残念だがトップが変わらないと何もかわらない。

本エッセイの歴史を振り返る:
第一期: 平成の30年は1997年までの財テクと中流の上というウルルンからバブル崩壊に突入した。ルンルン→近絶望
第二期: 2000年から2010年
バブルの収拾に国債の活用で多くの企業が救われたが、元気を出すまでに至っていない。国債活用が日本をダメにしたように思う。官僚と経団連の人材不足で、国債中毒で経営者に覇気がなく、世界一の遺産を成長させる人物がでなかった。
2000以降の課題はIT経営であった。ここではITコーディネイションとプロジェクト・マネジメントが盛んになったが、経営トップが新しいものになじめなかった。
IT経営で日本人の経営者は独自のアイデアを出せなかった。
第三期: 東日本大震災と新しい世界に向かっての競争に経団連エリート経営者から、リーダーの出現がなかった。
この時期に安倍政権が出現し、画期的に活動し、アベノミクスが出現した。
この発想は今までにない素晴らしい発想で進められたが2つの問題があった。デフレ打開策が主となって進んだ。ここで財務省と経団連のなれ合いが、進み、日本再生のアベノミクスとの軋轢が生じた。
第四期:
アベノミクスの展開: 第1の矢でアベノミクスと消費税の対立
上級国民と下級国民という意識の台頭
アベノミクスの第三の矢の脆弱な提案:クールジャパンの積極的活用が求められながら、個別案件で地域自治体の規制を打破できなかった。
私のお願いはPMAJが他の組織と合弁活動して、第五期の主役になる活動が必要だと考えられます。
皆様方の発展をお願いいたします。

2月号以降は以下を検討します。
(3)「日本をダメにした財務省と経団連の欺瞞」三橋貴明著
(4)「経済ニュース」は嘘つく!日本経済の真相【高橋洋一】初版2014.5.
(5)消費税という巨大権益【大村大二郎】初版2019.4.
(6)「上級国民」・「下級国民」【橘玲著】初版2019.8.

以上

ページトップに戻る