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日本の危機の認識とプロジェクト・マネジメント活用への提言 (7)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 10月号

Z. 9月号ではアベノミクス成功のカギは3つの矢を正確に打ち込むことだな。
I. そうです。
第一の矢: 大胆な金融政策(中央銀行が市場にお金を供給する量を増やすことでデフレから脱出する方式)
第二の矢: 機動的な財政政策(市場のデフレ予想を緩やかなインフレ予想へと転換する方式)
第三の矢: 民間投資を喚起する成長戦略の実施(新ビジネスを構築する努力が必要)
Z. これらの政策は成功したのかな?
I. 安倍政権は自信満々にスタートを切りました。ところが日本銀行からクレームがつきました。最初に日銀法で、国債の活用は官に関連ある案件にしか活用できないという規則で拒否された。それに対し、イエール大学名誉教授浜田宏一氏の説得で民間でも国債が使えることになり、安倍政権は次の消費税増税を延期すると発表し、改めて緩やかなインフレ率向上の手続きができた。
『ここで緩やかなインフレ率政策の手法を話します。緩やかなインフレ率政策を実施するのは、信頼性のある大企業のビジネス案件プロジェクトを開始し、2年間実施し、その効果を確認します。その効果とは当該プロジェクトに予定された利益が確保されたことを意味します。そこで緩やかなインフレ率の場合には、当該大企業がその利益に見合った収益分を社員の昇給に使うか、別件の投資をし、緩やかなインフレ率を継続(サステイナビリティを確保しながら)させることです。
Z. それができれば、アベノミクスは大成功だな。
I. ところが海千山千の財務省です。アベノミクスが収益あげるのを見るや、2年目に8%増税を要求してきました。
Z. アベノミクスの案件が利益を出しているから結構じゃないの。
I. とんでもありません。利益が出たのは大企業で、この企業が自社の社員の昇給を実施するか、あるいは別件の新規案件に投資をすることで、市場に金が流れ込み、インフレ率が上がるわけです。大企業から「社員への昇給」、「別案件絵の投資」等の情報がないと、国民は3%(5%から8%へ3%の増税)以上の節約を実施し、結果的に納税+αの節約をするので、デフレ感がさらに強くなります。
Z. いわれてみるとその通りだな。それでは財務省の勝利ではないか。
I. この現実がわかったアベノミクス実行者は財務省が要求している10%増税をデフレが増したと判断して、インフレ率達成までは当分増税を延期すると通告しました。
Z. それでどうしたのかな。
I. マスコミから突然「例年実施していた花見の会は違反行為だ」との報道が新聞紙上をにぎやかにさせました。
Z. 閣議で決まった次期検事総長は検察庁人事で黒川東京検事長の定年を延期して、検事総長に任命する話が出ていたが、黒川氏は賭けマージャンをしていたことで辞任し、林名古屋検事長が東京検事長になる。閣議で決めたものが賭けマージャンを理由で否定されるとは何かおかしいね?賭けマージャンしないマージャンなど成り立たないが、マスコミが騒ぐと事態は厳しくなるね。
I. 消費税10%増税の延長を決意していた安倍総理が反対をしなかったため、実施されました。その結果今回も社員への昇給、別案件なしで、緩やかなインフレ率を構築することができませんでした。
Z. こまったことだな。日銀白川総裁は民主党の案件はすでに実施していたものだが、東日本大震災でこの案件の実施を遅延させたが、今忠実に実行したことを、本人が辞任するまで主張されていた。マスコミが【森友、加計問題、お花見接待】を持ち出すと事態がやかましくなる。このような事態になるとマスコミはシャカリキに嘘の情報などをふくめて、もっともらしい真実を作り出し、宣伝をはじめる。報道者は無名で真実と称する出来事を追及するが、反論者は自分の名前で説明する。追及側が3件ものそれらしい課題を提起すると、議論は追及側をますます有利にさせるので、反論側は、必ず口を閉ざしてしまう。
I. しかし今新総理が新しくスピーディーに動きだしているから、国民がもっと応援すべきと思います。
だが、困ったことがあります。私も地方の住民の一人ですから、アベノミクス案件に関与したことがあります。
わたしのケースは小さな町の話で、取るに足らない案件に過ぎなかったのですが、町ではアベノミクス地域再生組織を立ち上げ、
町の新しいテーマを探し、優先順位をつけて、戦略・企画・計画を都市開発専門家に委託して総合計画を策定しています。
地域開発再生協議会を設立し、案件ごとのプロジェクト・チームを設立し、PDCA案を策定し、町役人と町民ボランティアの合同でプログラムを運営しています。
ここにいくつかの課題があります。
A. 案件策定を町で行い、県でチェック検討し、官へ提出し実行予算をもらい、実行します。専門家が作ったテーマを役人が作り上げていくと、案件が小さくアベノミクスで策定した大きなテーマになりません。アベノミクスが望んだことはいままでやったことのない大きなテーマを出したかったのですが、そのためには官公庁が実施していた規制の範囲を超えた(超える工夫をした)案件で提案しましたが、町はそのような大それた案件は提案できないと拒否されました。規定破りが民間の責任範囲です。町の役人はそれができないのです。規制を越えないのであれば活動しても意味ありません。
B. 国が望んでいる案件は、これまでの規制の範囲を超えたテーマで、そのテーマは特別区をつくって実行させる。規則やぶりをしないと、ビジネスにならないよと書いてあります。
C. ところが町の職員、県の職員は規則違反などという案件づくりは無理です。それは彼らの権限の領域の問題です。言葉を変えると、あなたの権威を脱ぎ捨てて、新しいテーマをつくれというのか!という抵抗にあいます。
D. このために、町や県から規制案件を提案させることができなかった。
E. それでも大型案件として国レベルのテーマを入れることでアベノミクスの形をつくることにしました。しかし、規制が張り巡らされた体制の中で、その案件を実行すると、悪いことをしたわけでない既得権益者との対立がおこります。無理して実行すると森友、加計問題になってしまいます。
F. これらの案件を取りまとめできる団体はプログラム・マネジメントの専門家で、縦割り組織の運営者では運営できません。タテ・ヨコの立体構造と時間軸を入れた案件を構築すると新しい発想が生まれるはずです。
G. 世界的に見て農業はこれからの産業といえます。日本では農家の高齢化で遊休農地がどんどん増えています。宅地、農地を含めて遊休地、遊休地候補を対象に期間限定の所有権権利書をつくり、その権利書を利用して、リフォームや、売ることもできるようにします。目的は今の小区割り物件を時間の経緯の中で大規模化していく努力をします。行く末は大規模なIT農場の構築ができると格安な農業製品がこの土地から生まれます。アベノミクスの長期的な農地活用を通じた大規模化農地で規制を緩和させる課題に取り組むと、見えなかった課題見えてきます。アベノミクスが達成できる範囲をきめて、仕事をうまく進めてほしいと思います。
H. また、世界中の人々が日本に来たがっています。従来の日本は「日本良いとこ、一度はおいで!」方式のビジネスです。それでは視点が日本人に通じても、外人に通用するかわかりません。クールジャパンを自転車で走っている外国人がほめる場所が日本人と異なっています。北海道、瀬戸内海の島々や潮の流れとそこで取れた魚類のごちそうだけでなく。彼らの楽しみがどんなところにあるのかを、研究し、新しい企画案をつくることが重要です。時には投資をお願いしてください。今の日本人の発想から離れた彼らの審美眼を吸収することも価値が高いビジネスマインドだと思います。
I. 現在の世界はこれから益々グローバリゼーションが活発になりますが、「1%の富裕層が99%の収益をえる。99%の人間が最低賃金で暮らすといわれています。
この未来に抵抗して春先に来日したジョセフ・スティグリッツ教授が安倍総理と会談し、これから始まる「新しい世界経済」の教科書」を手渡して帰りました。この経済学書は経済学書でありながら幸福論を論じています。幸福はお金が生み出すのではなく、中間層の人々に投資し、金の流れをよくし、人々に幸福感を与える社会をつくるのだというものです。 日本人の本音は少しの貧乏でも、努力して幸福になるならそれでいい、という発想に敬意をおくります。

Z. アベノミクスは緊急に取り組んだプロジェクトだから、未熟な点があるだろうが、この辺で10月号を終わらせたい。
11月号は日本の組織の現在の欠陥や日本人の発想に大きな欠陥があるというテーマを宿題としたい。
I. すでに各組織の問題点は説明してありますが、再度危機に直面している課題について考えてみたいと思っています。

I. 私が感じている日本組織の課題を追及します。
タテ型組織と肩書尊重組織(経験主義だけに頼る組織の変革)
本件は19年度12月号に記載ここでは概要を述べるにとどめる。
企業の分類:大会社型20%、地元型30%、残余型:近年増加
終身雇用…メンバーシップ型:ある種の専門分野はあるが、3年に1回ローテンションで職場を移動し、経験を積み職場の秩序に貢献する。
ローテーションが終わると、係長、課長、部長と昇格し、定年を迎える。
組織では個人の成果も評価するが、和の精神が重視される
組織は報酬より肩書を重視する
報酬は年功で決まる。実力の差が評価されない
成果主義がだせる組織の在り方:プログラム・マネジメント方式の採用
欧米流組織で個人の能力と成果で報酬が決まる。日本では少数派
官僚組織の社会主義化への推移(世界観の薄い、エリート組織の持つ危険さ
世界一低い最低賃金法の導入と移民対策への検討
官僚組織は日本国のエリート集団として特権意識が向上してきた。

以上

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