投稿コーナー
先号   次号

日本の危機の認識とプロジェクト・マネジメント活用への提言 (6)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 9月号

Z. I.さん、8月号では日本国のグローバリゼーションへの対応に関する話をしたかったが、たまたま、日経新聞に“サステーナビリティ経営の推進”の提案があった。内容はSDGs(持続可能な開発目標)がテーマで、国連が主体で決めた17の目標があるということで、17条を列記してみた。そこで今月号では日本のグローバリゼーションと比較してみてくれないかな。

I. 本件はこれからの重要課題かもしれませんが、我が国のグローバリゼーション対応を調べていましたので、それを緊急課題とさせてください。
Z. それは好都合だった。それを優先事項としましょう。
I. ありがとうございます。
( 1 ) ここからは製造業世界一を確保した日本が、それ以降実施した政策の説明です。
1 ) 1990~2000
日本は1990年に製造業で世界1となりました。1991年にソ連が崩壊しました。日本人はこれまでは中流に甘んじていましたが、ここで国民は中流の上だと自負し、財テクをはじめました。ところが1997年に突然バブルがはじけました。突然の異変で大混乱になりましたが、国債の発行等の措置で混乱を沈めました。
この混乱期を救ったのは小泉政権で、破綻寸前の郵貯の民営化を実行しました。これで自民党に対する不満がとけて、国民に従来にない明るさがでてきました。
2 ) 2000~2010
日本は2000年から小泉総理が郵貯の民営化に努めました。小泉総理退任後、安倍、福田、麻生総理と続きました。
3 ) 2010~2015
2009年民主党の政権(鳩山、菅、野田総理)が 誕生しました。民主党は常に野党で政権運営のノウハウがありません。いろいろとドジを踏み、真の政策を出すことなく官僚の軍門に下りました。さらに民主党には不幸なことに、東日本大震災の発生で、経験のない原発事故にも出会い、政権運営を官僚に任せざるを得ませんでした。ここで官領が優位な立場に立ち、2011年の日本のバランスシートを発表し、負債合計1088兆円を発表し、借金が国民の貯蓄額に達したと発表し、次いでマスコミが大々的にこのままでは日本が破産すると発表し、国民に不安を与え、世論調査で国民の50%は消費増税支持を取り付けました。そこで民主党野田総理に再度消費税増税を要求し、消費税率を5%から8%に増やし、更に10%までの増税を国民に要請し、採用することになりました。実は問題を起こした2011年の日本国バランスシートは負債総額1088兆円、資産合計630兆円でした。このたいへん健全なバランスシートの負債額だけを報じ、国民を欺いたことは官としてあるまじき行為です。国民の支持を得て、増税を実行することになりました。
元財務官高橋洋一氏によると、上記資産630兆円の中から200兆円を官僚天下り予算として確保していることがわかりました。
しかし、中身の分析をしていないので評価できないが、この方式で農水産省は農民が必要とする種、肥料、その他を独占的価格で農家へ販売し、収穫は独占的価格で買収できるため官に有利な価格で販売できている。
産総研は1000憶円の研究費があるが、金銭的成果を出せる案件が少なすぎるようである。
注:ここで国債発行に関する実績をお知らせします。
・ 日本が製造業世界一になるまでは国債発行は10兆円でした。
1990 税収 60兆円 国債発行 10兆円 1989 消費税増税 3%
2000   50兆円   40兆円 1997   5%
2010   40兆円   60兆円      
2014   50兆円   50兆円 2014   8%
2019         2019   10%

読者の皆さんはこの表の数字を忘れないでください。デフレ政策を実施されています。
デフレ政策では国民が最低賃金価格で働くか、失業が待っているか!です。

Z. では、ここでアベノミクスの基本的な話をしてほしい。

I. 2012年に安倍総理に代わりますと、彼が目指したのが“アベノミクス”でした。そして8年間継続しております。私はこれが現在の日本としてとりあえず世界のグローバリゼーションに対応する方針と感じています。

安倍政権の政策は基本的にインフレ政策で、国民の所得倍増政策です。以下具体的な話に進んでいきます

第1の矢: 大胆な金融政策(中央銀行が市場にお金を供給する量を増やすことでデフレから脱出する方式)
第2の矢: 機動的な財政政策(市場のデフレ予測を緩やかなインフレ予測へと転換する)
第3の矢: 民間投資を喚起する成長戦略
1 ) 第1の矢:大胆な金融政策
第1の矢は政府・日本銀行は物価安定目標(ゆるやかなインフレ目標)を具体的な数値で示し、日銀はその実現に向けて金融市場に明確なコミットメント(約束)を伝える
その目標を達成するまで日銀は長期国債などの買いオペを続ける
こうした政策上の枠組みを転換によって、市場のデフレ予測をインフレ予測に転換し、実際にも様々な経路を通じて、物価安定を実現化させる。
以上が第一の矢です。
2 ) 第2の矢:機動的な財政政策
第2の矢デフレからの脱却です。第一の金融政策だけでも達成することはできますが、同時に財政のエンジンをふかすことによって、デフレから短期間で効率よく脱却することを側面支援します。これがアベノミクス第2の矢「機動的な財政政策」です。
そのためには日銀のこれまでの金融政策の枠組みを変更し「レジーム・チェンジ」をする必要がある。(国債を使えるのは官だけという定めを、民も活用できる)
新しい金融政策の核心は、市場のデフレ予測を緩やかなインフレ予測へと転換することにある
予想の転換を確実にするために、日銀は国債の買いオペの上限を小出しに引き上げるのではなく、目的を達成するまで「無制限に」買いオペを進める
これらの行動で機動的な財政政策が達成される
その柱の一つが公共投資です。
公共投資には
i) 出来上がった施設(道路・防波堤など)本来の機能を十分発揮させる。(施設効果)
ii) 国や地方公共団体から事業主に支払われる財政資金が、その関連会社や従業員の消費などに回り、景気をよくする(乗数効果)民間投資誘発効果)
iii) その公共投資に関連する民間の投資を誘発する
このうち乗数効果や民間投資誘発効果は、需要を直接拡大し、需要不足を補う効果がある。
3 ) アベノミクス第3の矢;「民間投資を喚起する成長戦略」
成長戦略の主役は民間です。民間部門で成長力のある分野に経営資源、資本、労働力が流れやすい環境を整えることが、成長戦略が働きかけるのは主に企業などモノやサービスの供給側です。その意味で「供給側政策」(サプライサイド・ポリシー)とよばれます。
これに対する金融政策や財政政策は主に消費や投資といった需要側であり(デマンド・ポリシーと呼ばれている。

Z. アベノミクスが仕掛ける手法はこれまで習慣的に実施していた手法と異なり、
   第一の矢:大胆な金融政策
   第二の矢:デフレから脱却するための財政政策
   第三の矢は民間投資を喚起する成長戦略
十分な案を練った戦略でないと、この事業は失敗する危機に直面している。
下図は十分な戦略を見つめることで、最初はデフレ脱出の戦略をおこないます。
次にすることはデフレギャップを解消したことを確認し、いよいよ民間投資の活用をしっかり行う。これらは初めての新しい対策であり、失敗があってもよい方法を見つけて、成長路線を築き上げることを確信しながら進めることが肝心です。
図1(出典:本田 悦朗著【安倍総理公認 アベノミクスの真実】P49)
 図 1 (出典:本田 悦朗著【安倍総理公認 アベノミクスの真実】P49)

図 2はどのような投資案件がのぞましいかという検討です。今まで実施してきた案件を、継続的な運用可能な手法を求めるので大変な苦労を伴うものと思われますが、ここも我慢のしどころと考えています。
図2(出典:本田 悦朗著【安倍総理公認 アベノミクスの真実】P50)
 図 2 (出典:本田 悦朗著【安倍総理公認 アベノミクスの真実】P50)

第三の矢はこれまで実施してきた業務のやり方があり、国債発行で実施してきました。その結果、イノベーティブな活躍がのしかかってくることを覚悟しなければならない。
現在のままでは早期な解決は困難でしょう。
同時に9月号以降でも官僚が提案した正しい手続きを取らないと、日本の没落は急激に来るでしょう。

Z. 書類を見る限りこれからの展望は簡単ではなさそうだ。でも立派にやり遂げてほしい。両者で大きな激論が沸き上がる気がしてならない。

I. 財務省がアベノミクスの基礎的活動を認めずデフレ政策を堅持していることに問題があります。
10月号は日本企業の業務遂行の体制をとらえ、アベノミクスを成功させる方法を提案します。

以上

ページトップに戻る