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「エンタテイメント論」(153)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :12月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●黄金三角ピラミッド
 日本の多くの企業人(社長と社員)は、エンタテイメントの本質と効用を殆ど理解していない。それを「歌舞音曲」の世界の事物(コトとモノ)と捉え、「接待」と云う日本語で認識している。残念なことである。もっとも最近の日本のTV番組で「これは、凄い!」と内心唸らせる様な日本人のエンタテイナーに依るエンタテイメントは姿を消した。You Tubeで探しても同じであった。企業人が理解せず、認識しないのは当然だ。日本のエンタテイメント事業分野の「体たらく」が招いた結果である。しかし世界には「凄いエンタテイナー」と「素晴らしいエンタテイメント」が無数に存在する。

 エンタテイメントに関する「結論」を先に述べる。
1 エンタテイメントは、「優れた発想」を生み出す「源」になる。
2 エンタテイメントは、ビジネス(経営&業務)に革新を齎す役割を果たす。従ってビジネス・イノベーション(経営改革の1つ)を成功させる力となる。
3 エンタテイメントは、既存事業の改革(既存価値向上=組織、人事、生産等の機能向上/コスト削減)と新規事業の達成(新価値創造=新しい商品、製品、サービス、事業の実現と成功)に大きく貢献する。
4 エンタテイメントは、「新しい(優れた)美」を創造する「Art(芸術)」と酷似した機能を果たす。従って「黄金の三角ピラミッド(★)」の頂点にある「Art(芸術2)」と一線上に位置する。
本稿の95号(2016年1月25日)で「黄金三角ピラミッド」として紹介している。
5 エンタテイメントは、科学、工学、事業の領域で活動する人々に勇気、元気、気力、活気、気分、気勢、根気などを与える働きをする。
6 エンタテイメントは、科学、工学、事業の活動を背後で支配している。
7 黄金の三角ピラミッドとは、Art(芸術★)、Science(科学)、Engineering(工学)、Business(事業)で構築された「夢(志を含む)」を実現させ、成功させる「母体」となるものである(下図参照)。
Art(アート)と英語名で書いたのは、他の3つを英語名で書いたため、対比上でArtとしただけ。本来は「芸術」である。気取った訳ではない
8 「新しい(優れた)知」を創造するScience(科学)、「新しい(優れた)技」を創造するEngineering(工学)、「新しい(優れた)価値」を創造するBusiness(事業)は、相互に上下の関係はない。常に対等に関係し合っている。しかし「Art(芸術)」とその一線上に在る「エンタテイメント」だけは、「科学」、「工学」、「事業」を支配する関係にある。「芸術(エンタテイメントを含む)」を支配軸として「科学」と「工学」と「事業」の三角形の活動が累積して形成されたものが「黄金三角ピラミッド」である。

黄金三角ピラミッド

●芸術とエンターテインメント
 「芸術」は、「新しい(優れた)美」を創造し、古今東西の多くの人に感動、歓び、驚き、恐怖などを与える機能を果たしてきた。と同時に人間の尊厳を主張し、その存在意義を認識させる根源的役割も果たしてきた。その結果、多くの新しい、優れた音楽、絵画、彫刻、文学などが生み出され、今も生みだされつつあり、今後も、生み出されていくだろう。

 「エンタテイメント」も、古今東西の多くの人に感動、歓び、驚き、恐怖などを与える機能を果たしてきた。と同時に人間の尊厳も主張し、その存在意義を認識させる根源的役割も果たしてきた。従って「芸術」と極めて近似した存在である。

 「エンタテイメント」とは、そもそも何なのか? それは、何故、古今東西の多くの人々に日常的に親しまれてきたのか? 今後、如何なる形で存在し続け、如何に位置付けられていくのか? 筆者は30数年前に「夢工学」を考案した時、これらの質問が筆者に突き付けられた。それに答えるべく、悩みに悩んできた。

 悩んだ末に出た結論は、上記の通り、従来から定義されている「芸術」と同一線上にエンタテイメントを位置付け、その仲間とした。此れが最も収まりが良く、それら質問にも答えられる結果になった(別途説明)。ちなみに上記の「黄金の三角ピラミッド」は、夢工学を考案した時に、おぼろげながら、その輪郭が浮かでいた。その後、現在の形に定着した。しかし今後、変わるかもしれない。ついては同ピラミッドに対する「読者の意見」を是非聞きたい。その意見によっては、この形を変えるかもしれない。

出典:仲間 the same position with shaking hands - Yahoo Image Search Results
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出典:仲間
the same position with shaking hands
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●「アート思考(アート・シンキング)」とアート思考論者
 数年前から「アート思考(アート・シンキング)」がビジネスの世界で関心を持たれ、それを新事業の開発に応用できないかが模索されている様である。

 しかし「芸術」と云う日本語で確立した概念と言葉があるにも拘わらず、何故、英語の「アート」を使う人物がいる。筆者は上記の通り、対比上Art(アート)を使っただけ。しかし彼らには「アート」に「芸術」とは異なる概念を定義しようとする意図はない様だ。ならば彼らは、新鮮味を出す為か? 恰好を付けたい為か? 流行を作りたい為か? 兎に角、クソ・ジャーナリスト達やそれに迎合するクソ学者達の仕業であろう。

 筆者は「品のない言い方」を本稿で度々する。申し訳ない。しかし真意は、ズバリ思った通り表現した方が人に伝わると考えたためだ。しかしそう言う筆者も、実は「クソ野郎」であり、「クソ爺」である。

 日本では「エンタテイメント」は歓待、接待、もてなしなど訳されている。しかし適切な日本語は存在しない。その為に筆者はエンタテイメントと云う英語表現を使って「エンタテイメント論」を論じている。本来、適切な日本語を「造語」する責任は筆者にある。それが出来ない筆者は「クソ野郎」で、「クソ爺」である。言い訳にはならないが、筆者は、日本で確立した「概念」があり、「日本語」も立派にある「芸術」を「アート」と表現する様な「あさましい事」はしていない。

 さて彼らが「アート」と認識する事物は何か? 「アート思考」の根源になっている事物は何か?ビジネスの世界で関心を持ち、新事業の開発に応用できない模索している事物は何か?

 筆者の調べた範囲では、彼らが「アート」と認識し、「アート思考」の対象としている事物は、全て古今東西に数多く存在する伝統的な音楽、絵画、彫刻、文学などの「純粋芸術」である。彼らは、この「芸術」が発想の転換を促し、ビジネスに活用できると異口同音に主張し、「アート思考論」を展開している。

 しかし彼らの頭の中には、エンタテイメントは、全く存在しない。エンタテイメントと聞くと、それは「歌舞音曲」の世界の事物であり、「接待」と云う日本語でしか理解していない。エンタテイメントの本質と効用を全く認識していない。

出典 ルーブル美術館(美術の宝庫) the Louvre Museum in Paris (tripsavvy.com) 出典:交響楽団演奏(音楽の大型結晶体) orchestra music Yahoo Image Search Results
出典 ルーブル美術館(美術の宝庫)
the Louvre Museum in Paris
(tripsavvy.com)
出典:交響楽団演奏(音楽の大型結晶体)
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●ビジネス世界へのアート思考とエンタテインメント思考
 そもそも「アート思考」を基に「生き馬の目を抜く国際競争ビジネスの世界」で生き抜き、勝利することが出来るのか? その勝利の具体的な方法は何なのか? この質問に「アート思考論者」は、中途半端な方法論しか提示せず、「本心、本気、本音」で答えていない。そもそも彼らの中で「夢・成功一貫達成」を成し遂げた人物はいるのか? 筆者が調べた限り、皆無であった。

 筆者は「アート思考論者」を単純に批判している訳ではない。そもそも批判が目的ではない。それよりも彼らが「アート思考」を更に堀り下げ、「エンタテイメント思考(★)」に到達して欲しいと願っているだけだ。更に彼らの主張する「アート思考」と筆者の「エンタテイメント思考」が一体となり、「優れた発想」を生み出す「新しい在り方(基本的考え方)」と「やり方(具体的方法論)」を確立したいと願っているだけだ。

 ★エンタテイメント思考(紙面制約から詳細は別途)とは、①人々に感動、歓び、驚き、恐怖などを与える機能を果し、②人間の尊厳を主張し、その存在意義を認識させる役割を果たすと云う「在り方(基本的考え方)」に基づいた「やり方(具体的方法論)=思考法」を云う。

出典:眠れる森の美女
(エンタテイメントの基本であるの感動のシンボル)
Sleeping Beauty Aurora
Clip Art 2Disney Com
出典:眠れる森の美女(エンタテイメントの基本であるの感動のシンボル)
Sleeping Beauty Aurora Clip Art 2Disney Com 出典:エンタテイメントクリップ(エンタテイメントの方法論)
Entertainment clip art Yahoo Image Search Results 出典:エンタテイメント
クリップ(エンタテイメントの方法論)
Entertainment clip art
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 繰り返し、以下の事を「声」を大にして日本の企業人に主張したい。「エンタテインメント」自体を自社の事業に導入する事若しくは「エンタテイメント思考」を自社の事業に活用する事は、新規事業分野に於ける「新しい価値の創造」を可能にするだけでなく、経営基礎の「ベースカーゴ」となる既存事業分野に於ける「既存する価値の向上」を可能にする。

 なおエンターテインメントの具体的な活用の「やり方」は、以下の章や次号以降で順次説明していく。なお上記の主張に、「我田引水」の誹りを受ける覚悟で、空想、奇想、狂想を求める「デック思考」の活用を加えたい。

出典:ロックコンサート(エンタメの感動のシンボル) 
Rock Band Network Tracks are Coming to Rock Band 4 - GameRevolutionrock concert images - Yahoo Image Search Results 出典:ロックコンサート(エンタメの感動のシンボル) 
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出典:ロックコンサート(エンタメの感動のシンボル)
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●エンタテイメント商品とエンターテインメント商品店
 筆者は、仕事の隙間、遊びの隙間にいつも身近にある「店」に入り、「以下の様な商品」を探す。
しかし良い商品が見つからない。

 その「店」とは、デパートや商店街などに在るキャラクター商品店、雑貨店、玩具店、菓子店、洋品店、文房具店などである。

 その「探す商品」とは、「爆笑」を引き起こす商品、「笑い」を誘う商品、「悲しみ」を誘う商品、「驚き」を起こす商品、「不思議」と思わせる商品、「偽物と分かっていながら本物」と思わせる商品、「懐かしい昔の時代」を思い出させる商品、「亡くなった親」を思い出させる商品、「遠い昔の青春」を思い出させる商品、「昔の名映画」を思い出させる商品、「偽と分かっていながら恐怖」を起こす商品、「死の恐怖」を感じさせる商品、「現代の社会現象」を感じさせる商品、「身につまされる」商品、「共感」を引き起こす商品、「感動」を引き起こす商品、その他多数(省略)。

 筆者は、「エンタテイメント思考」に基づく以上の商品を「エンタテイメント商品」と、それらを売る店を「エンタテイメント商品店」と夫々命名している。この様な店が開店され、そこで扱う商品が全国また全世界から注目を集める様になる事を期待している。

 この店は、映画やアニメのキャラクター店とは異なる。キャラクター店は、ヒット映画やヒットアニメが飽きられたら、「あっ!」と言う間に閉店になる。しかしこの「エンタテイメント商品店」は、Ever Greenの商品を扱うので、いつまでも飽きられない。

 これに酷似した店が昔、存在した。それは全国に風靡した「王様のアイデア」の店(正しくはアイデアの王様)である。この店を成功させ、全国店展開を実現させた会社が(株)金鳳堂である。

 この店は、1965年(昭和40年)に八重洲店を開店、2007年(平成19年)にネット上の店舗を含め全店が「経営上の理由」で一斉に閉店された。創業から42年間続いた店である。日本と世界の「アイデア商品」を対象にしたので、一過性でない、Ever Green性のある商品を扱った。だからこそ長年続いた。今も「残念がる顧客」が多い。筆者もその一人である。

 この店には「アイデア」が溢れ、「驚き」を生む商品が数多く展示されていた。しかし殆ど駅の近くの店舗賃料がベラボーに高い超一等地で店舗経営されていた。そもそも「王様のアイデア」の店は、「エンタテイメント商品店」である。駅前でなく、郊外の店で店舗運営をやるべきだった。極論すれば、田んぼの中の一軒屋で開店していても、「アイデア」を求め、「驚き」を求める客の方が押しかけて来る店である。

 「王様のアイデア」の店は、エンタテイメントの本質と効用を認識していたか? 客の方から「驚き」を求めて来てくれる「エンタテイメント店」と考えていたか? その時の流行に左右されず、安い店舗賃料の店でコツコツと実績を積み重ねていくべきだったと考える。AI時代、DX時代の「今」こそ求められる店である。「優れた発想(アイデア)」の商品を世界中から集めれば、「王様のアイデア」の店を復活させ、成功させる事が出来ると筆者は考える。またその復活を願う。

 なお現在、「王様のアイデア」の店の役割をしているのがA~Zまで何でもやる「アマゾン」である。ならばネット商品の「見本展示専門店」を作って欲しい。ネットとリアルが結合し、事業も成功するから。

出典:Amazon Amazon.co.jp - Wikipedia
出典:Amazon Amazon.co.jp - Wikipedia

 本号では、「ビジネス業界(理性思考)」に「エンタテイメント思考(感性思考)」を活用した事を論じた。次号では、この「逆」に、「エンタテイメント業界(感性思考)」に「ビジネス思考(理性思考)」を活用した事を論じる。前号で記述を約束した「固定概念」&「先入観」の排除の事は、本号で解説できなかった。次号以降で論じたい。
つづく

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