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パーソナルPM
「巡礼を歩く時間は、あなただけの時間。自分が自分に与えた贈り物です」

プラネット株式会社 中 憲治 [プロフィール] :7月号

コロナ外出自粛期間に、NHK・BSプライムの番組で、「カミーノ・デ・サンティアゴ」を放送していた。冒頭の言葉は、放送の中で、アルベルゲ(巡礼宿)のオスピタレロ(アルベルゲで働く巡礼者の世話役)が発した言葉。この言葉の前には、巡礼者とオスピタレロとの間で、次の様な会話があった。(以下、記憶のままに記述する)
オスピタレロ:「今日は、どこまで行かれるのですか?」
巡礼者:「決めていないのです。(身体に)ここで止まれと言われるまで歩き続ける予定です」
オスピタレロ:「それが巡礼の本来の姿ですね。最近の若い人は、行く先々まで宿を予約していますが、巡礼は管理された日常から自らを解き放つ時間です。巡礼を歩く時間は、あなただけの時間。自分が自分に与えた贈り物です」
「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」はキリスト教3大聖地の1つで、スペインの西部、ユーラシア大陸が果てるところに位置する。「カミーノ・デ・サンティアゴ」は「サンティアゴ」までの巡礼行をこう呼ぶ。ヨーロッパ各地からキリスト教徒が「カミーノ・デ・サンティアゴ」を続けてきた。その歴史は1000年以上になるといわれる。
今では、キリスト教徒のみならず、いろんな宗教を信じる人がこの巡礼を目指している。
たくさんある巡礼路の中で代表的な「フランス人の道」は総距離約800kmに及び、全てを歩き通すと40~50日掛かるといわれる。巡礼を歩く長い時間の間に、人は「なぜ私は歩いているのだろうか?歩くことにどのような意味があるのか?」など自問自答を繰り返す。その日の宿を予め予約している人は、宿まで辿り着くまで歩くことに答えを見つけるだろう。でも、巡礼の時間が、「自分が自分に与えた贈り物だ」と考えたらもっと違う時間の使い方もあり、歩くことの意味も深いところに見出せそうである。
この番組を見終わって、パーソナル・プロジェクトの候補としてリストアップしていた「カミーノ・デ・サンティアゴ」にすぐにでも行きたくなった。コロナ禍の中でなかったら、今は、スペインの地にいるのではないだろうか!
「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」をゴールに約800㎞歩く、所要期間は40日~50日、スコープ達成が優先順位第1位のプロジェクトである。大事なことは、スコープとして「この時間は、自分が自分に与えた贈り物として、自分と向き合う時間とする」ことを加えることだと考えた。
「四国お遍路」は88ヵ所の札所を順番にお参りしていくために、札所から次の札所へ、とマイルストーンが細かく設定され、マイルストーンの達成が目的化しがちであった。
プロジェクトは基本的に計画が立案され、計画に沿って遂行していくものであり、管理システムそのものである。計画遂行上で困難に突き当たった時には、一度立ち止まり、「なぜ私はこのプロジェクトに携わっているのか?」と自問自答する時間、自分と向き合う時間を持つことも必要なのかもしれないと感じている。
以上

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