グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第149回)
セネガル向けオンライン授業開始

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :9月号

 新型コロナウイルス禍で、高齢・循環器系既往症あり・慢性鼻炎あり、と外出を控えるべき人の典型のような筆者は、3月から在宅勤務というか、自宅軟禁のような状態に自分を置いていたが、完全に仕事(教育)を諦めたわけではないので、8月から教育活動を再開した。対面で動ける場はまだ無いので、まずオンライン授業を本格的に始めた。
 東京六大学野球が大好きな筆者には8月はワクワク感がつづいた月であった。今年の特例で、神宮球場での炎天下の一回戦総当たり春季リーグ戦で、異様な集中力を発揮して優勝した法政大学、その法政が優勝の翌日立教大学に零封され、同じ4勝1敗ながら直接対決に敗れた慶應義塾大学が地団駄を踏んで悔しがったこと。OBはと見れば、ドラ一、明治大学出身 広島カープ森下投手が一級品とは評価されながら、活躍していること。何よりも筆者が喜んでいるのは、埼玉県人で早稲田大学出身の高梨雄平投手が楽天から巨人にトレードされ関東に戻ってきたら、12試合無失点(8月20日現在)と巨人のセットアッパーを見事に務めていることと、慶應義塾大学出身の中日福谷投手は、抑え役で失速し、長い間復活への苦闘が続いていたが、今年、先発投手に転換し、同じく慶應出身の郡司捕手と組んで先発初白星を得て、8月19日には二人の聖地である神宮球場でヤクルトを抑え先発2勝目を挙げたことだ。これらの選手たちを神宮球場で見ていた筆者は、選手達に同化したように喜んでいる。

 西アフリカ セネガルのCASR3PM大学院大学には2018年4月を最後に出講できていなかった。19年度は本格的な歯科治療があり、海外渡航はできなかったし、今年はコロナ禍でセネガルに行くことは夢の夢である。しかし、筆者と学生達の絆は大変強く、メールで時々相談事があるので、セネガル側に環境整備の課題はあるのは承知であるが、ともかく、動き出そうということで、講義と個別研究指導を今月から開始した。
 世の中のオンライン会議・授業ツールではZOOM Meeting、Microsoft Teams、CISCO Webexが主流であるが、一番使いやすいZOOMを選択した。
 筆者とセネガル側教員間で、接続性の確認とオンライン・ライブ授業の進行方法につき下打ち合わせをした後、8月15日土曜日と16日日曜日の20時から22時半(セネガル時間11時から13時30分)にResearch Methodology for Ph.D./DBA and Master Students (社会科学リサーチ方法論)の授業を行った。土日開催は全員社会人学生であることを考慮してのことであり、日本側の時間帯は、9時間の時差があり、双方にぎりぎりの妥協時間帯をとった(セネガル人は午前9時から開始では、ほぼ起床の時間でありコロナ禍の中にあっての移動制限を考えると11時開始がぎりぎりである)。
 履修学生はホストで筆者が上席教授を務めるCASR3PMの博士・修士学生のみならず、国立セネガル・バーチャル大学のいくつかの拠点の修士学生、パートナーのアフリカ開発大学の修士学生など総勢25名であった。大学院に集合して、ZOOM画面をスクリーン投影しながら受講のグループは8名、残りが自宅または大学の部屋からの受講であった。
 本科目は大学院の基礎科目であるが、学生は社会人学生であり、博士課程生でも研究者を目指す者はいないので、研究の方法論はセオリーの羅列となり、理解が難しいので、今回の講義では、実際に研究をどのように進めるのかについて、一貫して仮想研究テーマ(セネガル政府のEco Village Modelの実現可能性の評価)を例にとり、解説を行った。双方の盛り上がりはたいしたもので、大学院の教員からは履修者満足は高かったとのフィードバックが来ているが、実際の運営は大変であった。
 まず、アフリカ特有の状況として、経済的な事情ゆえに、オンライン教育の環境整備が未だで、ほぼサバイバルゲームであった。
部屋の建付けがよくないので、雑音が生じる
PCが古いのでビデオの画質・音質が悪い
オンライン授業を受ける備品が揃ってないので、ホストの大学院では集合受講方式も採用したが、画面をスクリーン投影するPCに複数人用の集音マイクがなくて、音量が極めて低く不明瞭、ハウリングが頻繁に起こる
家で受講している学生は、子供の音声など生活音が入る(特に学生が母親であると子供が度々やって来る)
 一方、インターネット大学の学生やコンサルタント等、オンラインコミュニケーションに慣れている学生との一対一対応は問題なく。音声も明瞭であった。

 もう一つは言語の問題だ。セネガルの社会人の英語のレベルは日本人並みで、今回実施したのは難しい科目なでの、フランス語の対訳スライドをすべてにつけたり、英語を話さない学生には、現地側の准教授に通訳をやらせたり工夫をしたが、英語でも音が聞き取れない場面では、対面であればそれほど苦労しいない、コミュニケーションの壁があった。

 オンライン授業や研修に共通であるが、
遠隔地とは、発言の切り出しで若干タイムラグが生じる、
ミュート(マイクの解除)、アンミュートの切り替えは個々人に任せるとなかなかうまくできない(ホスト側で強制ミュート機能を使う)、
Audioバランスのとり方がわからない参加者がいることに注意、
討議など、受講者発言タイムでは、画面上ではだれが発言を待っているかわからないので、一斉に発言しだして混乱することがよく起こる。また、20名以上の参加者がいると、発言しだしたのが誰なのか瞬時には分からない。従いツール上の挙手機能を使わせるか、発言の前に一回ごとに名前を言わせるなどが要である、
ツール上のチャット機能はすごく便利であるが、授業や研修をやりながらチャットの記録を見るのはむずかしい(日本の学生であると、LINEで意見集約を行うことを良く行うが、国際的にはLINEではなく、What’s upを使う必要がある)、
 等に注意が必要である。

 セネガルの授業は月1程度でしばらく続き、徐々に環境整備を図っていく。

 例年の筆者は7月から9月が仕事の最盛期で、いやになるほど忙しかったが、本年は授業も研修もなしで推移してきた。今回の授業は、自分に気合を入れて、教える力を維持するのによい実戦となった。真夏(アフリカのセネガルは31度で町田は37度では逆であるが)に熱射対策を行いながらの目標にむけての体調整備、午後・夜に授業を行うための身体のリズムの切り替え、また実戦では、3時間運営のスタミナ獲得、等々は秋からの日本での公的オンライン研修に向けて貴重な地ならしにもなった。 ♥♥♥

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