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日本の危機の認識とプロジェクト・マネジメント活用への提言 (8)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 12月号

Z. Iさん、コロナ対策等種々あるが、私は今日本の現状が心配でならない。
特に下記3テーマが課題だ。
( 1 ) 第一が安倍政権の退陣とアベノミクス今後の展開
( 2 ) 官僚組織のアベノミクスへの対応
参考図書
財務省と政治:「最強官庁」の虚像と実像【清水真人著】
「通貨」で読み解く これから7年『先読み!日本経済』【榊原英資著】
「タックス・イーター 消えていく税金」       【志賀 桜】
「上級国民」・「下級国民」              【橘玲著】
以上は12月号に掲載する。今回執筆するテーマです

( 3 ) 「日本社会のしくみ」、「社会を変えるには」【小熊英二著】(来月検討)
現在の日本企業の業務遂行体制は日本式タテ型組織です。
日本の内容は「終身雇用」、「年功序列」、「部門別タテ型運営」組織

欧米はジョブ型組織:組織に空白ができると社員募集をし、企業が要求する業務でどの程度の成果を出すか契約し、入社する。1年後、2年後の成績向上が認められると継続が約束される。
コロナ発生で分かったが、これからの新しい業務遂行形態の検討

ここでの問題点は日本が国債の発行に胡坐をかいて、危険なしごと、難しい仕事等をしなくなった。その弊害と前向きな姿勢を出すための方式検討
正月号のテーマとする

( 4 ) 新しい将来像の研究
グローバリゼーションに関連する研究開発 へのアプローチ
これから始まる「新しい世界経済」の教科書  【ジョセフ・スティグリッツ著】
「自立国家」日本の創り方 100年後も繁栄する国にするには?【北野 幸伯】
以上が2月、3月号

I. 私の心配事も上記と同じです。そこでZさんのテーマを下記に変えてみました。
( 1 ) 安倍政権の退陣とアベノミクス今後の展開
これまでの経過報告と問題点の報告
アベノミクスと日本国官僚の見解の相違
官僚制度に対するお願い

( 2 ) アベノミクス遂行最初の経緯とその結果
ⅰ)安倍政権のアベノミクス提案と財務省との確執:
アベノミクス実施に対し、国債の活用は信用できる官しか使えないという日銀法によって、最初拒否された
これに対し、アベノミクス側は米国駐在のイエール大学浜田宏一名誉教授の力をかりて、国債活用が可能となった。アベノミクス側の勝利
アベノミクス第1の矢(金融を緩和する):大胆な金融政策を実施するため、民主党時代の政府がきめた消費税8%増税実施の延期を宣言し、{緩やかなインフレ率2%}をめざして実行され、2年後満点ではないがインフレ政策が功を奏した。アベノミクスの勝利
アベノミクスが基本的に定めていたのは「緩やかなインフレ率」政策で、これが順調に進めば、次にアベノミクス案件を実施した大企業がその収益の中から社員の昇給を実施するか、別案件の投資をすることになっていた。この方式は社会へ現金が出回ることで、景気回復が活性化され、景気回復が早まる案として期待されていた。
ところが大企業はこれに応じなかった。それだけでなく、この時期に財務省は消費税8%増税を実施した。ここで国民は財布の紐を締めたことでゆるやかなインフレ率の効果がなくなった。財務省はアベノミクスに対する負け戦を勝利に導いた。財務省の勝利
財務省は更に大企業が中間的に確保していた、利益+余剰金(社員の昇給その他)のうち余剰金を社員に配布せず、逆に減税を勝ち取った。財務省の大勝利
この結果日本の給与所得者は2000年から2010年まで同一賃金が決定され、尚且つ日本は米国と並んで世界一低い最低賃金法を確立し、失業者は世界一低い賃金で生活することになり、官僚、大企業群の上級国民はより高度な報酬内容を確保した。
 注:橘玲著「上級国民」、「下級国民」の告知が真実味を増してきた
日本のキャリア組官僚と経団連傘下の大企業群の幹部は「上級国民」に位置付けられ、それ以外は下級国民になることが決定されそうである。これはキャリア組官僚の長年の念願である明治時代の勅任官に匹敵する報酬の確保に一歩前進した。逆に今後非正規社員の増加が見込まれ、彼らは世界一の最低賃金で下級国民の仲間となり、国民は希望のない時代が来るだろう
アベノミクスは次に【消費税10%増税】の延期をつげず、
第二の矢(需要をつくる):機動的な財政政策の実施「緩やかなインフレ政策継続」
2年間のインフレ政策でアベノミクスの勝利
インフレ後の大企業社員の昇給、乃至は適切な投資事業の発足がなされなかった。
大企業へはトータル400兆円規模の減税
アベノミクスは次期政権に引き継がれるが、それはさておき、1997年以降のバブル崩壊後不景気の連続であったが、大蔵省、その後の財務省はデフレ政策を堅持していた。そこで彼らは、このままでは財源がなくなるという理論で『今は国の危機である、国の危機に対し国民も同時に歳費負担に参画してほしいと訴えた。税金は全国民に平等になるように、消費税という形で納めてほしい』と頼んだ。このキャンペインはマスコミを通じてその合理性を大々的に行った結果、国が困っているなら協力しましょうという国民が50%現れた。
皆さん、この宣伝はおかしくありませんか? “国債は官の事業にしか使えない”と決めたことによって、国が国債を国民のために使うから税金の支払いに協力せよと変わってしまった。官が使う国債は国民の資産であって、国民は債権者であったが、「官の勘違いで」、国民が債務者扱いになってしまった。私はこれを認めさせる官僚の狡猾さと、これに応じる国民のおろかさに、絶望感を覚える。
第二の問題点は1990年に製造業世界一になった日本は、一般会計税収60兆円、歳出総額70兆円が日本国の正常運営値であった。バブルの崩壊で企業倒産が多く出るはずが、国民の財産1,000兆円を官が自由につかう権限を法令化したことで、製造業世界一1990年の日本の歳出総額70兆円、一般会計税収60兆円という正常運営費では経営できず、2009年には一般会計税収40兆円、歳出総額100兆円となり、60兆円が持ち出しとなっているが、第二の矢は「需要をつくるである」。需要を作らず、大まかに10年間で400兆円(年間40兆円)で、需要拡大に使う予定の国債だと思う)。しかるに、債権者への挨拶がないまま推移している。これを正確には需要拡大の予算であって、企業が懐に入れれば計画的詐欺行為である。「私たちは日ごろオレオレ詐欺に遭遇し、その金額が年間400億円弱と公表されている。アベノミクスは国債を使ってインフレ率を2%目当てで収益を得ている。この金は日本国民が有している国債が生んだ金で預金者の国民に属するものである。減税した剰余金は国の権利ではなく国民への返還金として取り扱うと、10年間で400兆円が返済されることになる。この際国に対する要望は杜撰な会計監査ではなく、複式簿記による会計監査を要求する。国民に複式簿記を要求し、私どもは今まで「複式簿記の経験がありませんでは済まない。
私たちは官庁組織に対し、会計監査以外にも種々な疑惑をもっている。
最大の課題は原発事故の責任に対する議論がなされていない。米国は大統領が責任者で、オバマ大統領は福島原発事故で、救援に駆けつけてきたが、東電が不要と断った。まだ、責任者が明確でない。
官僚組織の中の研究活動は大きく行われているが、海外各国が実施している年間の研究成果を定量的に示すことを要求していない。外国では契約時に成果を査定し、継続か、中断か決める。日本は不正をしないことだけが明確な査定条件のようである。産総研を例にとると、1000憶円の研究費から特許がとれたもの数件と特許で収益があったもの1件というもの。これではビジネスにならない。
榊原英資氏は緩やかなインフレ派ではなく、消費税派であるが、アベノミクスに対する評価は5段階評価で「5」であると評価した。アベノミクス第3の矢「成長戦略」を①規制改革の推進、②イノベーション・IT政策の立て直し、③経済連携の推進、
④責任あるエネルギー政策⑤地球温暖化対策の見直し、⑥産業の新陳代謝の促進、⑦若者、女性の活躍推進、⑧攻めの農業政策の推進、⑨資源確保・インフラ輸出戦略の推進、⑩クールジャパーンの推進 とあったが、上記の案件を実施するなら、デフレ政策ではないことに矛盾がある。
私は日本国が変えるべき基本があると思う。
第一が日本の契約概念で、世界に通用しない。日本は国内外でのダブルスタンダードを廃止してほしい。
欧米の契約はA(発注者):B(受注者)は契約上平等である。因みに国内の契約は「甲と乙」という上下関係で甲が有利になっている。先進国がすることではない。これでは国際的な権威がさがる。
人口減少でありながら、女性の有効活用を実施していない。コロナ対策で女性活用の意義を見つけた企業が多いはずではなかったか。
残業をしなくてすむ、企業組織の構成と、有効な時間活用ができる組織運営の開発(終戦後からほぼ変わっていない運営方式の改善策の実施)

Z. アベノミクス案件での補足資料:図表「日本国の乖離する税収と歳出」
(1-1)日本国の政治運用形態が二つあるように見えます。
i ) アベノミクス派と財務省派を主軸とする官僚組織の争議です
抗争の内容:図表参照(図表1 日本国の乖離する税収と歳出)
A派:アベノミクス派
C派:官僚派はこの場合Cの役割を果たしています。
☆物語: アベノミクス実施以前の官僚機構内部では国債を利用運用できるのは日銀に限定されていた。そこで安倍政権は国債発行の権限は時の政権の政策遂行権のなかにあるとして、官僚機構と戦った。安倍政権側は(米国の力を借りて)イエール大学浜田宏一名誉教授(白川に日銀総裁の恩師)の説得で、政権側が勝利した。
ii ) 官僚機構の狙い:バブル崩壊後の日本国は簡単に破産企業を取り扱うと、災害大国日本は災害発生時に対応できなくなる。そこで官僚機構は適宜国債の利用をできるだけ公平に使った。この際国債活用の権限を確立した。図A「日本国の乖離する税収と歳出」に年度ごとで相違する税収と歳出が明確に示されている。
下記は製造業世界一であった日本国の一般会計税収と歳出総額(1990年)の差額10兆円を基本的ベースと考え、その後の各年度の差は国家が国債を使ったと考え、その活用方法をどのようにするか考えてみることにした。
日本国の乖離する税収と歳出
各年次の税収・歳出・その差額 最右翼はその年のGDP値
 
上表は各年次の税収・歳出・その差額 最右翼はその年のGDP値です
税収が少ないことを示している(民間の仕事が減ったことを意味する)
税収が少ないため、歳出に国債が使われている。
差額は単純に歳出から税収を引いたもので、2000年から2015年までの差が
715兆円、基準の10兆円を刺し引くと、160兆円減で555兆円となる。
年平均では約35兆円超過である。
言葉を変えると、年間35兆円の金が税金予定金を大企業に減税で渡してしまったことは、新規プロジェクト案件の開拓なしに、国債がまるまる収益として渡したことになります。
なお、急遽データを集めて、検証しましたので、疑問があれば、ご指摘ください。

以上

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