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バーチャルな会議をファシリテートする力

井上 多恵子 [プロフィール] :7月号

 グローバルに展開するプロジェクトのキックオフを2019年5月に実施した。その際は、アメリカ西海岸で、10数名程に集まってもらい、2日間、皆で濃い時間を過ごした。私がファシリテートし、ライブの場の特性を存分に活かして、ペアワークをしたり、皆のワークを壁に張ったものを見て「いいね!」マークを付けてもらったりして、場の力を活かして、お互いの知恵を共有し刺激を受けてもらった。昼食と夕食を共にする中で、関係性も深めていった。私が一番得意とする仕事でとっても充実した2日間だったことを覚えている。
 
 今年は、新型コロナウイルスの影響で、キックオフのやり方は一変した。TEAMSというツールを使ってのバーチャルなキックオフ。2日間はきついので、3つのパーツに分けて、それぞれ、2時間、1.5時間、1時間で実施している。私のようにITリテラシーが高くない人にとっては大きなチャレンジで、ライブの時のような成果を得たとは言い難いが、それでも一つ大きなメリットを感じることができた。それは、参加者の数を増やすことができたこと。一つの場所に集まる形だと出張費の制限や移動のための時間の制限もある。バーチャルにした途端その制約は一挙になくなるので、参加人数が3倍程度に増えた。参加者にとってもそれは効果的だったようで、「代表の人から聞くのではなく、直接聞けて、質問もできる機会はとても良かった」という声が相次いだ。また、一斉にライブで集まると、ある人にとっては、時差的につらい時間帯になることがある。バーチャルだと、事務局に負担はかかるが、複数回実施することで、それを回避することができる。
 
 質問もライブだと、これまでは、その場で手をあげて質問してもらう形が主流だった。これだと、例えば英語での会議だと、控えめな国民や、英語で話すのを得意としない人はどうしても躊躇してしまいがちだった。結果、話をするのは、意見をはっきり言う訓練を受けている米国勢やインド人に偏りがちだった。紙を壁にはっておいて、休憩時間などにそこに書き入れてもらい、まとめて回答する、ということも可能だったが、タイムリーな形で回答できたわけではなかった。バーチャルだとチャット機能を活用して、どんどん質問やコメントが入ってくる。ライブより圧倒的な量だ。もちろん手を挙げてもらいマイクとビデオをオンにして実際に質問してもらうこともできる。
 
 今使っているシステムだと、投票機能が無いが、別のオンライン会議のやりざまからヒントを得て、チャットに複数の選択肢を入れて、「いいね!」の数の多さで人気が高い選択肢を選ぶこともやってみた。十分に使える。会議の最後にコメントを入れてもらうこともできる。また、参加者が同時にアクセスして記入できる共同作業用のシートをアップロードしてそこに一斉に書きこんでもらい、それを画面共有して皆が見ることができるようにすることも可能だ。
 
 上手く使いこなせば、可能性は大いに広がる。私が所属しているチームには、ITリテラシーが高い入社2年目の人がいて、その人が次々と新しいツールを紹介してくれる。また、コンサルタント出身の人がいて、彼女はバーチャルのファシリテーションを見事なまでにこなしている。例えば会議の冒頭、参加者一人ひとりから「プチ幸せ」を共有してもらい、和やかな雰囲気をつくることに成功している。「プチ幸せ」を共有してもらえると、ダイバーシティ感が高まる。ビデオをオンにしてもらっており、海外勢は自分の部屋をそのまま見せたりすることもあり、愛犬を見せたり、ギターを見せたりする人がいたり、本棚が映っていて勉強家であることが伝わってきたりする。
 
 ITリテラシーが高くない私はなかなかそこまでいかない。共有画面がフリーズしたり、ものすごいスピードで書かれるチャットに追いついていけなかったりしたこともあった。相手が全員見えるわけではないので、反応が読めず、次の一手を躊躇することもあり、最適なタイミングでコメントすることができなかったこともあった。その場に一緒にいれば、お互いの表情から意向を読み取ってできることもできない。バーチャルな場をコントロールはまだまだできていない。同僚達のサポートを得て何とか終えることはできたが。
 
 とはいえ、かつてのようにライブの場で実施できることは減っていくことは確実だ。PMCの講習会もライブとバーチャルハイブリッド型になる。変化に柔軟に対応できること、が求められている今の時代、何とかついていけるようにしたい。「それは無理」と言いたくなる時、最近頭の中で流しているのが、松田聖子さんがテレ東ワールドビジネスサテライトのエンディングテーマ用に作ったLa La!! 明日に向かってという曲のこのパートだ。「くじけない心もって、前に進んでいこう」彼女のソフトな歌声がそっと心に入ってきます。もし、私同様、ちょっと変化についていけてない感を持っている方がいたら一度聴いてみることをお薦めします!

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