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日本の危機の認識とプロジェクト・マネジメント活用への提言 (5)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 8月号

Z. Iさん、8月号はグローバリゼーションに関する課題を取り上げたかったが、新型コロナ対策があり、人々の関心はコロナ対策にある。しかし第一次対策が終わり、第2次対策の議論が出ているが、一方では緊急な仕事がおろそかになっていることが気になっている。

I. 私も同感です。今のグローバリゼーションは突然規模を拡大してきました。そのため究極的には、世界の富が1%の大富豪に集められ、90%以上の人々は最低生活基準まで下落すると予想されています。
下記にFRB(米連邦準備理事会)のデリバティブ方式による国債発行方式を紹介します。A社は新企業を立ち上げます。自己資本A弗の100倍の仮想ドル(国債)を借り受け、この金で中国との合弁会社を設立し、企画・設計は米会社が実施し、製造は中国におこなわせる方式を実現しました。そのため米国の製造業は中国からの輸入品で補う形になりました。
図 6.米国の「デリバティブ証券の論理」の誕生
これは何を意味するかを大まかにいうと、A社はA基金の100倍の企業になります。100Aドルという会社が米国に設立されたか、あるいは低税金国の法人になります。一方中国はA会社の49%の権利を持つ協力者で、49%に見合う生産工場を中国に建設したことを意味します。と同時にA社は中国製品の全量を買い付けることも引き受けています。この方式で米国は中国を敵対者ではなく、協力者の立場に据えています。しかし、国際的トラブルが発生しても、中国は50Aドルに相応する担保が中国に存在するため、損がありません。また協力者という位置づけは米国の製造技術の吸収になり、価値ある資産を得たことになります。多分新A社はユダヤ資本の企業として、低税金国籍に登録されます。
一方米国内では従来のワーカーが失業の憂き目にさらされています。この取引は中国が勝った気がします。結果は建国以来米国を支配していたWASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)の米国人は過去の栄誉をもぎ取られ、失業者に成り下がっています。この結果トランプが大統領選で勝ちWASPが民主党から離れましたが、ユダヤ人がこれにとって代わりました。
もしグローバリゼーションで低税金国に移籍すると、米国から離れユダヤ資本のグローバル企業が活躍することになります。逆に米国は100A米ドルの会社が米国から離脱することになります。中国はこのデリバティブ方式の採用で、50A米ドルを加えた世界一の製造業国家の道を進んでいます。
Z. この変化は抜群に面白い。ユダヤ人の知恵の素晴らしさは、ただの紙切れがA社という米企業がデリバティブ方式の発明で、100A米ドルという大金の会社を生み出すことで、それはまたユダヤ資本以外でも活用できるが、米国のFRBは株式会社で筆頭株主はロスチャイルドで多くのユダヤ資本家が参加している。さらに面白いのはユダヤ資本の人脈は米国国務省も抑えており、トランプはイスラエル派のユダヤ資本系のようである。
I. 私は日本のグローバリゼーションへの対応を調べたところ、目ぼしい方針がない。そこで私は先月号で示したコロンビア大学スティグリッツ教授が提案した、「これから始まる『新しい世界経済』の教科書」に参加するべきと考えています。

Z. ところで日経新聞6月30日号に“サステーナビリティ経営の推進”をという「ESG投資の進化, Society5.0 for SDGsの実現へ 」を無観客で、インターネットによる同時配信の形で情報発信型の会議が開かれた。
以下は経団連副会長国部毅氏の提案があった。
「SDGsと収益事業の両立~発想力とスピード経営~」
“新たな試練は好機を与える”
経営者と従業員が一体となりSDGsを推進する秘策は何か
“従業員の現場体験を含めたSDGsの浸透を促進”
ESG投資の進化、Society 5.0 for SDGs の実現
ポストコロナ時代の日本再生への希望
ビッグデータがSDGs達成を加速
日本の金融エコシステムの役割は大きい
また、3件もテーマが出されている。

I. 先ほどの発言で、日本はグローバリゼーション対応で、目ぼしいものがないといったのは私の知識不足でした。Z.さんのご提案は大変結構なことです。新型コロナ対応などが俎上にのると、社会の空気が変わるので結構だと思います。今まで手軽にしていたテーマが急浮上しました。
上記のプレゼンテーションは上記の説明だけでは、その内容を理解できませんので、追加説明をします。
1 ) SDGs(持続可能な開発目標)とは、すべての人々にとって、よりよい持続可能な未来を築くための青写真です。国連が主体で決めた17の目標があります。これを達成しようというものです。
2 ) 17の目標
目標1 あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
目標2 飢餓をゼロに
目標3 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
目標4 すべての人々に包括的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
目標5 ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワメントを図る
目標6 すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する
目標7 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
目標8 すべての人々のための包括的かつ、持続可能な経済成長、雇用及ディーセント・ワークを推進する
目標9 レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る
目標10 国内および国家間の不平等を是正する
目標11 都市を包括的、安全、レジリエンドかつ持続可能にする
目標12 持続可能な消費と生産のパタ-ンを確保する
目標13 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
目標14 海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15 森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
目標16 公正、平和かつ包括的な社会を推進する
目標17 持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する

3 ) ESG投資の進化とは:Society5.0とは狩猟、農耕、工業、情報に続く新たな社会で、「デジタル革新を通じて、人々が安心で、快適に暮らし、そして新たな成長機会を生み出し、持続可能でだれも取り残さない人間中心の社会」を言う。例えば遠隔医療、仮想実現(VR)技術などの新しいテクノロジーによって人々がより便利で快適に、そして安心に暮らせるようになる。

4 ) 共同研究実行者:経団連・東京大学・年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の共同研究です。締め切りは2030年です。
ここでは高偏差値日本人のエリートがこの後10年かけてまとめるとあります。

17のテーマを見ますといずれも重要なテーマです。これが成功すると人類に大きな平和が近づいてきます。これは日本のエリートが集まってまとめる課題ですが、容易なものではありません。
しかし、とりあえず上記のテーマの意味、内容を説明します。

30年にSociety 5.0が実現した場合250兆円が創出され、それには累積844兆円の投資が必要になると試算された。
経団連・東京大学・年金積立金管理運用独立法人の共同研究する

今月の質問事項:読者の皆さん。あなた方は実務者と想定します。あなたはこの共同研究が成果を出すと思いますか、YesかNoと答えてください。理由があれば教えてください。
あなたはどのような成果を期待しますか?

I. 経団連副会長に続く講演の講師
有名な寺島 実郎 日本総合研究所 会長でした。寺島会長の講演概要を列記します。
題名:ポストコロナ時代の日本再生への希望
コロナショックにより、SDGsは本当の価値を問われている。同時にSDGs推進の議論を踏み固めるチャンスだ
新型コロナ対策を巡って中国も米国もつまずき「米中2極の冷戦時代」を迎えるのではなく、世界秩序に参加しているすべての主体が自己主張をする時代になった。その調整と調和をとり、世界を新しいステージに持っていくかがポイントとなる。
そんな中、日本はどう進めるべきか。世界のGDPシェアをみると、昭和最後の年である1988年は日本のGDPシェアは16%、日本を除くアジアは6%であった。それが1988年には日本は6%まで落ち込み、一方アジアは23%までとなった。つぃに19年にアジアGDPは4倍を超えた。実は21世紀にはいる前の00年にGDP14%を維持していたから、多くの日本人はその実態を知らないでいる。
これから5~10年先、どんなに控えめに見てもアジアのGDPは日本の10倍を超える規模になる。
今後さらに進むには「日本埋没感」をはじき返す、知恵を絞って行動計画につなげることが重要である。
GDPはマクロな話だが、次はミクロな話題に目をつける。
技能五輪国際大会で日本は00年代半ばまで連続1位だったが、17年には9位に転落、この間上位を占めたのは中国、ロシア、韓国であった。それは日本の現場力が劣化しているからだ。経済人や産業人ならば産業現場に日のあたる技能五輪に関心を持つべきだ。
日本人がSDGsを掲げて進むのであれば、もう一度原点に立ち返り、どうしたら「現場力を取り戻せるか検討しなければならない。現場に光を当てると若者はそれに向き合うはずだ。
ポストコロナ時代の日本再生への希望を考えると、まず、アジアダイナミズムと相関しながら、いかに日本の未来を形作るかを考えることが求められる。デジタルトランスフォーメイション(DX)で新しい生活を考えることも必要だ。
我々にとって重要なのは全体知だ。今、自分にできることを問い、体系的に組み立て行動する。SDGsを考える立場の人たちは、原点に返って日本の持続可能なストオリーを再構築するために知恵を絞らなければならない。

以上が寺島会長の日本再生への希望である。

Z. Iさん、さすが寺島会長だな。
国部 経団連副会長の方針だと研究の内容を言っているだけで、それが成功するためには寺島さん的な配慮が成功の条件になる。
I. おっしゃる通りですね。仕事には必ず押さえるべき要点があり、そこに気が付かない人たちは成功しない。残念なことに、寺島さんのような仲間を集めないと事業は成功しない。今の日本人には目先だけがありグローバル水準の発想がないのが課題と思います。
私がこの問題を提起したのは1990年以降の日本はグローバル水準で何をするべきか皆目わからなくなったと思います。
それは戦後の日本が製造業を目指して進めてきた実績があり、組織がそれになじんでしまいました。ところが現在はモノづくりではなく、持続可能な管理が求められていますが経営者はモノづくりのイメージをいまだに求めています。それがタテ型組織の温存と、イノベーションへの変換ができない理由です。

PMAJはすべての仕事がPMで実施することを願っています。タテ型旧組織が温存する限りイノベーションに結びつかない現実があります。

今新型コロナの出現で日本人にその危機感を与えてくれました。そこでわたくしは8月号でのお願いとして、日本国が実施してきた60年前のタテ型組織を解消し、変化の速い現代に目をむけ、PM中心に仕事を進める組織を「官も民も」進めてほしい。
9月号は読者が日本の真の現状を理解することで、日本を変えてほしい。このままでは、最下位になりかねないという本が5月に出版されました。アジアの新興各国に収入でも後れをとっている事実を実感していただきたい。

以上

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